東京でカラヴァッジョ 日記

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「ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画」(太田記念美術館)

2023年07月24日 | 展覧会(日本美術)
ポール・ジャクレー
フランス人が挑んだ新版画
2023年6月3日~7月26日
太田記念美術館
 
 
 会期最後の週末に駆け込み訪問。
 初めて名を知るフランス人の版画家、ポール・ジャクレー(1896〜1960年)の展覧会。
 
 
 1896年、パリに生まれる。
 3歳のとき、現一橋大学のフランス語教師となった父を追って家族と共に来日する。生涯を日本で過ごすこととなる。
 11歳のとき、白馬会洋画研究所にて、黒田清輝、その後久米桂一郎に油彩画を学ぶ。
 13歳頃のとき、池田輝方・蕉園夫妻に日本画を学ぶ。
 その他教育により、日本文化への深い造詣を持つようになる。
 
 昭和3年、母が日本人の医師と再婚し、翌年ソウルに赴任する。以後、母が亡くなる昭和15年まで毎年のようにソウルを訪問する。
 
 昭和4〜7年、毎年数ヶ月〜半年間、静養のため、当時日本の委任統治領であったミクロネシア諸島に滞在する。
 
 昭和9年から、滞在地で描きためた水彩画をもとに、日本やミクロネシア、朝鮮などの人々を題材に、多色木版画の制作を開始する。
 
 戦争中は、敵性外国人とみなされて軽井沢に隠遁、制作は中断するが、戦後は軽井沢にとどまって制作を再開、駐留米軍関係者たちが競ってその作品を購入したという。
 
 
 本展では、前後期(完全入替制)あわせて、ジャクレーの木版画162点が展示される。
 162点というのは、ジャクレーが制作した木版画すべてであるようだ。
 
 
 新版画らしく、色彩が豊かで鮮やか。
 色彩豊かに鮮やかに、日本やアイヌ、ミクロネシア、朝鮮、中国、モンゴルなどに暮らしている老若男女の姿が描かれる。
 女性像は、あまりエロティックな感じがしない、というかそこを追求していない感。むしろ、少年・青年像のほうがエロティックさがある。年配の男女を描いた作品も多く、風俗画として味がある。老若男女を等間隔で描いている感がする。
 エキゾチシズムは、日本人視点ではないためであろうか、日本人の姿も他国の人々の姿も等間隔の感がする。
 
 
 ジャクレーの版画は、ほぼ私家版であるという。
 不特定多数に向けた販売のための作品は、昭和10年の加藤版画研究所から刊行した6点程度であるようだ。若い女性を描いたそれら作品、日本人・朝鮮人女性はよいとして、最も期待されていたであろうフランス人女性を描いた作品は魅力に欠ける感。1年程度で撤退したのは、商業版画との折り合いがつかなかったのであろう。経済的に不自由していなかったようだ。資産家の家系だったのか、お雇い外国人はその子供も困ることがないほどに一財産築くことができたのか。
 
 
 本展の図録は、出品作品162点のうち40点の掲載となっている。
 


2 コメント

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Unknown (k-caravaggio)
2023-07-30 22:19:15
クリンさま
コメントありがとうございます。
猛暑が続きますね。これだけ猛暑だと、普段ならば気にならない駅から徒歩10分程度の歩き(東京国立博物館、東京都美術館、東京都現代美術館など)や、屋外と展示室内の温度の差(国立新美術館などで特に室温を低く設定している場合があります)をきつく感じたりするので、美術館巡りもなかなか難儀です。チケット売り場での待ち行列は体力と時間を奪うので、事前購入(ネットなど)が推奨です。
しばらく猛暑は続きそうですので、クリンさまもどうかご自愛ください。
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Unknown (クリン)
2023-07-30 11:40:06
「少年・青年像のほうがエロティックさがある・・」「年配の男女を描いた作品も多く、風俗画として味・・」
おお✨さすがカラヴァッジョさまです🐻⤴まさにおっしゃる通りです!!
黒田清輝に教えてもらったりできたわけですから、やはりお雇い外国人の子は「特権階級」だったんだなあとクリンも思いました💡
すごい猛暑ですが、こういう時こそ美術館巡りがいいですよね💎⤴✨
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