上野の国立西洋美術館で開催中の「松方コレクション展」。
3年前、2016年秋に神戸でも「松方コレクション展」が開催されている。
松方コレクション展
松方幸次郎 夢の軌跡
2016年9月17日〜11月27日
神戸市立博物館
同展の構成は、次のとおり。
序章
1章 旧松方コレクションの古典絵画・西洋家具
2章 旧松方コレクションの近代絵画、彫刻
3章 松方コレクション形成時代のフランス絵画の名品
4章 旧松方コレクションの浮世絵
5章 松方時代の川崎造船所と神戸
同展出品作の旧松方コレクション(西洋美術)の同展開催当時の所有者を確認する。
全出品数159点のうちどれが旧松方コレクションなのかきちんと確認していないが、1章と2章に属する出品作を旧松方コレクション(西洋美術)と見做す。
97点の出品となる。
【国立西洋美術館所蔵】
国立西洋美術館 16点
【国内】76点
ジールハウス 19点
横浜美術館 5点
日本生命保険 5点
大原美術館 4点
共立女子大学博物館 3点
西宮市大谷記念美術館 2点
姫路市立美術館 2点
栃木県立美術館 2点
郡山市立美術館 2点
サカタのタネ 2点
川崎重工業健康保険組合 2点
BBプラザ美術館 1点
山梨県立美術館 1点
島根県立美術館 1点
アサヒビール大山崎山荘美術館 1点
ブリヂストン美術館 1点
兵庫県公館 1点
加西市 1点
帝人 1点
個人蔵 20点
【海外】5点
オルセー美術館 1点
ルーヴル美術館素描画室 2点
ポンピドゥーセンター 2点
まず気になる、海外からの出品作5点。
これら5点は全て、パリに留め置いたコレクションで、1944年にフランス政府が接収し、1959年の日本への寄贈返還の際、特別に重要な作品としてフランスに残された19点の一部である。
出品作は、次のとおり。ロートレック作品がメインビジュアルであったようだ。
ロートレック
《庭に座る女 ジュスティーヌ・デュール》
オルセー美術館
モロー
《ジョット》
ルーヴル美術館素描画室
セザンヌ
《「田園の奏楽」模写》
ルーヴル美術館素描画室
スーティン
《つるされた鶏》
ポンピドゥーセンター
ピカソ
《読書する婦人》
ポンピドゥーセンター
なお、上野の「松方コレクション展」でも寄贈返還の対象から外された作品4点が出品されているが、神戸の5点との重なりはない。
〈参考〉
寄贈返還されなかった作品19点
★2019上野出品、☆2016神戸出品
【オルセー美術館】10点
ボンヴァン
《チーズのある静物》
《鴨のある静物》
《野兎のある静物》
マネ
《ビールジョッキを持つ女》
ゴッホ
《アルルの寝室》★
ゴーギャン
《シュフネッケルの家族》
《扇のある静物》★
《ブルターニュの風景》
《ヴァイルマティ》
ロートレック
《庭に座る女 ジュスティーヌ・デュール》☆
【ルーヴル美術館素描画室】4点
モロー
《ジョット》☆
セザンヌ
《「田園の奏楽」模写》☆
《調理台の上のポットと瓶》★
《サン・ヴィクトワール山》
【ポンピドゥーセンター】4点
マルケ
《サン・ミシェル橋》
スーティン
《つるされた鶏》☆
《ページ・ボーイ》★
ピカソ
《読書する婦人》☆
【ブザンソン美術館】1点
クールベ
《フラジェの農夫たち》
次に国内からの出品作。
2016年神戸の展覧会では、国立西洋美術館からの出品数は、16点。97点のうちの約6分の1にとどまる。
一方、国内所蔵者から作品を多く集めている。
19所蔵者+個人蔵で76点。97点のうちの4分の3を超える。
2019年上野の展覧会では、国立西洋美術館所蔵作が116点と、154点のうち約4分の3を占める。国内所蔵者からの出品は11所蔵者+個人蔵で29点にとどまる。
日本に持ち込まれたコレクションは、川崎造船所の経営破綻の際に、重役私財として提供。国内外へ散逸する。
まとまった形ではなくなったとはいえ、現在でも相応数の作品が国内にあって、多くの所有者のもとで大切に保管されている。日本の西洋美術普及における松方コレクションの存在の大きさ、広がり。それがよく伺えるのが神戸の展覧会であったようだ。