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アジア・メディアの上場廃止を決定 東証

アジア・メディアの上場廃止を決定 東証 - MSN産経ニュース

マザーズ上場の番組情報配信会社、アジア・メディアが来月20日付で上場廃止になるという記事。

「今年6月、ア社の前最高経営責任者(CEO)が連結子会社の定期預金口座約16億円に担保権を設定し、私的に流用していた問題が発覚。ア社は19年12月期の有価証券報告書の訂正を提出したが、監査法人の意見を得られなかった。東証の自主規制法人が「監査法人の意見不表明で、投資判断の基礎となる重要情報が適性に開示されていない」と判断、上場廃止を決めた。」

私的流用という事実を反映した決算に修正されたのであれば、監査人は監査意見を出すべきだという考え方もあるかもしれません。

例えば、キャッツ事件を取り扱った「公認会計士VS特捜検察」(細野祐二著)では事件の総括の部分でこのように書いています。

「経営上の不正取引と不正会計は次元が違う。本件(注:キャッツ事件)取引の経営判断は、評価の分かれるところであるが、実際に起きた取引をそのまま認識・測定・報告している以上虚偽報告には該当しないのであり、また、正当な取引でもあえて異なるものとして表示すれば虚偽表示となる。・・・財務諸表が利用者の判断を誤らせることのないよう作成されていれば、被告人(注:監査人である細野氏)の使命は果たされている。」(393ページ)

虚偽表示事件の被告としての著者の立場からすれば、正しい議論でしょう。たしかに本を読む限りでは、仕手筋に対する対抗買いのための社長への仮払など不正な取引が決算前に行われていたにせよ、問題となった決算自体は粉飾ではなかったようです。しかし、監査人の立場からすると、アジア・メディアやキャッツのような、平気で不正な取引をおこなうトップがいる(つい最近までいた)会社について、十分な証拠が得られるだけの手続を、強制捜査権を持たず、投入できる人員も限られている会計監査人が実施できるはずもありません(虚偽表示のリスクがあまりに高すぎるため)。意見不表明とするか、監査人を辞任するしか方法はないでしょう。

公認会計士vs特捜検察公認会計士vs特捜検察
細野 祐二

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