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冬のソナタに恋をして

チュンサンの家で2

 チュンサンのうちは平家で、どっしりとした古民家のようだった。ミシッミシッという廊下を歩く足音が静かに響いている。サンヒョクの今時の家はいつも父親や母親の笑い声や話し声、夕食の匂いなどに満ちて賑やかなのだ。静まり帰ったチュンサンの家はユジンの目には不思議に感じられた。とても小綺麗になってはいるけれど、あまり生活感のない、何というか暖かみのない家に思えた。
チュンサンは廊下の突き当たりのドアを開けて、ユジンを招き入れた。
チュンサンの部屋に入ると、チュンサンのにおいにつつまれているようで、ユジンは一瞬ドキッとしてしまった。チュンサンも自分の部屋を見られて照れ臭そうにしていた。ごく普通のベッドと勉強机とタンスがある整理された部屋だったが、ユジンは興味深々でキョロキョロと眺めていた。

チュンサンは紅茶を淹れてくる、と言って部屋を出て行ったので、ユジンは棚に入ったレコードやいろんな本を眺めながら待っていた。
チュンサンがカップを二つ持って帰ってくると、ユジンは床に座りこんで、小さなテーブルの上で棚から出した小説を読んでいた。黄色のダッフルコートと紺色の制服の上着がきちんとたたまれて、横にちょこんと置かれていた。普段見たことのないブラウスとスカート姿に、チュンサンはドキッとした。白いブラウスから、うっすらと下着が透けているし、いつもは分からない胸の膨らみも、ブラウスの上からだとハッキリ分かるので、少し目のやり場に困る。ポニーテールにした髪の後れ毛が何すじか首に落ちていて、白い肌とのコントラストが眩しい。

一方チュンサンも、コートと学ランの上を脱いで、ハイネックのシャツとズボンという格好になっていた。ユジンは肩幅が広くてがっしりしていて、シャツが動くたびにその下の筋肉がゆっくり動く様子を見て、着痩せするタイプなんだなと見とれてしまった。

2人はベッドを背もたれにして並んで座っていた。シーンとした空気に、ユジンが紅茶を飲む音だけが響いていた。そのときチュンサンが意を決したように話しはじめた。

「この前さ、ユジナ、バスケ部のヤツに告白されてただろ?」
「!!!」
ユジンは真っ赤になって俯いている。
「何で知ってるの?」
「たまたま通りかかって、、、って言うかタバコタイム、、、」
チュンサンはさすがに後をつけたとは言えず、嘘をついてしまった。
「タバコは身体に悪いわよ、もう。私ね、断ったらサンヒョクと付き合ってると誤解されちゃって、それであんな噂になっちゃたの。ほんと困っちゃったわ」
ユジンは苦笑いしていた。
「でもさ、ユジナは好きな人がいるから断ったんだろ?」
「、、、」

ゆっくりと静かな間が空いた後
「俺はね、気になる子がいるんだ。」
といつになく真剣な顔でチュンサンが話し始めた。目にかかった前髪で表情はよく見えないけれど、ユジンはチュンサンの男の人にしては赤くてきれいなくちびるをじっと見つめて、息を潜めるように話を聞いていた。唇だけが別の生き物のように見えてきて、胸の鼓動が少しずつ速くなった。

「その子はね、初めて会ったときから、遠慮ってものが全くなくて、俺の目を真っ直ぐに見て、心にすっと入ってきたんだ。とっても目が綺麗で、純粋な目をしてる。いつも笑っていて、元気で、面倒見が良くて、とっても優しい。、、、でもね、ほんとその子って誰にでもフレンドリーでさ、あるときは隣のクラスの子と体当たりギャグのマネをしてるし、幼馴染ってヤツと時々じゃれあってるし、ハラハラして見てる、、、。」
そして、いたずらっぽい笑顔でユジンの目を覗きこんだ。
「始めは自覚してなかったんだけど、気づくといつも目で追ってるし、他の男に笑いかけたり触られたり触ったりすると、ほんとムカつくんだ。誰にも触らせたくないってその子に伝えたくて」

ユジンはしばらく黙ったあと、恐る恐る口を開いた。
「もしかして、、、それってわたしのこと?」




コメント一覧

kirakira0611
ありがとうございます。
今日はコメントに感謝、笑わせてもらってます。
yuzunoki5223
くさい芝居という感じもいいね。これは誉め言葉です!
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