東京でカラヴァッジョ 日記

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3.11大津波と文化財の再生(東京国立博物館)

2015年01月17日 | 東博総合文化展

3.11大津波と文化財の再生
2015年1月14日~3月15日
東京国立博物館 本館特別2室・4室


展示は、本館の入口玄関前から始まる。

No.72≪実習船かもめ≫

(キャプションより)
 岩手県立高田高校海洋システム科が使用していた実習船。震災前は養殖実習などに活用されていた。陸揚げされていた港で被災し、約2年間太平洋を漂流したあと、アメリカ・カリフォルニア州クレセントシティの海岸で発見された。(2013年に返還)


なかに入ると、大階段踊り場には、

No.71≪リードオルガン≫



 そのまま、2階の特別2室に向かう。

 陸前高田市立博物館(一部は岩手県の寺・個人)所蔵の被災文化財や、陸前高田市発祥の文化財(所蔵は東博や科博)が70点展示されている(写真撮影不可)。
 津波で止まった時計(3:27)、考古資料(土偶、土器ほか)、高田歌舞伎、吉田家文書と隕石、漁撈用具、青い目の人形、標本(昆虫・鳥)、油彩画、仏像など。

 特に印象に残ったもの。

冒頭の写真パネル(手書きの置か書き)
「博物館資料を持ち去らないでください。高田の自然・歴史・文化を復元する大事な宝です。市教委」

No.14≪唐丹村海嘯死亡法号≫1幅
(明治45年、岩手・盛岩寺)
 1896年(明治29年)の三陸大津波により、唐丹村住民約2,500人のうち死亡した1,650人の法号を3幅に記したもの。うち1幅。
 一番上の段に海嘯記が記され、以下12段にわたって、家ごとに法号、俗名が細かい字で記される。その数(単純計算で500人超←12段×48)に圧倒される。
 大津波の16年後につくられて、つくられた100年後に大津波被害に遭う。そして修復。その歴史にも圧倒される。
 大事にしたいと思う文化財である。


1階の特別4室。

 パネル展示で、文化財再生(救出、安定化処理、保管)の取り組みが紹介される。
 また、ケネディ駐日大使から贈呈されたNo.73≪実習船かもめ付着生物標本≫も展示される。

 
 ただ、特別4室は、パネル展示室というよりも、同時開催中の「みちのくの仏像」展のミュージアムショップ+映像紹介の場として利用されているため、大変な人。それもパネルに背を向けた人ばかりで、極めて見づらい状態。


 図録を立ち読みして知ったが、本展は、東京のほか、宮崎と兵庫で同時開催中である。
 3会場合計すると、陸前高田市関係の被災文化財が272点展示される。
 また、兵庫会場では、加えて兵庫県内の被災文化財についても紹介しているようだ。

<宮崎会場> 
“文化財”を守り伝える力 大災害と文化財レスキュー
2015年1月10日~2月22日
宮崎県総合博物館

<兵庫会場>
阪神・淡路大震災20年
災害と歴史遺産-被災文化財等レスキュー活動の20年-
2015年1月10日~3月15日
兵庫県立歴史博物館


 以下、本展のリーフレットより。

 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が引き起こした大津波は、地域の文化を支えてきた文化財にも甚大な被害をもたらしました。救出された文化財は、海底のヘドロ、生活雑排水に含まれる様々な雑菌類、海水に含まれる塩分などが原因となり、変色や腐敗腐食などの劣化が急激に進むおそれがあります。そのため、文化財内部に侵入した劣化の原因を取り除く作業である「安定化処理」が必要となります。これまで東京国立博物館は、陸前高田市立博物館、岩手県立博物館や他の機関と協力し、安定化処理や修理を行なってきました。しかし、これらの処置には技術開発を伴うものもあることから、すべてを終えるには今後10年はかかると言われています。本展では、これまでの4年にわたる被災文化財の安定化処理や修理の過程および現状を紹介し、再生への取り組みをお伝えします。



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