何を話しているんだろう?なぜか不安が湧き上がってくる。
チュンサンは、誰かが前に来たことに気がつき、顔を上げた。目の前に、隣のクラスの女子生徒が立っていた。確かキムジスという名前だったような気がする。黒ブチのメガネをかけている。サラサラの髪の毛が肩のあたりまで垂れていて、メガネの奥の聡明そうな瞳が、好奇心いっぱいに揺れていた。
「わたし、隣のクラスのキムジスって言うの。あなたが数学のオリンピアードで金メダルをとったって聞いて、ぜひ教えてほしい問題があるんだけど、いいかな?」
チュンサンはこの学校に来て、はじめて得意な数学を教えてほしいと言われて、思わず口元が綻んだ。
「あら、あなた笑えるのね。もっと笑えばいいのに。」そう言ってジスは、勝手に問題集とノートを開き、チュンサンの顔を覗きこんだ。その問題は確かに難問で、ふたりはああでもないこうでもない、と言いながらいつの間にか夢中になって問題を解いていた。
ユジンはついにチュンサンの前の席に座り込んで楽しそうに話しているジスの背中を気にしながら、上の空で女子たちの会話に参加していた。すると、ユジンの顔から何かを察したチェリンが、くるっと後ろを振り返った。
そして
「わたしのカンジュンサンにちょっかいをかけてる女がいる」と言うが早いか、2人が仲良く頭を寄せ合っている席にいき、何かをまくしたててきた。そして、ぷりぷりと怒りながら、ユジンたちのところに戻ってきた。
「数学の問題を2人で解いてるんだって。何よ。秀才ぶっちゃって。あの女。絶対そんなの口実で、ほんとはカンジュンサンを狙ってるに決まってる。女は頭より美貌よ。でしょ⁈」
ユジンはチェリンの勢いに目を丸くしながらも
、こんなにストレートに気持ちを言えるチェリンをうらやましく思った。
わたし、チュンサンが他の女の子と話しているだけで、こんなに胸が苦しくなる、どうかしてる、ユジンはそんな自分の気持ちを持て余して、今にも雨が降り出しそうな空を静かに見ていた。