高校時代に私が「青空」に対して抱いた感情と
マグリットが描く「青空」が醸し出す雰囲気は
とても似ていると、
今になって思う。
不穏なのだ。
私はこのころしばしば、
自分が「ゆで卵」になって、
ベランダから青空へ「落ちてゆく」イメージを
好んで(!)抱いていた。
それはもしかしたら、無意識のうちに
そのころよく見ていたマグリットの絵から
何等かの影響を受けていたからなのかも知れない。
ルネ・マグリット
28歳のポートレート…年齢の割に、渋すぎるような
私はこちらの写真が好き。
妻ジョルジェットと結婚した、24歳のころ。
たいへんな愛妻家だったらしい。
さて、マグリットといえば
シュルレアリストの大家のように言われていて
美術の教科書などで見る代表作も、
上に挙げた、空や雲や鳥のモチーフが多い。
でも、画家になりたてのころは、
未来派やキュビズムの影響を受けていたそうで、
今回の回顧展では、普段あまり目に触れない
初期の作品が、私にとっては興味深かった。
こちらなんか、未来派&キュビズムですよね~。
1920-22年の作品。
さらに、メジャーになる前は
商業作品も手掛けていて
こうしたポスターやカタログ類の展示は
とても貴重。
そして、1925年以降、しばらくは
ジョルジョ・デ・キリコの影響を受け
デペイズマン(脈絡のないものを配置し、観る人に違和感を与える手法)の
作品が続く。
ピカソも、カンディンスキーもそうだったけれど、
みな始めから「自分のスタイル」が
できているわけではない、と
改めて思う。
そんな時代を経て、ようやく「マグリットらしいなあ」と
思える作品が出てきた。
「透視」1936年の作品。
どうもある晩、マグリットが目覚めてふと鳥かごを
見たとき、
鳥ではなく卵が入っている・・・! と見間違いをしたらしい。
で、
それが大した違和感もなく、受け入れられたことに
衝撃を憶えたらしい…です。
デペイズマンと逆の、意外な親和性、と言うか。
マグリットはたいへんな読書家でもあり、
シュルレアリズムでありながら、自分の作品には
すべて、哲学的な意味というか理屈を持たせている…
というような解説も見たけれど、
私自身は絵画を観るとき、感覚的でありたいと思うので、
あまり絵の解説には、興味を持てなかった。
でも、
青空が「不穏」であることについて、
マグリットと私の感覚は近似している。
こういった作品も、どことなく不穏な感じが。
マグリットは非常に穏健で聡明、知的な人物であったと
伝えられていますが、
爽やかな色彩やクリアなタッチの作風の裏に
既成概念を壊さんとする攻撃性や批判的な目が
見え隠れしてならない。
それがこの画家の、魅力なのかも知れません。
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