東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

アクセリ・ガッレン=カッレラ《ケイテレ湖》-国立西洋美術館の2021年度新収蔵品

2022年11月28日 | 国立西洋美術館常設展示
 本作品の国立西洋美術館収蔵後の初公開は、2022年6〜9月開催の国立西洋美術館リニューアルオープン記念「自然と人のダイアローグ」展でのこと。
 
アクセリ・ガッレン=カッレラ
《ケイテレ湖》
1906年、61×76.2cm
 
 見慣れぬ作品、初めて名を聞く画家に、てっきりフォルクヴァング美術館の所蔵作品かと思ったら、国立西洋美術館所蔵との表示にびっくり。2021年度に購入した作品だという。
 
 
 その展覧会が終了し、《ケイテレ湖》は現在、常設展に展示中。
 
 新館1階の展示室、通例はピカソほか20世紀美術の大型作品が展示される展示室。
 通例は新館2階の「モネ室」といってもよい展示室に展示される国立西洋美術館の箱入り娘・モネ《睡蓮》と、通例は新館1階のポスト印象派から20世紀初め辺りの作品が展示される展示室に展示されるシャヴァンヌ《貧しき漁夫》、2点の松方コレクションに挟まれての展示である。
 なお、その同じ展示室には、破損した画面が痛々しいモネの大型作品《睡蓮、柳の反映》も展示されている。
 この展示方法をいつまで続けるのかは不明だが、なかなか新鮮。
 
 
 アクセリ・ガッレン=カッレラ(1865-1931)は、フィンランドの国民的画家であるという。
 民族叙事詩『カレワラ』を画題とした作品を多く制作しており、本作もその一つで、ロシア支配下にあったフィンランドの独立運動(独立は1917年)にも寄与したという。
 
 
 ケイテレ湖は、フィンランド中部にある大きな湖。その面積は 493.59 km² 。フィンランド国内では9番目の大きさ。日本の湖と比べると、琵琶湖よりは小さいものの、霞ヶ浦の2.25倍の面積となる。
 
 
 風景画にしか見えないが、どこが民族叙事詩『カワレラ』なのか。『カワレラ』にケイテレ湖が登場するのだろうか。
 どうやら、湖の表面に描かれた「ジグザグに走る波模様」。
 風と湖の流れとの相互作用によって引き起こされる自然現象。
 画家は、この波模様を『カワレラ』の主要な登場人物である「ワイナミョイネン」が船を漕いで通った痕跡「ワイナミョイネンの航跡」と呼んだという。
 
 
 画家は、本作品と同じ構図の作品をあと3点残している。
 
 2017年、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが、《ケイテレ湖》4点すべてを集めた展覧会「Lake Keitele: A Vision of Finland」を開催した。
 
 1点は、自館の所蔵(1999年に購入)。
 
アクセリ・ガッレン=カッレラ
《ケイテレ湖》
1905年、53×66cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
 
 1点は、フィンランドのLahti Art Museumの所蔵。
 
 もう2点は個人蔵。そのうち1点は、ヘルシンキ近郊のガッレン=カッレラ美術館への長期貸与。
 この個人蔵2点のうち1点が、2021年に国立西洋美術館の所蔵となったことになる。
 
 国立西洋美術館のプレスリリースによると、「ノーベル賞の生みの親である化学者アルフレッド・ノーベルを輩出したノーベル家が 1909 年に画家から直接購入した本作は、当初アルフレッドの姪にあたる女性が所有し、その後彼女の子孫に受け継がれた。」とのこと。国立西洋美術館はその子孫から購入したらしいから、上記2点の個人蔵のうち長期貸与されていなかったほうの1点にあたるのだろうか。
 
 
 アクセリ・ガッレン=カッレラ《ケイテレ湖》を所蔵したのだから、国立西洋美術館には、是非、近い将来に「アクセリ・ガッレン=カッレラとその時代」展を開催して欲しいもの。
 
*フィンランドの芸術家と言えば、私が観た展覧会の範囲に限るが、2015年の東京藝術大学大学美術館「ヘレン・シャルフベック」展、2019年の東京ステーションギャラリー「ルート・ブリュック」展、2019年の国立西洋美術館「モダン・ウーマン-フィンランド美術を彩った女性芸術家たち」展があり、優れて活躍した女性芸術家が多いとの印象。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。