東京でカラヴァッジョ 日記

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バイオアート ー「2018年のフランケンシュタイン」(EYE OF GYRE)

2018年09月24日 | 展覧会(現代美術)

 

2018年のフランケンシュタインーバイオアートにみる芸術と科学と社会のいまー
2018年9月7日〜10月14日
EYE OF GYRE(表参道)
 
 
   イギリスの女性小説家メアリー・シェリー(1797-1851)が小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』を出版したのは1818年。2018年は発表後200年の年。
 
   「フランケンシュタイン」は、優れた体力、人間の心、優れた知性を持つが、筆舌に尽くしがたいほどの醜い容貌である怪物の名前ではない。生命の謎を解き明かし、理想の人間の設計図を作り、墓を暴いて死体を手に入れ、その断片をつなぎあわせて、その怪物を誕生させたスイス出身の青年の名前である。怪物には最後まで名前は与えられていない。ことを今回初めて知る。
   「プロメテウス」は、ギリシャ神話に登場する神。火を人類にもたらす。
 
 
 
   さて、本展。 
   表参道に面するファッション複合ビル「GYRE」3階のギャラリースペースが会場。
  「バイオアート」。バイオテクノロジーの発展を背景に、生命を主題や素材とする芸術。9人の作家の作品の展示。展示室には作品解説はないが、解説の紙が用意されている。
   入場無料。写真撮影可。
 
 
 
第1章「蘇生」
 
   科学技術により、死者あるいは死者の何かを蘇らせる3作品。
 
   死者の皮膚を幹細胞技術で再生し「ファッションの素材」にするプロジェクト。本展では試作品の豚革のジャケット、バックなどが展示。展示はいわば模型だが、現に残された髪の毛をもとに実施しようとしているようだ。遺品の新世紀の形態。
 
   瀕死のユニコーンは、臓器むき出しの姿で台の上に横たわる。生命維持機器と管で繋げられている。腹の縫い合わせが上手くいけば手術終了、蘇生が成功するかは本人の体力次第。
 
   ゴッホが切り落とした左耳を生きた状態で復元。「父系の玄孫から提供された軟骨細胞に、母系の子孫の唾液から抽出したミトコンドリアDNAを導入することでつくりだされた」と主張する耳を写真とビデオで紹介。
 
  
第2章「人新世」
 
   現代の科学技術の発展による、自然、生物、そして人間の「凋落」。
 
 
第3章「生政治」
 
   生物学的情報の管理の行く末、2作品。
 
   街角に落ちているタバコの吸い殻、ガムの残り、抜けた髪の毛など「自分でも気づかぬうちに周囲に撒き散らしている」ものから、DNAを採取し、落とした本人の顔を復元する。真実味がある、というか、技術の本質部分は既に実用化されている。
 
 
 
   プリンター、何かを印字したレシート。時々動いてまた何かを印字する。パンデミックを起こす危険性を持ったウイルスなどのDNA配列を作成・印字する「DNAブラックリストプリンター」。その展示室の窓の外には表参道の歩道橋、多くの人たちが行き来している。
 
 
 
   この作品はやばい、と思うならば、その技術、その管理がやばいということ。
   2023年、2028年のフランケンシュタインは、どこを歩んでいるのか。


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