今回は久しぶりの三千m峰、南アルプス仙丈ヶ岳に登る。20代の頃、北沢峠のテント2泊で甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳を登ったが、最近はすっかり温泉泊付き極楽登山になってしまった。始発電車を名古屋で乗り換え、木曽福島から仙流荘行の直行バスに乗り込む。関西から南アルプスに向かうには乗り換えが大変だが、このバスのおかげで甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳は1泊2日でも登れるようになった。
そばを目当てに高遠で途中下車。高遠のメイン通りは閑散としているが、信州そば発祥の地なのでそば屋だけは人が多い。乗継時間を利用して桜で有名な城跡公園を散策する。山全体が桜の木ばかりだが、この時期は当然ながら観光客はいない。夕方、バスで仙流荘へ。バスターミナルには皇太子時代の天皇陛下が仙丈ヶ岳に登った際の写真が展示してあった。
今回歩くのは北沢峠から藪沢ルートを登り、翌日に稜線ルートを戻る周回コース。大平山荘は趣のある山小屋で、周囲に薪が積み上げられている。玄関に熊出没注意の看板。林道バスの運転手が熊を2回見かけたと車内放送していたのを思い出し、大きな声で話しながら登ることにしたが、樹林の登りがしんどくてやめた。途中から雨。急登を終えて雪渓の下で藪沢を渡り対岸へ。ここから沢沿いを登る。
雨脚は強まるばかり。トラバース道の分岐を過ぎて沢を離れ、鹿よけネットの間を進むと馬の背ヒュッテ。森林限界の下にある静かな落ち着いた小屋で、晴れていれば山頂が見えるはず。ここはNHK番組で湊かなえさんと工藤夕貴さんが訪れた小屋で、食堂には日本酒の一升ビンがずらり並んでいる。山小屋には珍しくスタッフ全員女性で、山の居酒屋という感じ。
森林限界を抜けると視界が開けハイマツの道に変わる。藪沢カールは涸沢と同じ氷河圏谷で、モレーンの上に今日の宿、仙丈小屋がある。背後は仙丈ヶ岳。前面は白い花崗岩の甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳など広がり眺望が良い。小屋の2階は食堂や談話室。寝床のある3階へは階段でなくハシゴを使う。頭上に「南アルプス最難関・滑落注意」との貼紙。たしかにここから落ちたら無事ではすまない。
夕食前に管理人からお話があった。大腿骨を骨折したそうで、ポールを支えにリハビリ中。今年は7月に入ってから天候不順で荷揚げのヘリが飛ばないため、女性スタッフが30㎏の食材を荷揚げしているとか。ここも管理人以外は全員女性。北アルプスに比べて南アルプスの山小屋は設備や食事で見劣りするが、この小屋は快適だ。しかも小屋の前から絶景というのがいい。
翌朝は、管理人に聞いた場所でご来光を待つ。南に富士山、北岳、間ノ岳と標高ワンツースリーが並ぶ。結局、富士山が見えたのはこの時だけだった。東にはギザギザの鋸岳とそれに連なる甲斐駒ヶ岳、その奥に八ヶ岳、さらにその奥に噴煙を上げる浅間山が折り重なっている。浅間山はこの2週間後に噴火した。甲斐駒ヶ岳の右手は鳳凰三山。北は伊那谷。やがて雲海の彼方から日の出。
山小屋の前には展望を楽しむ人たちが。ハイマツの中を稜線に向けて登山道が延びる。いつものことだが私たちの出発は遅い。山小屋の掃除が始まったので追い出されるように山頂を目指す。急登をつめると快適な稜線の道。山頂からは360度の展望。大勢の登山者。ここに来るのを夢にまで見ていたという女性がいた。北岳の陰に隠れて富士山は見えない。
1時間ほど大展望を満喫してから山小屋に戻り、預けた荷物を取って小仙丈ヶ岳へのコースをたどる。途中の稜線でガアガアと鳴き声がするので目を凝らすと雷鳥の親子が散歩中。小仙丈の山頂はルートから離れるが、ここからの仙丈ヶ岳の姿がいい。ここで大休止。五合目までは急な下りが続く。下山に選んだルートはメインの登山道なので昨日と違って登山者が多い。
森林限界を過ぎて樹林帯に入ると五合目。さらに急な下りが続く。北沢峠の山小屋で私たちと前後して下山したグループがバス待ちしていた。林道バスで再び高遠へ。今夜は高遠さくらホテルに宿泊。ここ伊那谷はローカル線が通るだけなのでのんびりした街だ。最終日は名古屋行きのバスを馬籠で途中下車。妻籠と比べるとこじんまりして、外国人と子供の団体でにぎわっていた。ここでも名物はそば。
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