東京でカラヴァッジョ 日記

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コレクションの流転 - 「松方コレクション展」(国立西洋美術館)

2019年06月21日 | 松方コレクション
松方コレクション展
2019年6月11日〜9月23日
国立西洋美術館


   出品作156点のうち、154点が旧松方コレクション。
 
   154点を現所蔵者別にみる。
 
 
【自館所蔵・寄託】116点
国立西洋美術館         111点
国立西洋美術館寄託      5点
→出品作の75%が自館にある作品。
 
 
【国内】29点
三井住友銀行   6点
ジールハウス   5点
大原美術館     4点
日本生命保険   2点
石橋財団ブリヂストン美術館  2点
川崎重工業(株)  1点
川崎重工業健康保険組合   1点
記念艦「三笠」、横須賀   1点
横浜美術館   1点
北九州市立美術館   1点
ポーラ美術館   1点
個人蔵   4点
 
 
【海外】9点
オルセー美術館   3点
ポンピドゥーセンター  1点
ゴッホ美術館   1点
カルメン・ティッセン=ボルネミッサ・コレクション   1点
バーゼル美術館   1点
ルガーノ市立美術館   1点
ベルン美術館   1点
 
 
 
   まず気になる、海外からの出品作9点の流転を確認する。
 
 
【オルセー&ポンピドゥー】
ゴッホ
《アルルの寝室》
1889年
 
ゴーギャン
《扇のある静物》
1889年頃
 
セザンヌ
《調理台の上のポットと瓶》(水彩)
1902-06年
 
スーティン
《ページ・ボーイ》
1925年
 
   パリに留め置いたコレクション。
   1944年にフランス政府が接収。
   1959年の日本への寄贈返還の際、特別に重要な作品としてフランスに残すこととした19点の一部。
   なお、フランスに残された19点を画家別に見ると、ゴッホ1、ゴーガン4、セザンヌ3、ボンヴァン3、スーティン2、クールベ1、マネ1、ロートレック1、モロー1、マルケ1、ピカソ1。
    


【ゴッホ美術館】
ベックリン
《眠れるニンフとふたりのファウヌス》
1884年

   日本に持ち込み。
   松方の元を離れた後、何度か所有者は変わるが国内にあって、国立西洋美術館に寄託されていた時期もあったが、1990年代に海外へ。1999年より現所有者。



【カルメン・ティッセン=ボルネミッサ・コレクション】
アールト・ファン・デル・ミール
《オランダの冬景色》
1650-55年頃

   日本に持ち込み。
   松方家が所蔵、ブリヂストン美術館に長く寄託されていたが、1984年に競売により海外へ。何度か所有者が変わったのち、現所有者。
   なお、松方家がブリヂストン美術館に寄託していた作品は17点で、1984年にうち3点が国立西洋美術館、1点がブリヂストン美術館に寄贈。本作を含む13点が1984-85年に競売にかけられる。
 
 
 
【バーゼル美術館】
マティス
《長椅子に坐る女》
1920-21年
 
   パリに留め置いたコレクション。その管理人の役目を担ったのが日置釭三郎。松方とは「困ったときには作品を売って費用にあてる」約束をしていた。
   1940年頃、日置が売却。
   何度か所有者が変わったのち、1960年より現所有者。
 
 
 
【ルガーノ市立美術館】
モネ
《エトルタの風景》
1884年
 
   パリに留め置いたコレクション。
   1944年頃、日置が売却。
   何度か所有者が変わったのち、1965年より現所有者。
 
 
 
【ベルン美術館】
マネ
《嵐の海》
1873年
 
   パリに留め置いたコレクション。
   1941年頃、日置が売却。
   何度か所有者が変わったのち、1953年にヒルデブランド・グルリットの所有となる。2012年、息子のコーネリウス・グルリットのミュンヘンのアパートで、ナチス略奪美術品とともに発見される(本作自体はナチス略奪美術品ではない)。2014年、コーネリウス死去、遺言によりベルン美術館へ遺贈。
 
   コーネリウス・グルリット所蔵作品に旧松方コレクションが含まれていたことも驚きであるが、その作品が本展に「特別出品」として出品されていることも驚き。
 
 
 
   この9点で、松方コレクション流転の主要パターンが揃う。もう一つの主要パターンは、ポーラ美術館所蔵作品が担う。
 
アングル
《男の頭部》
1827年頃、ポーラ美術館
 
   パリに留め置いたコレクション。
   1944年にフランス政府が接収。
   1947年、国有財産局により売立にかけられる。
   おそらく何度か所有者が変わったのち、現所有者。
 
 
 
【松方コレクション流転の主要パターン】
 
国内持ち込み
→川崎造船所の経営破綻により美術品も重役私財として提供。国内外へ散逸。
(ごく一部は、その後の購入・寄贈・寄託により国立西洋美術館に。浮世絵は、その後一括して宮内庁に献上され、東京国立博物館の所蔵に)
     
ロンドンに留め置いたコレクション
→1939年の倉庫火災で焼失
 
パリに留め置いたコレクション
→管理人の役目を担った日置が経費捻出のため売却
→接収したフランス政府により売立て
→フランス政府による寄贈返還で国立西洋美術館の所蔵に。
→寄贈返還の対象外となりフランスの美術館の所蔵に。
 


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