神奈川絵美の「えみごのみ」

ケルントナー通り 41番地

だって・・・・・・。



こんなのとか



こんなブローチとか



こんな布とか




美しいと思いませんか?




タイトルの「ケルントナー通り」は
音楽好きな人ならすぐピンとくるかも。
そう、国立オペラ座のすぐ近くに伸びる
ウィーンの目抜き通りだ。



新橋にあるパナソニック電工 汐留ミュージアムにて
20日まで開催中の「ウィーン工房 1903-1932」。
実は日本の「民藝運動」ともつながっている。
ともに19世紀末のイギリス、スコットランドで興った
「アーツ・アンド・クラフツ運動」の影響を受けているからだ。

   芸術性と実用性の融合。
       小さな日用品も、絵画や彫刻と同等の“美術”であるという考え方。
          生活のあらゆるものに造形美を・・・。


これらウィーン分離派~ウィーン工房の設立動機は、
夏に展示を観たハマショーこと濱田庄司や柳宗悦が説いていたことと同じ。


堅苦しい話はこのくらいにして、
普段使いのものたちが、こんなに可愛らしくまた、
確かな技術で実用性にも優れていたら、
なんて生活は楽しく豊かになるだろう・・・・・・!
私は素直に、そう思う。


1903年、ウィーンの小さな裏通りに面した
アパートの3部屋から始まったウィーン工房は、
破格の待遇で職人を雇い、また若手の育成にも力を入れ
1916年には直営の「モード専門店」も開店。
その住所が、タイトルにしたケルントナー通り 41番地だ。
施設やお金持ちの邸宅といった大口の仕事だけでなく、
若い感性を生かした絵葉書などの小売を通して、
一般市民にも身近な存在となっていく。



テキスタイルも・・・・・・。


しかし1920年代のインフレと
それ以降のナチス支配により、
おもにユダヤ系の富豪の出資で支えられていた工房の経営は
急激に状態悪化。
1932年に閉鎖を余儀なくされた・・・という結末に。


ただ、破産してもウィーン工房のスピリットは死なず。
というのも、その数年前に日本人の建築家と結婚した
フェリーチェ・リックスというアーチストが、以降京都へ永住し、
ウィーン工房の技術とデザイン性を七宝焼の作品(デザイン画含む)として
数多く遺したから。


フェリーチェ・上野・リックスの作品(デザイン画をもとに再製作されたもの)


こうして、今だって飛行機で10時間以上かかるオーストリアと日本で
同じような芸術性とそこに宿る精神性を共有することができた、というわけ。


さて、ここに挙げた作品は、最後のフェリーチェさん以外、
全部同じアーチストによるもの。



ダゴベルト・ペッヒェ。

・・・10回続けて、どうぞ とふざけたくなるほど
舌噛みそうな名前だ・・・・・・。

ウィーン工房の設立後1915年ごろに、
彗星のごとく現れた伝説的デザイナーだそう。
今回の展示を観ていて、「これ、素敵!」と思ったものは、
みんな彼の作品だった。


会期はあと10日間ほどしかありませんが、
近代アート、工芸にご興味のある人には、強く、強くお薦めいたします!
私はメイン展示室にしばらく住みたいと思うほど、魅せられました。
壁にも、カーペットにも、家具にも、生活雑貨にも。


※展示の見所はコチラ(パナソニック電工のプレスリリースより)
※汐留ミュージアムのHPはコチラ

コメント一覧

神奈川絵美
marchaさんへ
こんにちは
おお、上京されるのですね。
このミュージアムはあまり広くないので、
ご予定にプラスしても負担は少なくてすむかなと・・・。ぜひぜひ、オススメです
道中、お気をつけて
marcha
おっ、絵美さん、情報をありがとうございます。
こちらを早く出るようにして、ぜひ見に行きたいです。
忘年会で 来週金曜日上京するので‥。
うわ、早出です‥。。
神奈川絵美
りらさんへ
こんにちは
これでも、カタログではその魅力が半分も伝わらないなあって思っているんです。
最初の蓋付き物入れなんて、しばらく見とれるほど可愛らしくて。

ウィーン世紀末~分離派、そしてこのウィーン工房は、
アール・ヌーボーのアンチテーゼで生まれたそうです。
私、クリムトやエゴン・シーレなどの絵画の分野では、分離派は以前から好きだったのですが、
工芸の流れはよく知らなかったので、今回とても勉強になりましたし、心揺さぶられるほど好きだなあと思いました。

こうして見ると、近代日本って芸術もそうだし、建築もファッションも料理すらも、いろんな文化の「いいとこどり」をしているような気がしてきました。
りら
豊かな生活
どれもこれも素敵ですねぇ・・・・
そう言えば、チェコやウィーンに行った時に売られている食器や日用品が洒落ているのにワクワクしたのでした。
今でもチェコのガラス器、ウィーンのフォンデュセットなど忘れられないものが幾つかあるほどです。

それが日本に繋がってきていたというのが、とても興味深いです。
日本人の美意識は世界有数の物だと思います。

値段では無く純粋に美しい物を見分けて使える、そういう生活がしたいものです。
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