
「檸檬の上布」(能登上布の白生地を染めたもの)に、
澤田麻衣子さんの「アクアリウム帯」。
帯締めは、今回は蛍光がかった黄緑が爽やかでいいかな、と選んだが、
コーラルピンクも青も、強めのフューシャピンクもよく合って、
かなりの時間、迷ってしまった。

帯揚げは、今夏もとじさんでいただいたスワロ付きのキラキラ。

この日は文字に偽りなしの猛暑日だったが、
佐藤先生も着物で「こんにちは!」
細い矢絣の夏紬に、お船の染め帯。銀通し(たぶん)の生地で、
キラキラが波間に映る光に見えた。

そごう美術館には、今までにも何度か訪れているはずなのだが、
とても広く、またそれに見合う充実の展示数で、とても見ごたえがあった。
1920年代にして、この八頭身美人。
特に脚が長くて、どう考えてもアンリアルだけど、
愛しさを感じずにいられないし、十分に憧れの対象になる。
「私の母の時代に流行ったの」と佐藤先生。
「私も夢中になって、本や雑誌を集めていたものよ」
当然のことなのか、どうなのか
夢を与える仕事というのは、やはりどこか「突き抜けている」というか、
「ありえないものを見せる」ことに存在意義があるのだろう・・・そんなことを思った。
「人魚姫の挿絵もね、(姫の)半身が、ただのうろこではなくて
貝や花の着物の柄みたいになっているの」
それがモダンでね、日本的でもあって、と佐藤先生。
彼は1950年代に数多くの童話の挿絵を描いており、
私も、「おやゆび姫」とか「アラビアンナイトシリーズ」は、何となくその表紙に
見覚えがあるような気が・・・。
それは蕗谷スタイルを踏襲した別の画家さんの作品だったかも知れないけれど、
そうやって子どもたちの記憶に、夢を残していくのもすごいこと。
今の時代はどうなのだろう。
漫画やイラスト、あるいは音楽その他のエンターテイメントで
「ありえないものを見せる」しかも美しく、記憶に残るように、という
その“伸びしろ”は、年々少なくなってきているのではないだろうか。
CGなどの映像技術は素晴らしいけれど、
どうも・・・使い捨てというのは言い過ぎだけれど、
どんどん消費され、すぐ「古いもの」扱いされてしまうような気がする。

7月下旬からは、こうした企画展も。
この時代の「女性美」に、はっと目を奪われたなら、
それも今や、「ありえないもの」なのだろうか。