川崎出身である私にとって、特に幼少期身近だった「京浜急行」は私の鉄道の原風景の一つでもあります。
しかし今回のダイヤ改正(改定)の一件は、京急電鉄に対して、「非常に失望し、どうしょうもない鉄道事業者だ」と思うこととなりました。
改正ダイヤの内容に関しては徐々に詳細が明らかになってきましたが、
今回の失望は改正ダイヤの内容ではなく、その告知方法やタイミングです。
結論を先に言えば
「京急は趣味的に面白くても、日常の足にはなりえない」「自分は京急利用者でなくて本当に良かった」
に尽きます。
4月22日(約3週間前):京急のダイヤ改定の概要が公式ホームページに掲載される。
その後すぐに掲載内容は削除。ダイヤ改定はなかったものとされる。
5月7日夕方(約1週間前):再度概要が公式ホームページに掲載される。
内容はほぼ同一のもの。
結果的に白紙ダイヤ改正でありながら、告知が1週間前という直前のタイミングで行われる。
一方で、利用者としてはもっとも気になり、また影響がでてくる、改正後時刻の詳細
5月8~9日の週末にかけて各駅では「その駅の発車時刻」が掲出されるものの、公式サイト上では掲載されません。
5月10日未明の京急公式サイトの「乗換・時刻検索」での検索結果
5月16日(改正初日)で検索
「エアポート快特」が京急蒲田に停車しているので、改正前ダイヤのようです。
公式サイトの内容が間違っているという笑えない状態です。
これでは日付を指定して、検索することが出来る意味がありません。
5月11日の「乗換・時刻検索」の検索画面
ようやく「16日以降の時刻は12日18時以降に検索してください」と表記されます。
「各駅時刻表」の方も、11~12日頃になってようやく
平日の時刻は5月15日以降・土曜日の時刻は16日以降・休日の時刻は12日18時以降に検索してください。
と表示されます。
平日の時刻に至っては前週金曜日ですら見ることが出来ない。という泥縄的対応です。
京急自身の公式サイトでこの状況。
「駅探」や「yahoo乗換検索」のような外部サイトの信頼度となれば・・・。
99年の快特・普通の2本立てダイヤになって以来の白紙改正でありながら
「改正がある」ということ自体の発表が約1週間前。
ダイヤの内容が明らかになるのはその後。
1週間前を切っても改正後に
いつもと同じ時間に目的駅に到着するには、出発駅を何時何分の電車に乗れば良いのか分からない。
しかも、川崎~金沢文庫間の各駅では普通列車の本数が日中毎時12本→9本(4分の1減)という
大きな変更であるにも関わらず、ダイヤ改正のリリースでは一切触れられていない。
という全くお粗末な状態です。
ちなみに各列車の途中駅の発着時刻が分かる冊子状の時刻表の発売等に関しては、
京急としては現時点では未発表。
5月25日発売予定の「東京時刻表6月号」で発表されるかどうか・・・(東京時刻表のサイトでは記述なし)
というところです。
直通運転を行っている京成電鉄では、4月19日付で発表。
現時点では全列車全駅の発着時刻が分かる改正後時刻表が公式サイトでPDFで配布されている。
と京急とはだいぶ差があるようです。
このような一度出した発表の取り下げ。また約1週間前という直前での再発表。
更になかなか公表されない新ダイヤの内容。
このような利用者不在のゴタゴタが生じたのは
ネット上などでは「大田区からの横槍が原因」という声も聞かれるようです。
しかし私はこれは違うと考えています。
まず今回の一件を時系列的に見ると
4月21日、京急から大田区にダイヤ改定の一報が伝えられる
4月22日に最初のダイヤ改正のリリースが京急公式サイトに掲載される
4月23日、この日予定されていた連続立体化事業の関係者見学会は中止に。
この頃、複数の大田区議会議員氏のサイトに、「蒲田通過は遺憾」とする記事が発表される
現在確認できるものでは、議会議員いぬぶし秀一氏のブログでは4月23日付・同黒川仁氏のブログでは4月29日付
一方この頃には既に京急公式サイトでのリリースは削除されている。
4月30日、区議団が京急本社を訪問し、京急蒲田通過の撤回を申し入れ
5月7日、ダイヤ改正告知の法定期限ギリギリになって、京急サイトで再びダイヤ改正の公式リリースが発表
同日大田区は新ダイヤ反対の対策本部を設置。
この頃からテレビニュース等でも「大田区による通過反対運動」の件が取り上げられる。
といった状況です。(内容は産経ニュースを参考)
これはあくまでネット上・マスコミ報道などにより表面上に見えているものだけ。
水面下では他にも色々な動きがあると思われます。
これで気になるのは、大田区による反対活動の多くは「最初のリリースの取り下げ後」であること。
京急が関係者見学会の中止にビビって、発表を取り下げたと言わんばかりの状態です。
そもそも、鉄道のダイヤ改定が発表されて、不便になる地元自治体等が不満を表明したり反対活動をする。
ということは、何も今回の大田区対京急に限ったことではなく、全国津々浦々、昔からあることです。
特に影響が大きくなるような大規模改定では付き物の「風物詩」ともいえることです。
当然、鉄道事業者としても自治体からの反発は織り込み済みのではないでしょうか?
