ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち
2018年1月13日~4月1日
世田谷美術館
マネの大作、修復後初公開
約70年ぶりの修復を経て公開されるマネの大作《街の歌い手》。これまで鈍いねずみ色だった上着やスカートは、青みがかったシックなグレーに。細いストライプも浮き出て、最新流行の装いであることが判明。扉の奥の居酒屋の様子もよりよく見えます。
2010年の三菱一号館美術館「マネとモダンパリ」展でのお気に入り作品、マネ《街の歌い手》と再会。
今回黄ばんだニスを取り除くなどの修復を行ったらしい。前回は全く意識した記憶がない「扉の奥の居酒屋の様子」、確かによく見える。壁の釘にかけられた帽子が二つ。4人の姿。着席の3人の男は客だろう、画面左方向を向くシルクハットの男とニット帽の男、こちらに背を向ける無帽で薄い後頭部の男。屈んだ姿勢の腰あたりのみが描かれているのは給仕だろうか。
酒場を渡り歩く女性歌手。一仕事終えたところであろう。左手にギターとサクランボの包みを抱え、右手でそのサクランボをつまみ喉を潤そうとしている。
モデルは、マネのお気に入りのモデル、ヴィクトリーヌ・ムーラン(1844-1927)。
パリの職人の家に生まれた彼女は、16歳のときから美術モデルで生計をたてはじめる。
彼女がマネのモデルを務めた最初の作品が1862年頃制作の本作品。以降10年以上にわたりモデルを務める。西洋美術史上燦然と輝くマネのあの代表作のモデルも彼女が務めている。
以下、彼女をモデルとする主なマネ作品。
《街の歌い手》
1862年頃
ボストン美術館
《ヴィクトリーヌ・ムーランの肖像》
1862年
ボストン美術館
《草上の昼食》
1863年
オルセー美術館
《オランピア》
1863年
オルセー美術館
《鉄道》
1872-73年
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
彼女は後に画家として活動したらしい。サロンにも何度も作品が展示されたという。Wikipediaによると、現存する彼女の作品は、2004年に確認された油彩画1点のみとのこと。