第7章 経営者人生の終い方 「出口戦略」 事業承継・M&Aと廃業
(3)継ぐべきか、継がざるべきか(星野佳道と考えるファミリービジネスマネジメントより)
ファミリーが築いてきた事業を目の前にして、「継ぐべきか、継がざるべきか」と悩んでいる人が多数いる。また「事業をどう引き継いでいったら良いのか」と考え続けるファミリービジネスの経営者も多くいる。私が講演させていただく機会に、よく聞かれるのはこのテーマである。
「自分には継ぐことのできる家業が目の前にある。家族からも継ぐことを期待されている。でも今の仕事にもやりがいを感じる。どうしたらいいだろうか。どう考えるべきだろうか」
という質問を受ける。尋ねてくる人の業種などはバラバラであり、日本中どこでも同じ質問が出てくる。それだけ大きなテーマであることは間違いない。
そんなとき、私の答えは「継ぐべきだ」である。
製造業であれ、サービス業であれ、農業であれ、その他の分野であっても、地域がどこであっても、もしファミリービジネスとして継ぐことができるものがあるのならば、継ぐべきだし、継いでほしいと思う
なぜ継ぐべきと考えるようになったのか、そこにはビジネス理論的な側面と人生論的な側面の2つの理由がある。
① ファミリービジネスを継ぐことは「リスクの軽減された起業」
第1のビジネス理論的な理由は、私はファミリービジネスを継ぐことを「リスクの軽減された起業」と考えているからだ後継者が「継ぐべきか、継がざるべきか」と悩むのは
「父の仕事はかっこ悪い」
「自分が進めたいビジネスと違う」
「同族間の人間関係が嫌で、とても引き継ぐ気持ちになれない」
というケースがよくあるからだ。中には「それならば、自分で起業したい」という人もいる。
アントレプレナーとして事業を新たに立ち上げるのは、ビジネスパーソンとして究柩の自己実現かもしれない。しかし現実には、大半の新規事業は長続きせずに終わっている。これは経営手法が間違っていたということだけではなく、そもそも新規事業を軌道に乗せることは難易度が高いからだ。
事業のアイデアが間違っていなくても、市場が狙った通りに存在していても、製品やサービスの質が高くても新しい事業が実際に利益を生み出すまでには相当の時間を要するケースが多い。やりながら学び、-略上の修を繰り返すことも必要だ。
多くの失敗ケースにおいては、思っていたタイミングで予想していた収益が出なかったということなのであり、事業の発想が間違っていたということでは必ずしもない。つまり思っていた状態になるまでのサバイバルリスクが大きい、ということなのである。
これに対して、ファミリービジネスは、起業する時のサバイバルリスクを完璧にヘッジしている。現状では全く成長していないかもしれない。かっこ悪いかもしれない。市場のニーズといずれているかもしれない,長期的には衰退ビジネスに見えるかもしれない。それでも長い間リバイバルし きたことは事実であり、おそらく今後もしばらくはサバイバルしていくことは 想できる サバイバルするリスクを<ッジしている起業」と えたときに、これほど恵まれた機会はない。
一方、ファミリービジネスが抱えている多くの経営課題は、自分で起業しても存在する課題である。いずれにしても、克服しなければいけないという点で変わりない。
② 後継者にしかできない「仕事」がある
第2の人生論的な理由は、自分に与えられた使命とは何かという論点だ。
人生とは、やりたいことをやるのが良いのか。それとも、その人だけに求められている役割があるならば、それをやっていくべきなのだろうか。それらが一致していれば素晴らしいが、異なっていることのほうが多い。私は学生時代にアイスホッケーというスポーツを真剣にやっていたことがあるが、チーム事情を考え、やりたいポジションよりも自分にしかできないポジションをやることに役割を感じた。これは社会でも同じかもしれない。自分にしか継ぐことができない事業があるならば、継ぐべきだと私は思う。
後継者がファミリービジネスを継がないときには、他の会社で働くことになる。しかし他の会社の仕事が「ずっとやりたいこと」だったとしても、それは「あなた」でなくてもできる仕事かもしれない。一方、家業に戻ってそれを継ぐことは、ファミリービジネスの後継者として生まれた「あなた」にしかできない。他の人が「あなた」と同じ役割を果たすことは不可能だ。
再び駅伝に例えると、「あなたにしかつなげないたすきがあるならば、それを引き受け、全力で走り、次につないでいくことはあなたの使命だ」ということだ。「継ぐと決める」ことは、自分の人生に与えられた使命を理解する瞬間に他ならない。
どうせ継ぐならば、大きくすれば良い。自分が誇りを持てる会社に変えれば良い。成長したときには、自分がやりたかったビジネスを始めれば良い。そして、あなたのファミリービジネスの変革と成長は、日本経済の発展に貢献する堂々たる大事業であることを知ってほしい。
ここまでは、中沢康彦著・日経トップリーダー編 「星野佳道と考えるファミリービジネスマネジメント[1]継ぐべきか、継がざるべきか」 日経BP社 からの抜粋ですが、もう一つは私が言いたいことは
