軽井沢ル・ボン・ヴィボン

塩の使い方

皆さんは塩をどのように使っていますか?

一般的な日本人は塩を単独ではあまり使わず
塩分を醤油や味噌で加えている場合が多いと言われています。
これは肌感覚的にも正しいと思います。

私はフランス料理のシェフなので
逆に塩はいつも手元にありますが
醤油や味噌は主に賄いを作る時に使用しています。

つまり「賄いを作る時」というのは私が一般的な日本人に戻る時で
塩より醤油や味噌の出番が多くなります。

さて、本題に戻しますが
塩はただしょっぱいだけではないのは皆さんもご承知の事と思います。
基本的にフランス料理に使う塩は
フルールドセル、セルファン、グロセルの3種類に大別されます。
また、日本の天日塩や粗塩、精製塩なども使うので
相当な数の塩を使い分ける形になります。

フルール・ド・セルは結晶塩です。
写真は愛用のカマルグのフルールドセル
一番塩にあたる大きな結晶で、あくが少ない純粋な塩に近い組成
これは仕上げ塩にいいです。

仕上がった料理の上から最後にパラリ。
お口の中で素材と大粒の塩結晶がゆるりと溶け合う感じがいいですね。

カマルグと書いてありますが
南フランス、プロヴァンス地方、地中海に面したカマルグ湿原の
Aigues-Mortes(エーグ・モルト)にその製塩所があり
その規模はとても大きく、私が訪ねた様々な塩田の中でも最大級です。

これが有名なカマルグのピンク色の塩田ですが
夕方なのでちょっと分かりにくいかも


奥に集められた塩の山があります


セルファンは普通塩という位置づけにされています。
私が愛用しているのは、このゲランドのセルファン
地中海のカマルグとは違い、こちらは大河ロワールが大西洋に流れ込む
ロワール=アトランティック地域、つまり大西洋の塩。

粒子が結晶塩に比べて細かいので
普段はスープやソースに塩味を足したり
肉や魚のアセゾネ(下味をつける)に使います。

ゲランドの塩田です。
こちらは小さな塩田がたくさん集まって大生産地となっています。
海から水を引いたばかりなのか、名物の塩の山は確認できませんでした。



写真上段がゲランドのセルファン
下段がカマルグのフルールドセル、粒子の細かさだけではなく色も違います。


ゲランドのセルファンを水に溶いて塩水にすると
底にわずかに砂のような物が沈むのを必ず発見できます。
これはある意味不純物だけど、この不純物こそが雑味の元で
それは海の味と言い換えることもできるでしょう。
(実際には少し違うのですが)


個人的な好みで言うと、この雑味が良くて
私のスペシャリテである
「孤太郎牡蠣の冷製・ベルギーエシャロットと10年熟成ペドロヒメネス・シェリービネガーに海水ジュレ、玉ねぎのムース」
(名前長いですが)
の海水ジュレ部分は
このゲランドのセルファンを海水と同じ塩分濃度に純水に溶かした物。
つまり「大西洋の海水が復元された味」になります。

これで牡蠣を食べると牡蠣の味わいが本当に別物になります。
私にとってはオレロン島のジラルドーやアルカッションの牡蠣を思い出す味。
左はアルカッション、右はジラルドー

ほんの少しの違いだけど、皆さんもその違いをしっかりと感じることができます。
犬の嗅覚と同様、人間は味覚×嗅覚のトータルが鋭いので。

また、このゲランドのセルファンは
ここだけの話で、肉でも魚介でも野菜でも
焼き上がった仕上げにちょっと付けて食べると、食材が悶絶の美味しさになります。
感じ方に個人差はあると思いますが、皆さんもご家庭で是非一度お試しになって
私の説が本当かどうか、ご確認いただきたいと思います。

塩自体がうまいというより
塩と食材と微量な要素が入り交じる事で得られる相乗効果です。

もちろんLe Bon Vivant 軽井沢では
リクエストして頂ければ、お料理にセルファンを添えて仕上げることも可能です。
ご来店の際は気軽にお声がけくださいませ。

最後に
この塩は一番最近に訪ねた
カナリア諸島のランサローテ島の塩田で買ってきたもの

塩田はヨーロッパ各地にあるので
ドライブ旅の際に、巡ってみるのも一つの楽しみになっています。

塩だけではありません
オイルも、ヴィネガーも、エピスもこだわる事で得られる違いは大きく
それはフランス料理、ひいてはヨーロッパ料理のエッセンスとなって
私を魅了してやまない世界となっています。



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