「需要家からすごく使いやすい」と言われたらしい。HASSANにしてみれば普通の商品。彼らの業界では取引は値段から始まる。HASSANが売ってる商品は卸値が高い。「売り値より仕入れが高いから商売にならない。」と相手にされなかった。
ところが彼らが取引していた工場が昨年末に廃業した。この問屋も需要家にかなりの数量を買いだめして貰ったそうだが、ソロソロ底をつき始め、瀬に腹は換えられないと仕方なくHASSANの商品を買っていった。HASSANにしてみればごく普通の商品なのだが、職人としては「使いやすくて良い」と言葉にしてもらうとうれしい。
相手にされなかった業界の問屋が仕入先が無くなって困っていると聞いて、2、3ヶ月前に値段が合うならと見積した。この商品、13年以上動きが無く3年前に1トンほど廃棄処分した残りの僅か。今製造するとなると20年前の単価より2倍弱の高値。卸値は更に1.1倍。そうと分かってたらスクラップにしなかったのに。残念!!
HASSANは自身で売り込みに行った経験が無い。粗悪なサンプル通りに造ってと言われたら「出来ません」と断るのが常。何処の商品と聞かれたとき「あそこが造った」といわれるのがイヤだから。それに工場が最小規模なので大量のオーダーは断る。普通に考えれば小ロットより大量になれば安くなるのだが、その逆で小ロットは受けるが、大量になればなるほど単価が上がり、(遊ぶ時間がなくなるので)納期は未定と回答する。そんなこんなで日々付き合いにくいと言われているが、やるときはやる。土日祭日、徹夜も厭わない。
何十年と取引が続いているお得意先は、他店の商品を持って行ったら需要家から「使えない仕事にならない」と付き返されてスクラップにして、それから取引が始まったと先代から聞いたことがある。今では"マーク"を貼り忘れただけで返品されて慌てて速達でラベルを送ったことがある。
最近、近所の金物屋さんが来られて、この"マーク"の商品取り寄せられますかと聞かれた事がある。市内では出回ってないので、大丈夫ですよと返事したら「3個だけなんですが」と言うので2階から持って降りたら「エッ!」と。まさか製造元とは知らなかったといわれた。殆どが東京の問屋に送ってる商品なので回りまわって地元に帰ってきたみたい。「1個の卸値が180円、税込194円です」と言うと、「お客さんから800円までで買えたら取り寄せて」と言われてきたと言うのである。「取り寄せてもらったとゆうて、700円位で売らはったらよろしいやん」と582円収納した。「通常品やからウチにはいつであるけど、試しに3個と言われただけでひょっとしたら10個位買ってくれるかも知れませんやん。中2日で取り寄せられるとでも言っておいたらエエンとちゃいます。」金物屋さんにしたら10個売れたら単純計算でも五千円の儲け。販売元が東京やったら運賃がドッサリ乗っかってるんやろう。
何年も続いてる問屋で返品になった商品の箱を詰め替えて「不良品が混じってた」と返品伝票をつけて着払いで送り返してきた。商品はホームセンターなどで売られているものと同等品で、扱う材料が違ううえに個々に職人の刻印が無い。素人目には分からないのだろうがHASSANには一目瞭然。
需要家がズルしたのか社員がしたことなのかは分からないが、余りにもやり方が悪質なので、昨日理由を書いて「長い間お取引きいただきましたが、御社が信用できないので口座を抹消致します」と書状にしたためて送った。それでなくても少ない取引先が、また一軒減ってしまった・・・・。
この商品が必要なら儲けが無くても、2~3ヶ月間は近くの取引先で買ってもらう。10月から口座再開も可能だけど1割アップの新規契約になる。材料の仕入値が徐々に上がっていき、年末には3%程度の値上げを考えていた矢先、6年間据置いた卸値が買い手の都合で1割もアップすれば非常に喜ばしい。