家元制から抜け出して

 もう、10年も前のことでしょうか。絵本の会で、絵本の読み聞かせについて、今の方々はどのような教育を受けているのか、とくに初心者研修について知る必要があると思いました。すでに会にいる人間には受講できず、新規入会者があった時にその方とあまりにギャップがあったら困ると思ったからです。

 某図書館で、その講師とばったり会ったので、「初心者向け講座のレジュメをいただけないか」などとたずねたところ、「差別だと言われるので、ほとんど書かないのだ」などと言われました。「?はあ」と答えて、その時はそれだけで別れましたが、心の中に大きな疑問が残ったのです。
 「差別だ」と言われるから「書かない」。これについて考えられるのは
A:自分が「差別」だと知っているから「書かず」に口頭で教える、
B:自分は「差別ではない」と思っているが、反対意見を言われないように隠しておく。

どちらかでしょう。
私が疑問なのは
Aの場合、「差別だから修正する・転換する」方向にどうして行かないのだろう、ということです。Bの場合、差別でないと思っていたら、どうして堂々と記録(レポートにでも)して公開しないのだろう、ということです。
そして、簡単にサベツ、差別というけれど、差別の結果、子どもの感覚にどのような影響があるのか考えたり調査しないのだろうか、という疑問です。
こういった曖昧な意識のまま、図書館司書やボランティアに教育をしていくことに、後ろめたさは無かったのかと思いました。

また、こんなこともありました。
 2年ほど前、平日のうららかな日のことでした。これは別の市立図書館で。子どもコーナーが別にあってそこにも職員がいる館でのこと。絵本を探していると、その職員が誰かと話している声が聞こえてきました。断片で申し訳ないですが、内容は、「以前あった司書の研修会でのこと」「『ぼくがラーメン食べてるとき』の本について」「その研究会で、長谷川義史の絵が<二頭身>だと笑いあった」ということをおっしゃっていました。「ぷっ」という、その研修会で笑いあったことを思い出されたのでしょうか、噴出す声も聞こえてきました。一人が離れる気配がありました。
 私が、我慢しきれずに「さっき、長谷川義史について何かおっしゃっていませんでしたか?」と近づくと、私語をしたことを咎められたと思われたのでしょうか、すこし申し訳なさそうに、でも毅然として「司書の研修会のことです」と言われました。私はそのまま、そうですか、と引き下がりました。つまり、「司書の研修会(自主的かどうか分かりません)では、絵の表現をそういうふうに冷笑するんだな」ということがわかりました。そういう研修会か研究会かが、新潟市に存在しているということは間違いないのです。

 私語については、人間だから仕方がないと思います。上の講師と同じ、個人を批判しても意味がないと思っています。とても有意義な情報でした。もちろん、市立図書館を攻撃する目的で書いているわけではありません。そうであれば直接図書館に言えばいいこと。こんなことを書き連ねて自分にも大きなリスクがあることを承知しています。目的は、全国あちこちで、つまらない差別がまかりとおっていることを、書いておきたいのです。
 どうしてそうなったか、私はなんとかその原因を知りたくてたまりません。どうして司書や講師がそれを疑問に思わないのか、修正できないのか、その理由を知りたいと興味を持っているのです。
 危惧することは、そういう研修を受けた司書が、あるいはボランティアが、学校で、子どもの姿かたちについて「二頭身」などと値踏みするような感覚にならないだろうか、ということです。

 日本中の図書館が大きな家元制になっていると指摘する人もいます。上の人の言うことに逆らえないし、逆に心酔することで自分の心の平静を保つ人もいます。自分の良心に逆らえずに苦しむ人もいます。
 私のように批判する困った市民がいるから司書は心を病むのでしょうか。いいえ、時の権力に逆らえないとか、同じ感覚を強要される雰囲気があるから板ばさみになったのではないでしょうか。権力に知られると困るから情報を隠すのですし、「司書の研修会です」と揺るぎの無いよりどころを主張するのではないかと思います。「揺るぎの無いよりどころ」、それは、家元ではないでしょうか。
 私が明らかにすることで、大勢の人が気楽になるといいなあ、と、思っています。自分の言葉で語れるようになるといいなあ、とも。
 ああ、それから、ほんぽーとでは、ボランティアがやったおはなし会のプログラムの綴りは、今は誰にでも見せてくれるそうです。

 オリンパスの事件がニュースになっています。「誰のために働いているのか」と尋ねられ、上司のために、と答えたとか。目も眩むような金額ですが、こういう規模のことは、どこにでもあるのかもしれません。



 

 

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