改修工事のため2020年10月より長期休館していた国立西洋美術館が、2022年4月9日、リニューアル・オープンした。
1年半ぶりの開館である。
当面の間、常設展および小企画の展示のみ。
企画展は、6月4日から開始予定。
で、早速リニューアル・オープン初日の午後、国立西洋美術館を訪問する。
私の見たところ、気づいていないこともあるだろうが、常設展示室ほか建物内の諸施設は、休館前と特段変わったところはない。
ミュージアムショップも、品揃えを含めて変わりない。
強いて挙げると、本館1階の休憩スペース、過去の展覧会図録などの書籍を置いた棚があるのは変わらないが、椅子などが入れ替えられたくらいだろうか。
常設展を見る。
本館2階の展示室「14〜18世紀の絵画」には、お馴染みの作品たちがお馴染みの並び方(★)で展示されている。
クラーナハ
《ホロフェルネスの首を持つユディト》1530年頃
ラ・トゥール
《聖トマス》
✳︎久々に会った気がする。
スルバラン
《聖ドミニクス》1626-27年
カペ
《自画像》1783年頃
や、寄託されているフェルメール《聖プラクセディス》(変わらず展示されていて良かった)など、好みの作品を楽しむ。
国立西洋美術館の人気作品の一つが、ちょっとした小企画的な展示がなされている。
カルロ・ドルチ
《悲しみの聖母》1655年頃
近年行った同作品に対する色材調査の概要が紹介される。
聖母の青衣には、半貴石・ラピスラズリから作る天然ウルトラマリンブルーが使用されていることが確認されたとのこと。
金と同じ値段で売られたという天然ウルトラマリンブルーは、イタリアにおいて特に聖母の衣に用いられてきたが、経済的な理由から、下の層はより安価な青色で塗って、表層だけに天然ウルトラマリンブルーを重ねた作品例が多数知られているところ、本作では、下に他の青色層はなく、天然ウルトラマリンブルーだけが用いられている可能性が高いことが分かったという。
また、光輪には金箔が使用されるなど、総じて高価な材料を用いた作品といえるとのこと。
隣のケースには、本作で使用されている色材が参考展示されている。
新館2階へ移る。
フュースリ《グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ》も定位置にある。
と思いつつ、その先の新館2階および1階の「松方コレクションと19〜20世紀の美術」の展示室に進むと、展示作品がなんだか寂しい。
モネ作品については、国立西洋美術館の「箱入り娘」《睡蓮》
や、2017年に所蔵となった痛々しい姿の大型作品《睡蓮、柳の反映》
など計5点が展示されているし、
ゴッホ《薔薇》もいるのだけれど、なんだか寂しい。
思い出す。
現在、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館において、国立西洋美術館との共同企画の第一部として開催中の「RENOIR, MONET, GAUGUIN Images of a Floating World」展(会期:2/6〜5/15)に所蔵作品を貸出中なのだった。
同展の出品作品数約120点のうち、何点が国立西洋美術館所蔵作品なのかは未確認。
ただ、6月4日から共同企画の第二部として国立西洋美術館にて開催される「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」展では、出品作品数約100点のうちフォルクヴァング美術館からの貸出作品は38点とのことなので、それとほぼ同数なのだろうか。
そのため、現時点では、国立西洋美術館が自慢の印象派から20世紀初めの作品群の展示が、ずいぶん薄くなっている印象が拭えない。
??
「マネ《ベルト・モリゾの肖像》リトグラフ」との作品キャプションなのに、展示作品はベルト・モリゾ《黒いドレスの女性(観劇の前)》1875年。
今想像したのだが、版画素描展示室で開催中の「新収蔵版画コレクション展」(今回は時間の関係で見ていない)に、2020年に収蔵したマネ《ベルト・モリゾの肖像》が展示されていて、それと逆に作品キャプションを付けてしまったのではないかしら。
(★)ただ1点、デンマークの画家ハマスホイ(1864-1916)の《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》が、17世紀のイタリア・ベルガモの画家エヴァリスト・バスケニス(1617-77)の《楽器のある静物》と向かい合わせに展示されていることを除く。
(続く)