2018年のフランケンシュタインーバイオアートにみる芸術と科学と社会のいまー
2018年9月7日〜10月14日
EYE OF GYRE(表参道)
イギリスの女性小説家メアリー・シェリー(1797-1851)が小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』を出版したのは1818年。2018年は発表後200年の年。
「フランケンシュタイン」は、優れた体力、人間の心、優れた知性を持つが、筆舌に尽くしがたいほどの醜い容貌である怪物の名前ではない。生命の謎を解き明かし、理想の人間の設計図を作り、墓を暴いて死体を手に入れ、その断片をつなぎあわせて、その怪物を誕生させたスイス出身の青年の名前である。怪物には最後まで名前は与えられていない。ことを今回初めて知る。
「プロメテウス」は、ギリシャ神話に登場する神。火を人類にもたらす。
さて、本展。
表参道に面するファッション複合ビル「GYRE」3階のギャラリースペースが会場。
「バイオアート」。バイオテクノロジーの発展を背景に、生命を主題や素材とする芸術。9人の作家の作品の展示。展示室には作品解説はないが、解説の紙が用意されている。
入場無料。写真撮影可。
第1章「蘇生」
科学技術により、死者あるいは死者の何かを蘇らせる3作品。
死者の皮膚を幹細胞技術で再生し「ファッションの素材」にするプロジェクト。本展では試作品の豚革のジャケット、バックなどが展示。展示はいわば模型だが、現に残された髪の毛をもとに実施しようとしているようだ。遺品の新世紀の形態。
瀕死のユニコーンは、臓器むき出しの姿で台の上に横たわる。生命維持機器と管で繋げられている。腹の縫い合わせが上手くいけば手術終了、蘇生が成功するかは本人の体力次第。
ゴッホが切り落とした左耳を生きた状態で復元。「父系の玄孫から提供された軟骨細胞に、母系の子孫の唾液から抽出したミトコンドリアDNAを導入することでつくりだされた」と主張する耳を写真とビデオで紹介。
第2章「人新世」
現代の科学技術の発展による、自然、生物、そして人間の「凋落」。
第3章「生政治」
生物学的情報の管理の行く末、2作品。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/8b/1e7c23d4720ce8f309b3e70ab52500ac.jpg)
街角に落ちているタバコの吸い殻、ガムの残り、抜けた髪の毛など「自分でも気づかぬうちに周囲に撒き散らしている」ものから、DNAを採取し、落とした本人の顔を復元する。真実味がある、というか、技術の本質部分は既に実用化されている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/1c/e5372b8ca497a3635959926e75837a00.jpg)
プリンター、何かを印字したレシート。時々動いてまた何かを印字する。パンデミックを起こす危険性を持ったウイルスなどのDNA配列を作成・印字する「DNAブラックリストプリンター」。その展示室の窓の外には表参道の歩道橋、多くの人たちが行き来している。
この作品はやばい、と思うならば、その技術、その管理がやばいということ。
2023年、2028年のフランケンシュタインは、どこを歩んでいるのか。