東京でカラヴァッジョ 日記

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【再訪】ホドラー展(国立西洋美術館)

2015年01月11日 | 展覧会(西洋美術)

フェルディナント・ホドラー展
2014年10月7日~15年1月12日
国立西洋美術館


 1975年以来約40年ぶりの回顧展も、いよいよ1/12をもって終わり、ということで、再訪する。


1:象徴主義的作品

 長年気になりながら実見する機会がなかったホドラーの象徴主義的作品。
 本回顧展とチューリヒ美術館展(国立新美術館で12/15まで開催)とをあわせ、相応数の作品を観ることができた。
 おかげで、自分がホドラー・ファンであることを確認できた。

 ホドラーの象徴主義的作品といえば、≪夜≫≪昼≫≪絶望せる魂≫≪選ばれし者≫をまず思い浮かべる。
 1975年の回顧展の出品作品には、確認してはいないが、代表作とされる作品も相応数含まれていたらしい。
 「このときも≪夜≫は来てないんです。他のメインの作品はだいたい来たんですけど。」

 「75年のころとは状況が全然違っているんです。貸し出しの基準とか保険の問題とかいろいろあるんですけど、何よりホドラーは国際的に再評価の動きがあって、今売れっ子なんです。スイス国内でも貸し出しが多くて、バッティングしてしまうんです。」

 そういう状況下の本回顧展。
 チューリヒ美術館展とあわせての一番のお気に入りは、

 チューリヒ美術館展出品の≪真実、第二バージョン≫(1903年)

 「あちらのホドラーもこちらの展示に入れられればよかった……とは言えませんけど(笑)。チケット割引とかで連動させてはいるんですけどね。」

 No.34≪感嘆≫(1903年頃、ベルン美)が、回顧展図録によると≪真実≫の関連作品であるらしい。
 修道者であるかのように一人立つ裸体の女性の身振り。
 印象的なのは背景。白色の雲と水色の空とが交互に、膝から下からは、遠くの山、湖、地面、そして緑と花。

 本回顧展では、No.24≪オイリュトミー≫(1895年、ベルン美)の出品が特筆される。本作が出品されたのは、本当にありがたいこと。

 「今回の展示の核となる作品の一つです。ホドラーの転換期の作品だと思っているので。」

 No.28≪昼III≫(1900-10年頃、ルツェルン美)は、女性3人バージョン。
 できれば、≪昼I≫(ベルン美)や≪昼II≫(チューリヒ美)の女性5人バージョンも観たかった。
 本回顧展は、なぜか第3バージョン作品の出品が多い。

 その想いを補うかのように、≪昼≫の習作が5点展示される。
 これが実に楽しい。特に絵の左側に展示のNo.29~31の3点。この方向での完成作も観たい(あるのかどうかは知らない)。

 「今回、下絵をたくさん紹介してるんですけど、下絵のほうが面白かったりするんです。本番になると、「あれ? なんでそこに行った? もっとやればよかったのに」みたいなときもあって(笑)。」

 ※「」内は、「現代につながる、線とリズム―「フェルディナント・ホドラー展」倉本美津留×新藤淳」から引用。


2:象徴主義的作品以前の作品

 No.13≪ベルン州での祈り≫(1880-81年、ベルン美)とNo.23≪傷ついた若者≫(1886年、ベルン美)の2点が特に良い。

 ≪ベルン州での祈り≫は、大型(201.3cm×279.3cm)の宗教作品。クールベを思い起こさせる。
 祭壇に祈りを捧げる「ベルン州特有の身なりをした」若い女性、女性を囲むように配置された他の人物達。

 ≪傷ついた若者≫は、草原に横たわる後頭部に傷を負った裸体の青年が描かれる。生きているのかどうか?
 本作は「善きサマリア人」の物語を描いた作品から派生した作品。
 画面右手には、一度描かれながら消された老人がうっすら見える。
 一度描かれながら消されたのは、背景の城壁もそうで、「老人・城壁あり」バージョンの作品も存在する。

 本作やNo.12≪死した農民≫、No.101≪バラの中の死したヴァランティーヌ・ゴデ=ダレル≫もそうだが、スイスの画家にとって、バーゼル美蔵のホルバイン作≪墓の中の死せるキリスト≫(32.4×202.1cmの超横長作品)のイメージは強いらしい。三菱一号館美術館で見たヴァロットンの作品ほどの直接的な表現をするかは別にしても。
 


 他にも、PART4のアルプスの山・湖を描いた作品や、PART5の壁画装飾プロジェクト作品も忘れてはならない。


実に素晴らしい回顧展である。
チューリヒ美術館展、本回顧展とも、1月下旬から神戸に巡回する。


さて、次に東京地区で、ホドラーの作品(特に象徴主義的作品)に会うことができるのは、いつかなあ。

それから、スイス近代美術の画家といえば、フュースリ(1741-1825)とベックリン(1827-1901)も重要。
フュースリは1983年に、ベックリンは1987年に、国立西洋美術館で回顧展が開催されている。
これらも再開催していただけるとうれしいのだが、早くても約40年後となる2020年代?



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