東芝の不正会計の規模が1000億円以上になる見通しだという記事。
「東芝が過去の決算で不適切な会計処理をしていた問題で、2010年3月期から14年3月期にかけての営業利益の水増し額が、1千億円以上になる見通しであることが3日、わかった。これまで明らかになっていた約550億円からほぼ倍増する。田中久雄社長ら経営陣の責任がさらに問われそうだ。」
NHKも1000億円超という説です。
東芝 下方修正は1000億円超の見通し(NHK)
「関係者によりますと、第三者委員会のこれまでの調査の結果、東芝はことし3月期までの5年間のグループ全体の営業利益について、会社側の発表の2倍に当たる、合わせて1000億円を超える下方修正を迫られる見通しとなっていることが分かりました。」
一方、毎日や日経は、1500億円超という数字を出しています。
東芝:不適切会計1500億円 半導体、パソコン部門でも(毎日)
「東芝は第三者委に対し、これまでに不適切な処理が明らかになったインフラ関連工事に加え、テレビ、半導体、パソコンの主要事業でも不適切処理がなかったかの調査を依頼。半導体では生産を終了した製品で適切な損失計上をせず、パソコンでは部品取引に絡む利益の計上時期が不適切だった可能性などが明らかになったため、利益かさ上げ額が拡大したとみられる。」
東芝の不適切会計1500億円超も パソコンなどで拡大(日経)(記事冒頭のみ)
「すでに明らかになっているインフラ関連など548億円に加え、パソコンの部品取引にかかわる不適切案件などが拡大したもようだ。テレビと半導体でも不適切な処理が見つかった。上場企業の不適切会計の金額では最大級に近づく。」
2つの数字がリークされるということは、今の段階になっても、訂正金額がまだ固まらない、社内で、あるいは第三者委員会や当局との間で、最終的な訂正内容に争いがあるということでしょうか。
それにしても、最初は工事関係の約500億円が公表され、その後、それよりずっと小さな合計数十億円規模の訂正が追加され、それで収束に向かうような印象を受けていましたが、逆に大きく拡大してしまいました。第三者委員会調査分だからということなのでしょうが、ちょっとだまされたような感じです。
具体的な不正の内容については、あまり詳しくは報じられていませんが、日経などによると、部品の有償支給と思われる取引の会計処理、在庫評価減、販促費・広告宣伝費先送りなどのようです。
そのうち有償支給(と思われる取引)については・・・
「東芝は安く仕入れた部品を組み立て、製造の委託先にいったん売り、パソコンの完成品を買い戻したうえで一般顧客らに販売している。下請けに部品を売った時に生じた利益を適切に処理しなかった疑いがある。」(日経より)
外注先から製品を引き取るときには、有償支給部品代(支給した時に発生した利益(もしあれば)が含まれる)込みで値段をつけるので、製品を販売した時点で、支給時の利益を含んだ原価が、売上原価となります。つまり、支給時に利益を出しても、製品販売時にその分は原価増となり利益にはマイナスとなります。これでは、利益の先行計上になってしまうので、厳密には、支給時に利益を消すような処理が必要なのでしょう。しかし、部品の販売(支給)と製品の仕入は、実態として、ひも付き関係にはないと判断できるような状況であれば、部品販売時に利益を計上しても問題ないということになります。
このあたりも含めて、第三者委員会の報告書ではっきりするのでしょう。
(補足)
産経と読売も1500億円説です。
東芝不適切会計問題 利益過大計上、1500億円規模 テレビなど3事業も(産経)
「テレビ事業では、請求が遅れた販促費を経費に計上せずに先送りした問題などが浮上。半導体では在庫評価で、コストが増えたのに期初の見積もりを据え置いたりして、利益の過大計上につながった可能性が指摘されている。パソコンでは、製造を委託している海外の会社に部品を販売して得た利益を適切に計上していなかったようだ。それぞれ数百億円の営業利益の過大計上があった公算が大きい。」
東芝過大計上1500億円超…PC・TV事業も(読売)
「パソコンについては、製造委託先に部品を販売する際、その利益を実態よりも多く計上した疑いがある。テレビは、広告宣伝費などの費用の計上を先送りしていたとみられる。半導体については、価格下落などに伴う在庫の評価損を適切に計上しなかった可能性がある。」
広告宣伝費は、単純に広告会社や新聞社・放送局から請求が来たものを費用計上するというのではなく、経過勘定を使って、広告掲載・放送のタイミングと対応するように費用計上することもあるようです。そうだとすれば評価減と同様に決算整理事項です。現場が勝手にやったというよりは、経理部門もある程度知っていたのかもしれません。
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