カラヴァッジョ展図録(第1版)で、展示不可となったカラヴァッジョ2作品を。
以下、専ら図録の作品解説を参照して記載。
カラヴァッジョ
《ホロフェルネスの首を斬るユディト》
1602年頃、144×195cm
ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館
本作品は、銀行家オッタヴィオ・コスタ(1554〜1639)のために制作された。
コスタが残した1632年および1639年の遺書で言及しており、特に前者には「全てのカラヴァッジョの絵画作品、特にユディト」を売り払うことを禁じた記載があるという。また、1999年に行われた修復では、カンヴァスの裏側にコスタが所有していたことを示す「C.O.C」の文字が見つかったという。
その後、(19世紀半ば頃)コスタ家が途絶え、ローマの同信会の所有に。1854年、デル・チンクエ・クインティッリ公爵が購入。1951年、子孫が修復を依頼したことで、ロンギにその存在が伝わり、世に知られるようになる。1971年、イタリア政府に売却され、現所蔵館に。
だから、1951年のミラノのカラヴァッジョ展に出品されていない。
本作品の制作年代は、長く1599年頃(コンタレッリ礼拝堂の「聖マタイの殉教」制作直前)とされてきたが、近年、発見された領収書により、1602年頃とする説(本展はこれ)が浮上しているという。
コスタは、本作品以外にも、ハートフォードのワズワース美術館蔵の《聖フランチェスコの法悦》や、カンザスシティのネルソン=アトキンス美術館蔵の《洗礼者聖ヨハネ》を所有した。
2作品とも、1951年のミラノのカラヴァッジョ展に出品。なお、後者の当時の所蔵者は英国・個人蔵とある。
カラヴァッジョ
《瞑想するアッシジの聖フランチェスコ》
1605-06年、123×92.5cm
カルピネート・ロマーノ、サン・ピエトロ聖堂(ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館に寄託)
本作品は、長きにわたって、ローマの(骸骨寺として知られる)サンタ・マリア・デラ・コンチェツィオーネ聖堂が所蔵する《瞑想するアッシジの聖フランチェスコ》のコピー作品だと考えられてきた。2000年に行われた大規模な修復調査の結果、本作品のほうがオリジナルと判明する。
X線調査により、本作品は、当初は別構図をとっていたが全面的に描き直されていること、画家に固有の技法が用いられていることが確認された。逆に、今までオリジナルとされてきた骸骨寺の作品は、描き直しは全く見られず、制作方法も画家のものとは異質であり、他の画家によるコピー作品と判明したという。
本作品の制作時期は、ローマ時代(1603年)、ローマ逃走後ナポリ到達までの間(1605-06年)(本展はこれ)、最晩年(1609年)、と複数の意見があり、決着をみていないという。
本作品は、2001年の日本最初のカラヴァッジョ展にて来日している。修復調査直後、晴れて真筆と判明した直後の来日だった。