◆夏の夕方、頭の真上あたりでひときわ明るい星が見つかります。こと座の一等星ベガ、中国では織女、西洋では真夏の女王、そして日本では織姫星として知られています。ベガは青白く輝く星で、私たちからの距離は25光年、大きさは太陽の約3倍、本当の明るさは太陽の約50倍、表面の温度は1万度近くあります。光度は普通の一等星よりも明るい0.0等で、星の明るさを決める基準の星になっています。織姫星と天の川をはさんで輝くのが彦星(牽牛)です。彦星はわし座のアルタイルのことで、この2つの一等星と白鳥座のデネブで夏の大三角ができあがります。
◆七夕は本来、旧暦の7月7日なので現在の暦では8月中旬です。各地では7月に七夕のお祭りをするのが一般的ですが、織姫星も彦星もまだ東の空に低く、しかも梅雨の真っ最中なのでなかなか見ることができません。ここ数年は天気に恵まれないので、七夕星に願いをかけるのも難しいですね。最新のヒッパルコス衛星の観測によると2つの星の距離は14.4光年、つまり136兆2200億㎞にもなります。2人の距離のなんと遠いことでしょうか。
◆地球は北極と南極を結ぶ軸を中心に自転しています。そして、この自転軸はコマのようにゆっくりと首ふり運動(歳差運動)をしています。このおかげて、自転軸の延長上にある天の北極は2万6千年かけて大きな円を描きます。天の北極の近くにある星が北極星です。現在の北極星はこぐま座α星ですが、ピラミッドができた頃の北極星はりゅう座α星でした。1万2千年後には織姫星のベガが北極星になります。
◆北半球の星空は北極星を中心に回転しているように見えます。北極星が変わるということは星空の回転の中心が変わることです。これを当館のプラネタリウムで再現してみると数千年前には市内から南十字星が見えていましたし、ベガが北極星になる時代には夏にオリオン座、冬に蠍座が見えます。