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東日本大震災の被災地三陸から江戸の桜を観たいというかくしゃくとした義母と美しい義姉を、満開の大枝垂れ桜で有名な駒込・六義園に案内したのは、4月の初めでした。
「では休憩しましょう」と茶店前の縁台に近づくと、そばの径40cmほどの大木の根元一帯にころころと黒く丸いものがたくさん落ちていました。
その幹には「イスノキ」というプレートが巻かれていて、それまで幾度となく訪れその表示を見ていたはずでしたが、全くの不注意でその実のようなものを見逃していました。
いくつか拾って帰宅し早速インターネットで検索してみると、それは実ではなく、イスノキの葉そのものが変質したもので「ひょんの実」というものであることが分かりました。
まさにひょんなことで出会ったひょんの実ではありました。
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かつてイスノキ(蚊母樹,柞,Distylium racemosum,マンサク科,常緑高木,別名;ユスノキ,ユシノキ,ヒョンノキ)を燃やしてできた灰の成分は石灰分に富み鉄分が少ないので、柞灰(いすばい)といって伝統工芸の磁器釉薬(白色)の融材として利用されてきたことは仕事柄旧知のことではありました。
なお硬くしなやかなその木材は、薩摩示現流の木刀に使用されてきたのは剣道では有名なこととのことです。
ひょんの実はイスオオムネアブラムシが寄生して作るコロニー、いわゆる虫瘤(こぶ)です。
樹上に他の正常な葉とともにぶら下がっているのは、なんだかのどかでユーモラスでさえあります。
黒くなるのはタンニン成分が多いため。草木染の染料としても利用されます。
この夏のあの猛暑のためからか今年は不作(?)のようです。
採集したひょんの実にはまるで人間がキリで開けたかのような径5mmほどの孔が1ないし2カ所開いていて、流水でよく洗うと中から径1mmほどの半透明な虫の抜け殻と思われるものがたくさん出てきました。
イスオオムネアブラムシは脱皮して翅ができるとシロダモ(クスノキ科。野球のバットに利用されるのはアオダモ=モクセイ科。)へ移住して生活する習性があるのだそうです。
その孔に唇をあてて吹いてみると、中学のころ触っていたオカリナよりも柔らかく温かでよりヒューマンといえる音がしました。
ところでひょんの実の形状から即座に連想されるのが「石笛」です。
三内丸山をはじめ、各地の縄文遺跡から出土し、天然のもの人工のもの、孔が一個のもの複数のもの、また孔が貫通しているものしていないもの、さまざまなようです。
祭祀など宗教的なことに使われたとされます。
現代から見て想像もつかないことに関しては、大方は精神世界的なことに片付けておくことが、未だアカデミズムの常套のようです。
文明側が未開文化に向けてきた視線と同質なものを感じます。
高い周波数の透明な音色が複数同時に発せられた時には、きっと音波がビリビリと共鳴したことでしょう。
子供たちはその不思議さに合奏を楽しんだのではないか、ひょんの実もその仲間に入っていたのではないかと想いが廻ります。
有機物はほどなく土壌に同化し一般的に遺物としては残存できません。
土器や石器は残るが木器が残らないのと同じです。
またあらかじめ打ち合わせをしておけば、色々なリズムやメロディーの演奏により遠距離間の合図や通信にも使われ、例えばどこの丘のどの樹の下で待ってますという思春期たちがいたのではないかなどなど楽しく想像してみます。
現在のイスノキの生息地は関東以西ということですが、三内丸山が盛んだった三千年前ころの青森は、今の仙台あたりの気候と同じだったと伺いました。
植生も現在とは相当違っていたはずです。
ひょんの実と石笛の共存・共鳴の音色が、はるか縄文から聞こえてきそうな気がします。
「では休憩しましょう」と茶店前の縁台に近づくと、そばの径40cmほどの大木の根元一帯にころころと黒く丸いものがたくさん落ちていました。
その幹には「イスノキ」というプレートが巻かれていて、それまで幾度となく訪れその表示を見ていたはずでしたが、全くの不注意でその実のようなものを見逃していました。
いくつか拾って帰宅し早速インターネットで検索してみると、それは実ではなく、イスノキの葉そのものが変質したもので「ひょんの実」というものであることが分かりました。
まさにひょんなことで出会ったひょんの実ではありました。
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かつてイスノキ(蚊母樹,柞,Distylium racemosum,マンサク科,常緑高木,別名;ユスノキ,ユシノキ,ヒョンノキ)を燃やしてできた灰の成分は石灰分に富み鉄分が少ないので、柞灰(いすばい)といって伝統工芸の磁器釉薬(白色)の融材として利用されてきたことは仕事柄旧知のことではありました。
なお硬くしなやかなその木材は、薩摩示現流の木刀に使用されてきたのは剣道では有名なこととのことです。
ひょんの実はイスオオムネアブラムシが寄生して作るコロニー、いわゆる虫瘤(こぶ)です。
樹上に他の正常な葉とともにぶら下がっているのは、なんだかのどかでユーモラスでさえあります。
黒くなるのはタンニン成分が多いため。草木染の染料としても利用されます。
この夏のあの猛暑のためからか今年は不作(?)のようです。
採集したひょんの実にはまるで人間がキリで開けたかのような径5mmほどの孔が1ないし2カ所開いていて、流水でよく洗うと中から径1mmほどの半透明な虫の抜け殻と思われるものがたくさん出てきました。
イスオオムネアブラムシは脱皮して翅ができるとシロダモ(クスノキ科。野球のバットに利用されるのはアオダモ=モクセイ科。)へ移住して生活する習性があるのだそうです。
その孔に唇をあてて吹いてみると、中学のころ触っていたオカリナよりも柔らかく温かでよりヒューマンといえる音がしました。
ところでひょんの実の形状から即座に連想されるのが「石笛」です。
三内丸山をはじめ、各地の縄文遺跡から出土し、天然のもの人工のもの、孔が一個のもの複数のもの、また孔が貫通しているものしていないもの、さまざまなようです。
祭祀など宗教的なことに使われたとされます。
現代から見て想像もつかないことに関しては、大方は精神世界的なことに片付けておくことが、未だアカデミズムの常套のようです。
文明側が未開文化に向けてきた視線と同質なものを感じます。
高い周波数の透明な音色が複数同時に発せられた時には、きっと音波がビリビリと共鳴したことでしょう。
子供たちはその不思議さに合奏を楽しんだのではないか、ひょんの実もその仲間に入っていたのではないかと想いが廻ります。
有機物はほどなく土壌に同化し一般的に遺物としては残存できません。
土器や石器は残るが木器が残らないのと同じです。
またあらかじめ打ち合わせをしておけば、色々なリズムやメロディーの演奏により遠距離間の合図や通信にも使われ、例えばどこの丘のどの樹の下で待ってますという思春期たちがいたのではないかなどなど楽しく想像してみます。
現在のイスノキの生息地は関東以西ということですが、三内丸山が盛んだった三千年前ころの青森は、今の仙台あたりの気候と同じだったと伺いました。
植生も現在とは相当違っていたはずです。
ひょんの実と石笛の共存・共鳴の音色が、はるか縄文から聞こえてきそうな気がします。
ひょんの実の穴から見える空の色 蝉坊
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《 関連ブログ 》
●けやぐ柳会「月刊けやぐ」ブログ版
会員の投句作品と互選句の掲示板。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu0123
●ただの蚤助「けやぐの広場」
川柳と音楽、映画フリークの独り言。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu575
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会員の投句作品と互選句の掲示板。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu0123
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川柳と音楽、映画フリークの独り言。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu575