奇乃堂

そこでアリをみるとはっ! 対処間違った、ごめん

 千両の植木鉢をずらすため、植木鉢と下に敷いている板をどけた。
 そのとき、土がこんもり、なんかのフンかなぁと考えつつ、考えないことに意識を振った。
 動くものがいるの。
 よった、よったとアリが。
 ……!?
 え? 土、そんなにないよね?
 あれ、どうしよう?
 とりあえず、板を置き、植木鉢を置いた。
 アリはよたよたと植木鉢に向っている。
 分かるんだねというのは脇に置きつつ、土もどけたし、どこにいてもあの世が見えているに違いないと、菊の植木鉢の土にぶすりと竹串を刺して、穴を開け、アリをつまんでそこに置いた。その上に、それがいたところの土を置いた。
 さようなら……いや、待て、私、ひどいことした、結局。
 ひょっとしたら、板の隙間で暮らしていたのかも知れないのに、そこに仲間がいたかも知れないのに、違う所に戻してしまったのだ。
 土があればいいというだけでなく、仲間という感覚が抜けていた。
 ……もう、アリは見えなかった。
 ……なんとなく、罪悪感。
 気づかなければ良かったと本当、思うよ……うっうっ。

今後ともよろしくでございます。

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