ユジンはまたひとりになって、少ししょんぼりしながら、道の影を踏み踏み歩いていた。すると、後ろから「なんで影ふみしてるんだよ?」と話しかけられた。チュンサンだった。今日のジスとの様子がちらついて、内心ドキッとしたものの、平静を装って「ただの暇つぶし」と答えた。
するとチュンサンはあの魅力的な笑顔で、
「遅刻大魔王、たまには帰りも一緒に帰ろう」と明るく誘った。
「誰が遅刻大魔王なのよ。」と言いながら、ユジンの心は弾んだ。少しずつ2人の距離が縮んでいる気がする。
実はチュンサンはユジンを校門のずっと手前から見ていた。今日こそは話しかけようと思っていたのに、キムサンヒョクのヤツが、ユジンに絡んでは、スキンシップをはかって笑わせようとしているのを見る羽目になった。
隣のクラスの奴の次はサンヒョクがこれなんて、これでは身が持たない。イライラしながら見ていると、ラッキーなことに、サンヒョクはヒラヒラと手を振って反対方向に消えて行った。
チュンサンは意を決して、ユジンの後をわざとらしくない程度に急いで追って行った。黄色のダッフルコートのユジンは影ふみをしているらしく、ゆらゆらと揺れながら歩いていた。
少し出ている日差しは、もうすぐ厚い雨雲に覆われそうだ。
チュンサンがなるべくさりげなさを装って、ユジンに話しかけた。びっくりして振り返ったユジンの瞳の奥に予想外の寂しさのような、切ない表情を見て、胸がドキンとした。しかし、ユジンの顔はすぐにいつもの明るい表情になり、チュンサンをほっとさせた。2人は黙って歩いていたが、少し先にバスが止まるのを見ると、顔を見合わせて走り出した。
「あのバスに乗ろう」
ギリギリセーフでバスに乗り込むと、2人はもう一度顔を見合わせて、にっこりと笑った。