NOVAの負債のうち、約400億円とされている前払い受講料が、700億円程度に膨らむ可能性があるという記事。記事では会計処理に問題があるといっています。
「NOVAは、受講生が契約時に前払いした金額のうち、45%を売り上げとして計算。残りの55%を前払い受講料として帳簿上の負債に入れていた。受講生が予定通り授業を受ければ問題はないが、実際に授業を受けなかった場合、一度売り上げとした金額を負債として計算し直す必要がある。
NOVAは、会社更生法申請前から、中途解約の動きが広がっていた。さらに資金繰りの悪化で講師不足や教室閉鎖が相次いでいた。売り上げとして計算されていた金額の多くが負債になる可能性が高い。」
教科書的に考えると、契約時の前受金はまず全額負債に計上して、生徒が授業を受けて使った分だけ収益に振り替え、さらに、契約期限が到来した時点で、生徒が権利を使い切らずに残ってしまった残額を収益に振り替えることになるはずです。いったん45%を売上にしてしまうという処理は、権利の使用状況を個々に把握し、決算に反映させる仕組みがなく、簡便的に、決算期末までに使われるであろう部分を平均して45%と見積もって売上にしていたということでしょうか。
その見積りが妥当かどうかは判断がつきませんが、状況が変わって授業の消化率が低くなったのであれば、売上に振り替えていく方法も見直す必要があったのかもしれません。
(以上はあくまで推測です。会計処理の方法がはっきりしないとなんともいえません。)
補足:
同社有報の収益認識基準の注記には以下のように記載されています。
「 売上高のうち、主な収入である駅前留学サービス収入は、主として「入学金」ならびに「受講料(うち45%が「NOVAシステム登録料」であり、残りの55%が「NOVAシステム利用料」であります。)」から構成されていますが、そのうち「入学金」および「NOVAシステム登録料」については、契約時に収益として計上し、「NOVAシステム利用料」については、契約期間に対応した期間にて均等計上しております。」
入学金が契約時計上というのはわかりますが、システム登録料というのも授業の対価ではないのでしょうか。そうだとすると、授業というサービスの提供に応じて収益計上するか、簡便的に期間に応じて収益計上するのが、納得できる処理です。
ただし、日本の現行会計基準では、収益の認識基準はあいまいなところがあり、例えばゴルフ場運営会社がゴルフ会員権を販売した場合、販売代金のうち預り金以外の部分(いいかえると返還義務がない部分)は入会時に全額収益計上する処理が認められています。したがって、生徒から受け取った金額のうち、解約時に返還する義務のない部分について直ちに収益計上したとしても、基準違反ではないのかもしれません(認める会計士は少ないかもしれませんが)。
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