神奈川絵美の「えみごのみ」

「繊維の宝石」と出合う

(前回の続き)

ウィーン工房展へ行ったときのコーデはコチラ

紅花紬にポインセチア帯。
微妙に中心がずれていますね・・・反省。


ところで、着物好きならたぶん誰もが、
着慣れてくるほどに
着物や帯にとどまらず、インナー(長襦袢など)やアウター(コートなど)にも
こだわりたくなるのではないだろうか。


というワケで、ウィーン工房展を後にした私が向かったのは・・・
コチラ!



・・・ん? 



中国の大平原へGO!  ・・・ではなく



カシミヤとともに82年。純国産のカシミヤ糸紡績の伝統を守る
東洋紡糸工業株式会社(以下、東洋紡糸)さんの展示会だ。


基本的に業者さん向けの発表会場なのだが、
縁あって見せていただけることに。
(先方より許可をいただき掲載しています)


カシミヤの原毛。
羊なら、一頭から2~3kgとれるところ、
カシミヤ山羊一頭からはたったの150gしかとれないそう。

というのも、羊はご存知の通りバリカンでバリバリ毛を刈るのだが
カシミヤ山羊は冬の間だけ生えるうぶ毛(ダブルコートの下の方の毛)が
春先に抜けるのを櫛のようなもので梳いて集めるから。
当然、とれる量はずっと少なくなる。

しかも、原毛にはゴミなどの不純物も混ざっているから、
それを取り除いてきれいになったものは、たったの80gにしかならないそう。


東洋紡糸さんは、その貴重な原毛を中国から買って、
日本の自社工場で糸にしている(それをもって「純国産」といいます。
「日本の絹」表示と同じですね)。


「貴重といっても、Uニクロのカシミヤセーターなんて結構お手ごろ価格だけど・・・」
私の素朴な疑問に対し、今回応対くださった方は
原毛にもランクがあること、Uニクロのようなところでは製品化まで海外で行なっていること、
などを説明くださった。


カシミヤ原毛の高級なものは1kg12000円にもなるそう。
綿やウール、アルパカは1kg2000~3000円というから、ケタが違うのだ。
そんな高価な原毛を、染色し紡績して・・・となると、
糸代は1kg22000~25000円にもなる。
まさに「繊維の宝石」だ。
女性用のセーター1着でだいたい200g使われるそうだから、
糸代だけで5000円くらい。
それに加工費、人件費、流通コスト等が上乗せされれば、
リテール価格が40000~50000円するのは無理もないところ。



これは、糸の色出し。
上のピンクを出すのに、この会社では原毛を5色に染めたものをブレンドしているそう。
一般的には3色程度だそうで、
「うちは、色には相当なこだわりを持っているんです」(先方談)



写りが良くないが、
これらは薄い中綿の入ったジャケット。
手触りの良さや軽さをお伝えできないのが残念・・・。
縫い目がないもの、2枚の布を表と裏で貼り合わせたもの、
編み方もニット、カットソーなどいろいろ。
4~5年前から糸の製造だけでなく、こうして製品化まで手がけるようになり、
TVの通販チャンネルでは、
マフラーやストールが番組放送内に売り切れるほどの人気だそう。


このストールはカシミヤと麻が50%ずつで、
夏は涼しく、冬は暖かい、通年使用できる素材とのこと。
確かに、しゃり感とふわふわ感が同居している不思議な感覚。
麻混でもシワになりにくい。


ちなみに東洋紡糸さん、
カシミヤの中でも最高級と言われる
「ベビーカシミヤ」の世界での生産量の約半分を買い取っているそう。
(残り約半分は、知る人ぞ知るロロピアーナ社)


今のところ、和装の製品化までは手がけていないそうだが
(ショールは洋装用を兼用できるけど)
こんなに良い素材、和装に活かされないのは勿体無い!


・・・みなさんも、そう思いませんか?


私だったら、道中着はなかなか手が出なくても、
肘まであるロング手袋や、着物に合うショールとかあったら、欲しいなあ・・・・・・。


呉服業界、まだまだクロスオーバー、コラボレーションの工夫は
できると思うのです。
私なんかが言うのは、おこがましいけれどね。



※東洋紡糸さんのHPはコチラ。まさに「カシミヤ大百科事典」!

コメント一覧

神奈川絵美
タフィーさんへ
こんにちは
おおー、ロロピアーナいいですねぇ。
首元が暖かいと、幸せですよね

そうそう、和装用なら前で留められるようになっていると便利ですよね。
大きなピンでもいいのですが、あとひと工夫、着物を傷める心配のない仕掛けがあるといいな。
タフィー
カシミヤ♡
こんにちは。

東洋紡の展示会に行けるなんて、うらやましいです!!
今年は着物用のショールを…と、いろいろ探して、
結局はLoroピアーナのショールにしました。

ただ、洋装&和装にも使えそうな…という選び方をしたので、ちょっと中途半端な色を選んでしまったかもしれません。
でも、肌触りと暖かさは幸せな感じです。
ビキューナもいつかはみてみたいです~。

和装のショールのような、マントのような、ショールに
なにか留めるもののついているショール、があれば
いいなぁと毎年思います。
ロング手袋もいいですねぇ。

山羊さん、ありがとう!お世話になってます。
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