隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

「知らない世代」が引き継ぐもの~ヒロシマとナガサキ

2007年08月07日 08時03分04秒 | プチエッセイ
■私たちは「唯一の被爆国」に生まれたんだ

 もうどのくらい前になるのだろう。
 学生だった私が長崎を訪れた春。
 目的は旅先で知り合った人に再会するための、ちょっと甘酸っぱい旅行だった。その願いを叶えたけれど、少し違和感のある再会の後味があまりよくなくて。
 南九州から、あちこちをブラブラ見ながら、ゆっくり北上。そして長崎にたどりついた。
 お金も底をつき始め、旅もそろそろ終わりかな、と思って、そして訪れたのが長崎原爆記念館。
 展示されたもののひとつひとつを克明に覚えていうわけではないけれど、あのとき背中に感じた冷たい衝撃、何かを見て、足が動かないと感じた初めての感覚、知らないうちに頬を濡らしていた涙、悲しいとか怖いとか悔しいとか、そういう今まで経験した涙とは異なる、言葉でうまく言えない涙。
 原爆の体験者の平均年齢は74歳だという。あの悲惨な事実を言葉で伝えられる人がだんだん少なくなっていく。
 核再武装とか、核抑止論とか、訳のわからない議論がまことしやかに語られている今だからこそ、「核は×」という大前提のもとにすべての議論を始めなくてはいけないことを、唯一の被爆国であるこの国は示さなくてはならないだろう。
 「唯一の被爆国」って、大変なことだよなと思う。それは、ものすごく大きなものを背負っているという意味につながるだろう。
 広島や長崎の原爆投下後の様子を示す資料や写真は、海外にも送られて、展示されたりする機会はあるのだろうか。あれを見て、何も感じない人間はいないと思う。たとえ、高校の歴史の教科書に「わが国の兵の命を救うため、戦争を早く終結させるため、真珠湾攻撃への報復のため、原爆投下は唯一の方法だった」と明記してあるアメリカの人々であっても…。
 日系三世の監督による「ヒロシマナガサキ」が、アメリカのケーブルテレビで放映されるという。「実際を知らなかった」彼らの目に、映像はどんなふうに映るのだろう。
 そして、私を含めた多くの日本人も、実は何も知らなかったのかもしれない、という悔いが今はとても重い。
 大好きな夏、心躍る夏…。その八月には、実は重くて耐えがたい歴史の事実が横たわっていて、それは「知らない世代」がそれぞれ少しずつ引き継いでいかなくてはならないものなんだろうなあ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« なだらかな坂道 | トップ | スピッツの初デート秘話??... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。