KAWORUの山日記~今日も雲の上!

百名山や日本アルプスの旅の記録

広河原から北岳 2014.7.28-30 [北岳3,193m]

2014-08-10 16:09:27 | 南アルプス


広河原から白根御池小屋へ

この夏は日本で2番目に高い南アルプス・北岳を目指す。30年前、三峰川を遡行して三峰岳・北岳を縦走したが、ほとんど記憶に残っていないので再チャレンジとなった。7月8日の土砂崩れで夜叉神峠・広河原間が不通のため、やむをえず夜行バスで甲府に入る。翌朝、代替バスで奈良田を経由し、3時間かけて広河原に向かう。奈良田では40人余りの団体が来ないので、バスが右往左往することとなった。

 白根御池小屋へ

広河原山荘で入山届を投函し昼食。13時5分出発。ここから展望のない急登をひたすら登る。大樺沢との分岐で外国人が迷っていたが、日本語も話せず、英文の地図しか持っていないのには驚いた。急傾斜の連続で途中にベンチが2か所あり、合戦尾根を思い出す。ときおり樹林帯を吹き抜ける涼風が心地よい。夜行バスの疲れが出てきた頃、急登が終わり小さなアップダウンの続く水平道となる。

 白根御池小屋

16時、標高2,230mの白根御池小屋に到着。最近建て替えられた小屋は清潔で快適に過ごせそうだ。ほとんどが女性スタッフで、随所に細かい気配りが感じられた。この小屋を舞台にした小説を読んだと伝えると、「何冊読みましたか」「私は主人公と同じ名前なんです」と元気な声が返ってきた。道路不通の影響か、最盛期にもかかわらず布団一枚に一人というのはラッキー。真っ白なシーツにも感激。

白根御池 

木立に囲まれた小屋の周囲はテント場が点在し、正面に明日登る山頂がはるかに望める。夕方、広い談話室でストレッチをして、山のビデオを見て過ごす。雪渓で転倒した人が手当てを受けていたが、今年の大樺沢は事故が多いようだ。ここは水が豊富なので水洗トイレや洗面所がありがたい。南アルプスの天然水も飲み放題。小鳥のさえずりを聞きながら、ここで数日過ごすのもいいかも。20時消灯。

白根御池から北岳

草すべりを経て北岳肩ノ小屋、北岳頂上へ

ここから日の出は見えないが、東の鳳凰三山が明るくなり、まもなく朝を迎えた。6時25分出発。いきなり草すべりの急登に取りつく。周囲は高山植物の宝庫で、花々が斜面を埋め尽くし、疲れが癒される。背後の鳳凰三山がどんどん低くなり、高度を稼いでいるのが分かる。このコースは樹林帯を登るので日差しがなくて快適だ。やがて鹿よけのネットで囲われたシナノキンバイの群落が現れた。

 草すべり

8時20分、二俣への道を左に分けてひと登りで稜線に出た。ここから一転、快適な展望の尾根歩きとなる。甲斐駒、仙丈、槍・穂高、木曽駒、御嶽、乗鞍、…。9時40分、北岳直下の肩ノ小屋に到着。標高3,000m。昨年の槍ヶ岳に続いての3千超えだ。ドラム缶に囲まれた小屋は水不足を象徴している。なんと小屋の受付に大きなビールサーバーが。

肩ノ小屋から北岳へ

10時20分、荷物を預け山頂へ。ライチョウが一羽。人懐っこいイワヒバリが近づく。足元には高山植物が花を咲かせている。荷物もなく、展望の稜線を歩くのは最高に楽しい。やがて見えてきた山頂は登山者でびっしり。11時、標高3,193m、北岳山頂到着。ここより高いのは富士山だけ。眼下に北岳山荘、稜線の先には間ノ岳や塩見岳が見える。東側はガスに覆われ、富士山の頭がほんの一瞬見えた。

