よく見ると、勘太は腹掛け1枚の姿でスイカを食べています。そばには、脱いだばかりの着物がほったらかしになっています。他の人が着物を身に着けているので、勘太の腹掛け姿はすぐに目立ちます。
「みよちゃん、もう食べないの?」
「こんなに大きいスイカ、全部食べることができないわ」
みよが食べたスイカは、まだ半分近く残っています。勘太はスイカを食べながら、隣にいるみよが手にしているスイカをじっと見ています。
「残ったスイカ、ぼくが食べてあげるよ」
「本当にいいの?」
「全部食べるからだいじょうぶだよ。こんなにおいしいスイカを残したらもったいないもん」
勘太は自分のスイカだけでなく、みよの残した分もまとめて食べています。この様子に、お千代は少し心配しています。
「勘太くん、そんなにいっぱい食べたら……」
スイカを食べるのに夢中になっている勘太は、お千代の声が耳に入ることはありません。