③後継者がやりたい仕事は必ず家業とつながる
ということです。
中小ファミリー企業が『長寿幸せ企業』として生き続けるためには、
第4章『長寿幸せ企業』の取り組みの(5)これから100年間潰れない会社への挑戦「なぜ今老舗の倒産が増加しているのか!?」
でお話した「中小零細ファミリー企業が永続企業であるために重要な4つの鉄則」
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自己資本比率50%以上=実質無借金経営
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投資対策=新規事業と人(採用と教育)への投資
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早い段階からの継承対策=後継者対策、相続及び相続税対策・保険対策
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「不易流行」=「本末」の「本」と「末」、「人間学」と「時務学」
が重要です。
この4つの鉄則の内、2.の「投資」と4.の「流行」に具現化するのが新規事業開発です。
現在の事業が非常に好調であっても、会社の柱の事業が1本では、やがては衰退期に入りますし、社会的環境などに大きな変化があればたちまち事業が傾いてきます。それを未然に防ぐために、余裕のあるときから、新規事業への継続的な取り組みや投資が欠かせません。
無借金優良企業のであっても、変化できないは死を意味します。
新規事業も、今後は単に新しい業種や商品ではなく、BtoBtoCビジネス、マッチングやプラットフォーム型ビジネス、民間や公共なども絡んだ社会の課題を解決するソーシャルビジネスなど「何屋」では表現できないビジネスがどんどん生まれています。特に今後21世紀中頃まで日本では、少子高齢化空き地空き家問題などを原因とする、新しい「不」が雨後の筍のように増えてくる状況は間違いなく、その生活者の「不」に対応できる会社だけが生き残れるのです。その時、家業承継者である子どもさんが、やりたいと温めてきたことが、新規事業として現実のものとなることは十二分に考えられます。
やりたいことや好きなことがあるので家業を継ぎたくないという子どもさんのほうが、やりたいことも、好きなこともないので仕方なく実家でも継ぐかと考える子どもさんたちよりはるかに、経営者としての資質があると言えます。
ぜひとも、親子で徹底的に徹底的に話し合ってみてください。親子で話し合っても、すぐにケンカになって話にならないというかたに、
井上経営研究所では、経営者である親、後継者候補である子どもさんそれぞれからの個別「無料経営相談」の後、「1日経営ドック」で親子お二人と井上雅司の3者面談を設定することも可能です。
また、
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実家の事業を継ぐ必要ができたが、何から手を付けたらいよいのかわからない!
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後継者に基本的なヒト・モノ・カネについての基本的な経営実学を身につけさせたい!
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起業はしたいが倒産などで家族には絶対に迷惑をかけたくないから、経営の基礎を学びたい!
などのための無料の起業・家業承継プログラム「両潤塾」もご興味ありましたらご覧ください。
次回は(4)会社を親族以外に 〈譲る〉 「親族外継承」 を予定しています。
このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2018」は井上経営研究所が発信しています。
さらに詳しくお読みになりたい方は井上経営研究所のホームページ「長寿幸せ企業への道」の「井上雅司の経営再建講座」をご覧ください。
井上経営研究所(代表 井上雅司)は
2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に
- 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
- 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
- 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業
に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。
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2.「長寿幸せ企業への道」
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