東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

アンドレアス・グルスキー展(国立新美術館)

2013年07月15日 | 展覧会(西洋美術)

アンドレアス・グルスキー展
2013年7月3日~9月16日
国立新美術館


まずは、観賞上、展示方法に起因して不便だったことを記載する。
といっても、グルスキーご本人の意向を反映させたものであるらしく、観者は、その状態下で味わうことを期待されている。


【不便だったこと】
出品リスト(出品番号の付番)は、制作年代順。連作の作品は、ほぼ連番。
しかし、会場の展示順は、完全なシャッフル。連作であっても、別の部屋に離れて展示されている。

加えて、作品名を記載したキャプション。作品から随分離れた隅っこに掲示されている。
しかも字が小さい。作品名の字も小さいが、出品番号の字はさらに小さい。虫めがねが必要なほどである。

会場には作品解説のキャプションは一切ないが、出品リスト上では、ごく一部の作品に簡単な解説がある。
当該作品の題名が何なのか、出品番号は何番か(出品リストに作品解説があるのか知るために必須)、確認するために、作品の前からキャプションまで大移動しなければならない。
ある程度出品リスト順の展示ならば、大移動しなくても、想像できることもあるのだろうが、いかんせん、作品を見ただけでは何が描かれているのかわからないこともあって、常に大移動を余儀なくされる。
それでいて、題名が「無題」であったり、出品リストに解説がなかったり、複数のキャプションが並んでいてどの作品に対応するのかわからなかったりすると、がっくりくる。

そんなことで、難儀な鑑賞となった。
皆さまも同じなのだろうか、会場前半に対して、会場後半は鑑賞者が少なくなる感があった。


【気になった作品】
初めて作品を見る作家であり、全く消化できていないが、興味深いことは確か。

マクロの視点とミクロの視点を両立させ、実に微細に描きこまれ(もとは写真だけれども)、その描写が増幅される。
書籍の図版ではわからない、大画面の迫力が伴う。


以下気になった作品。
気になった作品は多数あるが、ここでは抜粋。


No.44 フランクフルト
 フランクフルト空港の行き先掲示版。
 個人的に、成田国際空港やヨーロッパの鉄道大ターミナルの行き先掲示版が大好きである。いろんな行き先が掲示されていて、旅情を誘われる。
 作品に描かれたフランクフルト空港は、さすがの大空港。
 行き先掲示版の便数の多さ。行き先の多様さ。
 ヨーロッパについては、小さな空港を含めてヨーロッパ中の空港が網羅されている感じで、アジアやアメリカなどがところどころ混じる。
 作品下部の、カウンターに並ぶ乗客の存在も、旅情にプラスする。
 見ていて全く飽きない。絵葉書が売っていたら購入していたのに。作品の楽しみ方が違うかなあ。


No.47ピョンヤン1、No48.ピョンヤン5
<出品リストの解説より>
 大判カメラによって画面の隅々にいたるまで緻密な描写がなされ、マスゲームのためにポーズをとる少女たちの表情が捉えられています。各自の個性はいかさずに、北朝鮮の全体主義のため力をあわせてマスゲームのシーンが繰りひろげられますが、写真に近づいて少女たちの姿をよく見ると、そこには必ずしもコピーのような共通の姿態ではなく、少なからず個々の表情の違い、微妙なポーズの差異が見受けられ、社会主義国家に住む人間の姿が垣間見える瞬間とも言えます。

 解説に従い、「写真に近づき少女たちの姿をよく見る」鑑賞をし、納得した。

 1作品は大阪の国立国際美術館の所蔵作。
 1作品は、中心に地球儀が描写されているが、朝鮮半島を中心とすると、どうしても日本が目立つ。


No14.エンガディン地方
 単に、スイスの山が好きなため。


No15-17 プラダ
 これはシャッフル展示が功を奏した感。最後3点目に登場するプラダ店舗の陳列棚には、にやり。


No.23 99セント
 99セントの商品で埋め尽くされたディスカウントショップ。
 ものすごいボリュームの商品。
 個々の商品の違いが識別できる緻密さ。同じ商品は全く同じパッケージで(当たり前)、シリーズ商品は多少変えたパッケージで。
 潔癖症的に整然と陳列されている商品。(が、ところどころ客がいじったのだろう、小さな乱れが見られる。)
 1個99セント、2個で99セント、3個で99セント、陳列ケースに貼られた値札。

 これは凄い。
 見渡す限り、生鮮食品のような個々に個性のある商品はなく、工場のパッケージ製品ばかりであることが、凄いイメージを倍加させる。また、前面に出されたのが、菓子商品という飽食系の商品であることが、この凄いイメージをさらに加速させる。
 こんなところで買い物したくない。が、日本のコンビニや安売りスーパーも、規模の違いこそあっても似たようなものなのだろう。


No38 クフ
 99セントと異なり、一見似ているが、実は個々が個性的な形をしている石のつらなり。


個人的には、No.46カミオカンデや、No42.大聖堂1のように、画面右下に小さく描かれた人物が見上げているというのは、
18世紀のグランドツアーのお土産作品的な構図で、現代作品の構図としてはあまり好きではない。

群衆もの作品を見ていると、昨年の「篠山紀信展 写真力」で見た作品、≪豊島園プール≫(1987年)を思い出した。
≪豊島園プール≫も似た発想の作品だったのだろうか、この作品の方が親近感がわく。


全65点。この大画面の迫力は、図版では味わえない。
余裕があれば、再訪したい。8/7から開催の「アメリカン・ポップ・アート展」とセットで訪問できればいいなあ。


アンドレアス・グルスキーは、1955年生のドイツの現代写真を代表する写真家。
本展覧会には、1980年代の初期作品に始まり、1990年代、2000年代の代表作から、2012年の最新作にいたるまで、グルスキー自身が厳選した約65点の作品が展示されている。



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