子供の頃、江ノ島は僕のネバーランドだった。
灯台下の防波堤では、サビキ(釣り針が5~6本付いている仕掛け)とコマセ(とても小さなエビ)だけでアジが
数十匹も釣れ、イワシやサバを合わせると100匹以上釣れることも珍しくなかった。
70~80センチあるボラや1メートルを超えるサメなんかが掛かることもあって、子供の力では本当に体力勝負
になるため、必死になって竿を握り締めていたのを覚えている。
裏側の磯では、カメノテ(亀の手の様な形をした貝)がいくらでも採れ、大人は内緒で潜ってサザエを採ったり
していた。
入口まで橋が架かりキレイに整備された洞窟も、当時はロッククライミング&懐中電灯で探検という子供ながら
に度胸を試される場面であり、足をガクガクさせながら行ったのを覚えている。
新しくなった展望台も、当時は階段の踏み板が木造で隙間がたくさんあり、エレベーターもガタガタ音を立てて
動いているという不安極まりない建造物だった、足がすくむ思いをし、降りてくるとホッとするのに何故か大好き
だった。
金網越しに見える大きなヨット、大きな黒鯛を釣り上げているおじさん、転覆したヨットから防波堤まで泳いでき
た人にロープを投げて助けている親父たち、みんなみんなカッコ良くキラキラして見えた。
今では無用な防波堤工事、公園工事により生態系は壊され、魚影は薄くなり、誰でもつれたはずの防波堤で
は5センチのサッパですらなかなか釣れないようになった。
キレイになった展望台や洞窟は、どうもテーマパーク然としており、まったく親近感が沸かなくなり、未だに一度
も行っていない。
「国土交通省(旧建設省)」という名札をつけた連中を島内で見つけたら、絶対に海に落としてやろう。
それでも、今だに橋を渡るときは胸がときめく江ノ島。
少しでも多くの子供たちに、その歴史や魅力を伝えて行きたい。