湯の花温泉「末広」に向かう途中、道の表示に「前沢曲家集落」というものが見えた。お宿に行く最後の曲がり角で違う方向になってしまうが、お宿から近そうだ。
調べてみると大内宿と同じようにかやぶきの集落が保存されている地区の様子。ということで、チェックアウト後に立ち寄ることにした。
場所はお宿からすぐだった。地区の入り口に車を停めると、施設保存料として300円也を支払い、ここから歩いていく。
大内宿は、それぞれの家がお店などをやっていて、買い物や食事などをしながら楽しめるが、こちらはお店などは皆無で、リアルにお住まいの方たちの集落である。
一軒だけ、資料館となっているところがあり、そこでスタッフから説明をお聞きできることになっている。
行ってみると先客なしで、待ってましたとばかりに話し始める男性が・・・(苦笑)リアルな曲がり家で、部屋ごとに説明がある。
曲がり家は全国にあるが、馬と人間が共存するための工夫である。囲炉裏を切ったダイニングから馬の様子が見えるようになっている。
こちらの館は二階もかなり広く、当時の暮らしやお布団を敷いている様子が想像できた。こうしたところでは、主人でなく使用人の暮らしを想像するのが好きだったりする小生である。
さて、ここから集落をそぞろ歩く、今でも現役の水車やそれを活用した杵つきの小屋、さらには巨木が倒れたところに建てられた小さなお社(上左写真)など。いろんなところが興味深い。
なんとも心がゆったりとしてくるのを感じる。この日は周辺の山々の紅葉が素晴らしく、かやぶきの屋根とのコントラストも抜群だった。
今ではかやぶきの屋根の保全は大変のようだが、こうした何もない集落こそ、ぜひいつまでも・・・と願いたい。
集落の道をポコポコ歩いていたら、シルバーカーを押して歩いてきたおばあちゃんが、路地から出てきた。道の段差に引っ掛かって苦戦していたので、お手伝いしようと思ったら・・・手慣れた様子で車を蹴飛ばし、段差を乗り越えてきた。
その佇まいがすごく自然で、空気が静かに流れているのがわかる。
きっとこのおばあちゃん、毎日こうして過ごしていらっしゃるだろうなあと想像できるし、こういうのを見ていると、果たしてバリアフリーは本当に正しいのかと思ってしまう。
もちろんバリアフリーを否定するつもりはないが、こうして多少のバリアのあることで、人間は元気になれるのかも・・・と。
言われてみれば、さきほどの資料館も、小さなものから大きなものまで段差だらけで、こうしたことが当たり前な中で暮らすことが、実は健康長寿にもいいのかも・・・なんて。
いやいや、この素晴らしい空気感や時間の流れこそが、健康にいいのだろうとも。湯の花温泉に行かなければ、このような素晴らしい地区を知らなかったわけで、改めて秘湯のお宿とのご縁に感謝したいものだ。
そんな中で笑ってしまったのは、資料館の中にはWi-Fiが飛んでいたこと。写真を撮っていたら、スタッフの方から「こんなところに場違いでしたかね」と(苦笑)。そのせいかどうか、資料館のスタッフの方に全国の歴史的建造物保存地区一覧の冊子を特別にいただいた。
先日行った奈良井も記載されていたが、今後秘湯めぐりをする際は必携になるのかな・・・と。
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