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職場から自宅までの車での所要時間は30分余、空の雲はこの時間内にでもかなり大きく変動する。仕事が正午に終わることもあって、積乱雲などはこの時間帯は特に成長が著しいと見ている。肉眼で仰ぎ見たとき雲間に小さな四角の穴が空き、ぽっかりと真っ青な空が覗いていた。シャッターチャンスとばかり撮った写真なのに上手くいかなかった。
入道雲のことをこの地方では比古太郎と呼んでいる。トラ柄のぶかぶかのパンツをはいて、でんでん太鼓を背負った比古太郎オヤジが四角の青い窓から覗き見しているかもしれない。
千切れ雲、浮き雲、筋雲のような雲を追うのも好きだが、澄み切った夏の青空にもくもくと立ち上がる入道雲を見上げるのも好きだ。太陽の日に当たる雲は限りなく真白で、陰となる雲の底は黒々として豪雨を引き連れ猛々しい。
四角の青い覗き窓から、比古太郎オヤジのいたずらっ子たちが、トラのパンツをはかされて数珠つなぎになりながら何匹も何匹もくじゅうの峰に降り立っていたら、実に愉快に違いない。