今から30年以上前のお話です。
ある飲み会が終わった後、帰ろうかなと思い、同年代仲間の桑島(仮名)と森(仮名)と一緒に繁華街を歩いていたら、森(仮名)が客引きの若いお姉ちゃんに誘われ、3人揃ってその店(接待を伴う飲食店)に行くことになりました。お姉ちゃんに付いて行く途中で、森(仮名)が突然、
「悪い悪い、ちょっと用事を思い出したんで、それが片付いたら合流するから、店で待ってて。」と離脱してしまいました。
残る私と桑島(仮名)は、店に到着後、席に通され、接待のお姉ちゃん達を待っていたら、そこに現れたのは、5人くらいの、アラウンド60を、はるかに超えた、お姉さま方だったのです。
えっ、と思い周りを見渡すと店に連れてきてくれた、若いお姉ちゃん世代は2人くらいで、ほかは、十数人、還暦オーバーのお姉さま方ばかり。そう、若いお姉ちゃんばかりの店と思っていた私たちは、騙されたのです。
若い客が久しぶりだったのか、やたら盛り上がるお姉さま方、よく見ると桑島(仮名)は、そのはるか年上お姉さま方と、なぜか盛り上がっており「桑島(仮名)って年上が好きなんだなぁ」と思った私は、何とか自分の母親よりも人生の先輩であろうお姉さま方に話を合わせていましたが、会計の時に払うであろうお金の他に、お姉さま方に何かを吸い取られていくような気がした私は、楽しそうな桑島(仮名)を、せきたて、店を出ることにしました。会計を済ませ、エレベーターに乗り込む私たちを還暦オーバーのお姉さま方がお見送り。エレベーターの扉が閉じた途端、
それまでニコニコしていた桑島(仮名)が手に持っていたセカンドバッグ(今はクラッチバッグというそうですね)を床に叩きつけ、大きな声で
「ふざけてんのかぁ!!」と怒り始めました。
そう、桑島(仮名)は年上好みでもなんでもなく、無理して年上のお姉さま方に合わせていたのでした。
結局、遅れてくると言っていた森(仮名)は、なぜか危険を察知したようで、私たち2人を生贄にして逃げたのでした。
桑島(仮名)も森(仮名)は良い仲間でしたが、若くして、2人とも今は、残念ながら、この世の人ではありません。
「何で逃げたんだ!」とか「すごい店だったなぁ」と思い出話、したかったですね。