北岳 

伊那谷は晴れているが甲府側のガスがなかなか消えない。登山者が北から南へ、南から北へ通り過ぎていく。ここは南アルプスで一番賑やかな山頂だ。1時間あまり過ごして肩ノ小屋へ。気温14度。下界の暑さを思うと別世界だ。夕食は入れ替えが3回あったので100名は超えているが、これでも今夜は少ない方だ。この小さな小屋のどこでこんな大量の食事を作るのだろう。夕食後ストーブに火が入る。

 北岳

隣の人がデジカメで夕日を見せてくれた。昼は寝て夜に行動すると言っていたが、夜の写真が目的で登る人がいるとは。20時過ぎ、星を見るため外へ。頭上には夏の大三角、天の川を南にたどると射手座、蠍座、天秤座、…。星空を眺めていると消灯時間を過ぎてしまった。枕が4つ並んだスペースに3人だから、今夜もゆったり眠れる。夜中に寒さで目が覚めて、毛布を3枚重ねてやっと眠りにつけた。

肩ノ小屋

右俣から大樺沢を下る

4時45分、鳳凰三山の彼方から日の出。墨絵のように八ヶ岳や富士山が雲海に浮かび美しい。北アルプス、中央アルプス、南アルプス、…。手前の山は鳳凰三山、地蔵岳のオベリスクが見える。その奥の山並みは奥秩父。小屋の前ではトイレの新設工事中。3千mの高所でパワーショベルの作業というのは珍しい光景だ。最近、どこに行っても小屋のトイレは見違えるほど綺麗になった。

肩ノ小屋テント場

肩ノ小屋

肩ノ小屋 

小屋の近くでシーズン最後のキタダケソウが朝日を浴びていた。世界でこの山にしか咲かない貴重な花だとか。ここのテント場はロケーションが抜群だ。北穂高や槍の肩のテント場も標高3千mだが、景色はここが最高。700mも高い富士山がなぜか低く感じられる。富士山は下から見上げるより同じ高さで見る方が美しい。小屋の前で富士山を眺めながら贅沢なコーヒータイム。時を忘れる至福のひととき。

肩ノ小屋

キタダケソウ

7時20分、下山開始。8時25分、草すべりとの分岐を大樺沢に向けて下る。こちらの登山道も高山植物が多く、下るにつれて花の種類が変わっていく。中高年の女性グループが花の名前を確認しながら登ってきたが、この山は花を目的に登る人が結構多い。ヘリが小太郎尾根や大樺沢の上空を旋回。大樺沢では7月に入ってすでに4名が事故に遭っているので、救助活動かもしれない。

小太郎尾根分岐から甲斐駒

右俣

10時55分、二俣。南アルプスにこんな大きな雪渓があるとは知らなかった。今日も初心者らしい団体が登ってきた。最近はどこに行ってもツアー客と出会う。一方、途中出会った外国人はわずか3組で、北アルプスに比べたら随分少ない。沢は倒木で荒れており、崩壊地を避けて道は右岸へ左岸へと続く。12時50分、広河原に到着。ぴったり二日間の山旅となった。山荘で昼食をとり、バスで奈良田へ。

二俣

大樺沢

南アルプスの秘湯、奈良田温泉へ 

白根館は奈良田温泉の一軒宿で、源泉かけ流しの秘湯。泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉でツルツル、ヌルヌルしている。夕食は山人料理。主人が仕留めた鹿肉、ニジマスの燻製、蕎麦掻の揚げ出し、山菜の天ぷら、…。朝食は温泉粥。たまに熊肉や猪肉も出るとか。ここは農鳥岳の下山口に近いが、登山者よりむしろ秘湯目当てのリピーターが多いようだ。

奈良田温泉白根館 

奈良田温泉

電波の届かない場所で、超・早寝早起きの生活をたった2日過ごしただけで体調が良い。高齢の夫婦を何組か見かけたが、山の生活リズムが健康に一番だと思う。帰りのバスに乗ってきた地元のお年寄りも、毎日温泉に入っているそうですごく元気に見えた。7月に入って大樺沢で滑落事故が続発、さらに例年になく残雪が多いことからルートを変更したが、おかげでゆったりした山行が楽しめた。



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