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過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信の訂正に関するお知らせ(収益認識関連の訂正)(広済堂ホールディングス)

過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信の訂正に関するお知らせ(PDFファイル)

広済堂ホールディングス(東証プライム)のプレスリリース(2024年10月4日)。

2024 年 3 月期の有価証券報告書の訂正報告書を提出したとのことです(決算短信も訂正)。監査法人に対して嘘の説明を行っていたようです。

訂正の原因は、子会社である東京博善における、「同社の葬祭収益セグメント(火葬事業以外の事業)が立ち上げた会員制団体に関し複数の取引先より入会審査手数料を収受した取引」(一時点の収益として売上高6億4百万円を計上)です。(この後の記述によれば、期末日直前に計上したようです。)

この取引に関しては監査法人に対して当時の社長から事前に説明があったそうです。

「本取引については、2024年3月期における会計監査人である興亜監査法人に対して、2024年3月19日に当社前代表取締役社長(当時の代表取締役社長。以下、「当社前社長」という。)から、会員制団体に入会することで得られる便益について説明を行い、入会審査手数料の価値が、審査という単一の履行義務を充足することで十分に裏付けられることを説明した上で、取引先の合意があり、かつ、取引の実態や期末までの入金又は期末日後数日以内に確実に入金が見込まれること等を理由として、期末日までに審査を実施することで売上高として一括計上をすることの合理性を説明いたしました。」

しかし、実際は、この入会審査料を払ってくれる相手先に対しては、相当有利な条件で役務提供することになっていました。

「東京博善は、本取引に係る契約(以下、「入会審査契約」という。)を2024年3月28日・29日に複数の取引先と締結しました。一方で、入会審査契約の取引先全てとの間で5年間にわたり通常に比して相当有利な条件で役務提供する旨の契約(以下、「役務提供契約」という。)を2024年3月28日に合意いたしました。」

この役務提供契約については、監査法人に知らせていませんでしたが、取引先の1社について、この契約がバレてしまったそうです。

「この時点で当社は、役務提供契約については入会審査手数料とは独立した契約であると認識していたため、当該契約の存在を興亜監査法人に対しては明示しておりませんでしたが、2024年3月期の決算監査の過程において、取引先のうち1社との役務提供契約の存在が興亜監査法人の知るところとなりました。興亜監査法人からは、入会審査契約と役務提供契約が『収益認識に関する会計基準』における契約の結合に該当し、本来は役務提供期間で収益を認識すべきであり、当該取引先1社から受領した入会審査手数料全額を一時点ではなく、5年間にわたり収益を認識する必要がある旨の指摘を受けました。さらに、他の入会審査手数料を受領した取引先と類似の役務提供契約を締結していた場合は、契約の結合が必要であり、入会審査手数料として計上した売上高は全て取り消す修正が必要であるとの指摘(以下、「本件指摘」という。)を受けました。」

監査法人のこのもっともな指摘に対して、会社は、この1社以外には、そういう役務提供契約を結んだ先はなく、結ぶ予定もないと説明し、修正せずに2024年3月期決算を乗り切ったそうです。

「これらの指摘に対して当社は、2024年5月14日に興亜監査法人に対して、東京博善が役務提供契約を同時に締結した取引先は1社のみであり、他に類似の役務提供契約(以下、「本契約」という。)を締結した取引先はない旨を説明し、また、その後、今後提供する予定もない旨を経営者確認書で表明した上で、当該取引先1社に係る売上高を修正せず未修正事項といたしました。当社は未修正事項が連結財務諸表全体へ与える影響に鑑み、連結財務諸表の数値を修正せず、2024年6月27日に興亜監査法人より金融商品取引法に基づく有価証券報告書に対する監査意見(無限定適正意見)を受領した上で、有価証券報告書を関東財務局に提出いたしました。」

興亜監査法人は、2024年3月期をもって退任し、後任に監査法人アヴァンティアが選任されます。経営者も交代し、会社側から、アヴァンティアに対し、指摘されていた以外の取引先との契約の存在を明らかにしたそうです。

「前川代表取締役社長による新経営体制の下で、2024年3月期における重要な取引について正確な理解をするべく取引内容の検討を行う過程において、本件指摘を受けていた他の取引先(興亜監査法人に対しては存在がないと説明していた取引先)についても2024年5月31日付で本契約に係る契約書が締結されていたことが明らかになり、監査法人アヴァンティアにこれを開示しました。

本契約に係る契約書は、2024年3月29日時点で存在していましたが、契約日付は役務提供の開始日が2024年6月1日であったため先日付である2024年5月31日とし、2024年6月1日から東京博善より役務提供を行っていました。本契約の存在は、監査法人アヴァンティアより2024年3月期における「事後判明事実」(監査報告書日後に監査人が知るところとなったが、もし監査報告書日現在に気づいていたとしたら、監査報告書を修正する原因となった可能性のある事実)に該当するとの指摘を受け、当社と監査法人アヴァンティア及び前任監査人である興亜監査法人とも協議を行った結果、2024年9月5日、2024年3月期の有価証券報告書に係る訂正報告書を提出する必要があるとの結論に至りました。」

社内調査委員会の報告によれば、興亜監査法人から指摘があった時点で、当時の社長は、役務提供契約については締結しないよう指示していたのだそうです。

「当社は社内調査委員会より2024年8月27日に調査報告書を受領し、当社前社長が興亜監査法人より契約の結合が必要であるとの指摘を受けた時点で、契約日付が到来していない役務提供契約については締結しないように指示しており、社内調査委員会から照会されるまで本契約の存在は認識しておらず意図的に本契約の存在を隠した事実は認定されなかったとの報告を受けました。」

しかし、これは契約日付をずらして、隠ぺいしていただけのようにも見えます(取引先からすれば、有利な条件が得られるから入会審査手数料を払ったはずなので)。

意図的に隠していたかどうかはともかく、以下のような影響額となっています。こんな無理な売上計上をしなくても、十分儲かっているようですが...

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