ピカソとその時代
ベルリン国立ベルクグリューン美術館展
2022年10月8日〜2023年1月22日
国立西洋美術館
ベルリン国立ベルクグリューン美術館のピカソ・コレクションに感嘆する。
本展出品数43点+国立西洋美術館・国立国際美術館所蔵品3点の計46点というボリュームの威力もあるが、それにも増して、個々の作品のレベルが高い、というか、私好みである。
「ピカソ」と冠された美術展にてピカソ作品をこれほど楽しんだのは、初めて。
私的には、過去最高のピカソ展と言っても良い。
以下、悩みに悩んだうえでの、私的6選。
《座るアルルカン》
1905年、ベルクグリューン美術館
バラ色の時代。
薄い青、緑、灰色が混ざった暗めの色調で描かれるアルルカンとその衣装。
《踊るシノレス》
1933年、ベルクグリューン美術館
明るい水色の海辺を舞台に、ちょっと古典絵画的な群像表現が伺えるからだろうか、ピカソらしいパワフル欲望系の作品だが、惹かれる。
《水浴する女たち》
1934年、ベルクグリューン美術館
3人の女性。ピカソと関係した女性たちが異形の姿になって海上で争っているというピカソらしいパワフル欲望系の作品だが、造形表現としておもしろい。
《緑色のマニキュアをつけたドラ・マール》
1936年、ベルクグリューン美術館
その日の気分にあわせて奇抜な色(その日は緑色)のマニキュアを塗ったドラ・マールの手。
緑のマニキュアに対応し、上唇に緑を加えていることに感嘆。
本作は、ドラ・マール(1907-97)が生涯所蔵。ベルクグリューンは彼女の死の翌年に行われた彼女の旧蔵品のオークションで取得したとのこと。
《黄色のセーター》
1939年、ベルクグリューン美術館
ドラ・マールの黄色のセーターの描写が実に魅力的。
本作は、ユダヤ系の画商ローゼンベールが所蔵していた時代にナチスに押収されている(のちに返還)。
1959年にベルクグリューンが取得し、本作に17世紀スペインの金塗りの額縁をあてがって愛蔵したという。
《大きな横たわる裸婦》
1942年、ベルクグリューン美術館
パリ占領時代の制作のこの女性像は、「孤独」「苦痛」「絶望」といった、戦争の時代の感情を象徴していると評されているようだ。
ベルリン国立ベルクグリューン美術館は、ドイツ・ベルリン生まれでパリの画商であったハインツ・ベルクグリューン(1914-2007)の個人コレクションからドイツ政府が購入した、あるいは、遺族から寄託された作品を収蔵している。
そのコレクションは、晩年まで作品の購入と放出を繰り返し、最終的にはピカソ、クレー、マティス、ジャコメッティに重点を置かれたものになったという。
ピカソについては、同時代の最大の画家として心酔し、画家本人とも交流しながら作品の収集が行われ、その少年期から晩年まですべての時代を網羅する120点以上からなるとのこと。特に1945年以前の作品が厚いようである。
本展でも、出品作43点のうち38点と大半が、1945年以前の制作である。
特に1910年代のキュビスムや、1930年代の女性像が充実している。
戦後制作の作品も含めて、総じて、ピカソらしいパワフル欲望全開は抑制の感。
コレクターの審美眼・収集方針、それに応じてコレクションを構築できるさまざまな力、本展出品作の選抜方針、これらにより、魅力的なラインナップとなっている。
本展の構成は、次のとおり。
序章、2〜4章および7章にピカソ作品が登場する。
序.ベルクグリューンと芸術家たち
1.セザンヌ - 近代芸術家たちの師
2.ピカソとブラック - 新しい造形言語の創造
3.両大戦間のピカソ - 古典主義とその破壊
4.両大戦間のピカソ - 女性のイメージ
5.クレーの宇宙
6.マティス - 安息と活力
7.空間の中の人物像 - 第二次世界大戦後のピカソ、マティス、ジャコメッティ