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(誰にも気づかれないよう、思い始めたのに)???
百人一首にもなっている、壬生忠見の下の句だ。
ワタシの「エンジョイ小筆」もそろそろ10か月になるだろうか。
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そんなワケで、この展示
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「書を芸術にした男」ってクールじゃない? と
着物友をお誘いしてGO!
ご一緒したのは……
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イラストレーターの岡田知子さん。
彼女は昔の日本の書を“読みたくて”字を習っていたそう。
もともとこの展示が予定されていることを
年末に教えてくださったのも彼女だった。
久留米の小絣は、民芸調になりすぎず、
東京の空気にも良く合う。
帯が同系色で、なおさらスキッと。
江戸更紗の、もとは布団皮だったそう。
帯留めは写真では光ってしまったけれど、自作の木彫りの梅。
着慣れた人の粋なスタイル、いいなあ
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私は……
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琉球絣に椿帯。
何となく、「書」-それも漢字-を観に行くなら
はんなり系よりこっちかな、と思って。
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こうした有名な人の書を観るのは、実は初めて。
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絵画なら今までたくさん観てきたけれど、
今回は、はて、鑑賞のポイントがわからない。
困って事前にネットで調べたら、
どなたかのブログに、とても印象的な一文があった。
王羲之の凄いところは、
「書の表現の中に人間の喜怒哀楽の感情を持ち込んだ最初の人」ということ
(原文ママではありません)
上手い人なら、他に何人もいる。でもいくらその人たちが上手かろうと、
喜怒哀楽を表現したという点では、王羲之の後続に過ぎない…ということだそうだ。
実際、展示の中には
-妹に麻黄湯を飲ませていますが、(病状が)良くなりません。
どうしようか考えあぐねています-
とか
-私も日々調子が悪く、弱っています。●●(子どもの一人?)は家を出たきり
戻ってきません。どうしたのでしょう。手紙をやらなくては-
といった、近しい人への書簡も多く、
聡明な人だったというが、人間味もありシンパシーを憶えた。
(展示はもちろん、漢文です。そして上は私の記憶の範囲で書いていますので、
間違いの可能性もあります。だいたいのイメージということでご理解いただければ)
そして
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有名な蘭亭図巻。西暦1592年に憲王という人が
王羲之の筆跡などを基に作成した図。
(なお、王羲之の直筆は残っておらず、今回の展示もすべて拓本、摸本と呼ばれる写し)
西暦353年3月3日、41人の名士を集め、蘭亭という景勝地で
宴を行ったときのことをあらわした図だ。
子どもが川に杯を流し、それが自分のところに流れ着くまでに詩をつくる、
というもので、できなかったら大きな杯に三杯も酒を飲むという罰ゲーム付き。
王羲之はさすが主催者、詩を2首もつくったそう。
ちょっと乱暴な言い方だが、
王羲之は、政治からスピンアウトして
自然を愛する文人生活をエンジョイした最初の人でもあったそうだ。
とりわけこの蘭亭での宴を気に入り、みなの詩の前に「序文」を書いた。
これが王羲之の最高傑作「蘭亭序」であり、一大ブームに。
こぞって写しが創られた(800種類とも)そう。
(音楽で言えばカバーとかボーカロイドかしら
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正直なところ、本展示を通して、字形の詳しいことや
何をもって美しいとするかは、私にはよくわからなかったが
岡田さんが、王羲之の字の特徴などを教えてくださったので
一人で観に行くよりずっと実のある鑑賞になった。
紀元後3~8世紀の間に、漢字は少しずつ姿を変えて(篆書、隷書…)
楷書に至ったそうだが、
考えてみればそのころの漢字が、今でもほとんど読める、というのは
驚きに値する。
気軽なエンジョイ小筆では、王羲之に嘆かれるだろうが、
その「楽しむスピリット」だけは、
いつか自分の字にあらわれるようになったらいいな、と思った。