東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ティントレットとスクオーラ

2016年08月15日 | ヴェネツィア派

日伊国交樹立150周年特別展
アカデミア美術館所蔵 
ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち
2016年7月13日~10月10日
国立新美術館

 

   本展出品のヤコポ・ティントレット(1519-1594)の《動物の創造》と《アベルを殺害するカイン》について。


   ティントレットは、1548年、サン・マルコ大同信会の大広間のために《奴隷を救う聖マルコ》を完成させ、ヴェネツィア画壇で一躍注目を集める。30歳直前のことである。

参考
ティントレット《奴隷を救う聖マルコ》ヴェネツィア、アカデミア美術館蔵

 

 

   この2点は、その少し後となる1550〜53年に、ヴェネツィアの la Scuola della Trinita (聖三位一体同信会)の広間のために描いた、「創世記」に基づく連作5点の一部である。

 

   そこで、聖三位一体同信会の「創世記」に基づく連作5点を確認する。

 

本展出品の2点


《動物の創造》
151×258cm
ヴェネツィア、アカデミア美術館


   5日目の水の生き物と鳥たちの創造、および6日目の動物たちの創造の場面。

 


《アベルを殺害するカイン》
149×196cm
ヴェネツィア、アカデミア美術館


   人類最初の殺人の場面。

   ティツィアーノも、よく似た身振りの《カインとアベル》をティントレットに先立つ1542-43年に描いている。1540年前後を境にヴェネツィア絵画に大きなインパクトを与えた中部イタリアのマニエリスム様式の影響によるものという。

参考
ティツィアーノ《カインとアベル》ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂

 

 

 

他の3点について。


   1点は、アカデミア美術館所蔵だが、今回の来日組から外れている。2001年に来日。それ以前の1980年にも来日したようだ。

《アダムを誘惑するエヴァ》
150×220cm
ヴェネツィア、アカデミア美術館

 

 

   1点は、フィレンツェのパラティーナ美術館が所蔵。当初から画面を大幅に切り詰められた形となっているという。

《父なる神の前のアダムとエヴァ》
90×110cm(←確かに上記3点より小さい)
フィレンツェ、パラティーナ美術館

 

 

   もう1点は、現存しない。他の画家による模写素描により、構図の概略をうかがい知ることができる。

パオロ・ファリナーティ
《エヴァの創造》の模写素描
NY、ピアモント・モーガン図書館

 

 

   ティントレットの本展出品作5点中4点が、制作年1550-53年頃と、30代前半の作。

   ティントレットは、その後も独自の画風を一層発展させ、晩年まで筆力が衰えることもなく、注文獲得の押しも極めて強く、息子や娘も画家となって大工房を構え、ヴェネツィアの教会や同信会などに大量の作品(個人的には好みの作品が結構ある)を残す。



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