先日、天皇誕生日にあたり、陛下のお言葉が胸を打ったが、その前に流れたNHKの歴史秘話ヒストリアという番組でも陛下のテーマを取り上げていた。この番組、歴史マニアとしては時々注目して見てしまう。
いろいろな時代のテーマを新しい角度で切り取るというもので、井上あさひさんの仕切りも新鮮である。
井上あさひさんについては、以前ニュース番組から不自然な降板を強いられたが、最近復権しつつあるようで、大越さんとともに・・・あっ、ここではやめておこう。
そんな中、12月12日に放送された「天皇の先生になった男 小泉信三」はまさにリアルタイムでの今上陛下をテーマにしており、なかなかいいものだった。
小泉信三といえば、慶應義塾の歴代塾長の中でももっとも有名な一人である。慶應義塾に学んだ人ならこの名を知らない人はいないはずだ。
その小泉信三が陛下(当時は殿下か)のご進講役として、陛下に象徴としての天皇のあり方をお伝えした物語である。
こちらに井上あさひさんの公式ブログの記事がある。ここから一部引用させていただくと、「終戦直後の苦難の時代、新しい皇室のあり方を模索し続けた小泉と陛下の信頼関係の深さに、私もじんわり心が温まる思いがしました」とある。
小生もまさしく同じ感覚を持った、いや心が温まっただけではない。小生がガキの頃は明治生まれの祖父母と同居しており、いまだ戦前の価値観が世にはびこっていた。
それよりもっと前に、平成も終わらんとするこの時代を見通していらしたとは。まずそのことの先見性に驚いた。
しかし、それは決して新しいものではなく、元となったのは、“万年の春”という福沢諭吉先生の言葉だったというのもすごいことだ。
話を進めよう。ここで福沢先生のすばらしさを議論するのはそぐわないのだから。この番組で一番印象に残った言葉に「忠恕(ちゅうじょ)」というのがあった。
忠恕とは「自分の良心に忠実で、他人のことを思いやる精神」のことであり、この言葉を今上陛下はまさに実践されていると感じた。
どこかの大統領のいう「アメリカファースト」を代表として、自国第一主義が台頭している中、それとは真逆の精神とも言えそうだ。
いやもっといえば、現政府のあり方に対して陛下なりに心を痛めておられたのでは、とさえ思ってしまう。先日の陛下のお誕生日のお言葉を聞くにつけ、やはそうなんだと確信した。
その陛下に対して「天皇の反日をやめさせないと」と騒ぐネトウヨにこそ、この言葉をぶつけたい。
陛下が、西日本豪雨や北海道での地震などの被災者の方に寄り添うお姿を見るにつけ、まさしく忠恕だよ、忠恕って。
平成という時代も後半年足らず。新しい時代にも、いやこんな時代だからこそ忠恕を全国民に浸透させていけるといいのだが・・・
平成最後の年の瀬に、めずらしくも真面目に・・・
「心に寄り添う」という言葉は、誰でも軽々しく言ってはいけないものと強く感じた瞬間でした。
どこかの首相が沖縄の基地の問題などで「沖縄の皆さんに寄り添って」などと軽々に言っているのとなんと違うことかと。真に沖縄の気持ちに寄り添うとはと、我々にもお問い掛けになられているかと。少なくとも一番それを感じてほしい人には届いていない様子なのが悲しいです。