3セク鉄道や地元有力者と密接な関係がありそうな地方鉄道ならまだしも、大手企業である京急ほどの会社が
区議会議員や区の反対程度で、ダイヤ改定の発表をひっこめる。というのはどうも納得がいきません。
また引っ込めたものの、再度同じ内容で発表する。というのも
大田区の顔色を伺って引っ込めたとするなら、尚更納得がいきません。
これらを考えると発表の取り下げ。その後直前になっての再発表の原因は外部ではなく
むしろ、京急の社内的要因にあるのではないでしょうか。
再発表された後も、公式サイトの時刻・乗継検索や駅時刻表の対応が延々とされず、
直前になってからされたことも、京急側の準備不足を伺わせます。
4月22日に発表するも、準備不足等で他の部署または、力のある人物からクレームがつき取り下げる。
その後、上からの鶴の一声?もしくは、「なんかなりそうだ」ということで
当初予定通りダイヤ改正を断行を決定。5月7日に急遽発表
というシナリオも思いつきます。
かつて京急のダイヤ担当者の話として
D急行(逗子急行)は、部長だっか課長が「俺の目の黒いうちは絶対に復活させない」
と言っていたので急行復活は無いでしょう。と語っていたのを思い出しますが、
案外、社内的な派閥抗争のようなものが影響しているのでは?とも思われます。
7月の京成の成田新高速ことスカイアクセス開業。
でまたしてもダイヤ変更が予想されるこのタイミングでの白紙ダイヤ改定は、焦りすぎている感も受けます。
一応名目として「上り線の高架化の為」となっていますが、
悪天等で高架切替が行われなれず予備日になってもダイヤ改定が行われます。
つまりは新ダイヤは高架切替前の状態でも運転できる内容になっていると思われます。
今回はダイヤ修正程度として、7月に上り線が高架化された新配線を生かした本ダイヤとして
白紙改正を行っても良かったのではないかとも思います。
しかしながら理由はどうあれ、今回のダイヤ改定はあまりにも遅い発表であり、
直前になってもダイヤの詳細が判明しないという、利用者不在の状態なのには変わりはありません。
沿線利用者の通勤通学や行楽の足に加え、羽田空港アクセスを担い航空旅客の足ともなっていることへの自覚はあるのでしょうか。
単に空港の近くに駅を作れば「空港アクセス鉄道」ではないと思います。
この一件で京急電鉄自身が乗客に不満を感じさせ信頼を失う結果となっても、残念ではありますが京急自身の自業自得です。
しかしこれにより鉄道界全体が信頼を失うこととなれば、それは意識の高い鉄道事業者への「業務妨害」に他なりません。
特に影響範囲が大きい、ダイヤ改定の際の事前告知の方法やあり方など、法整備や行政指導の強化を求めたいものです。
法令に定められた最低限の基準を守れば問題ないと考える事業者や、その最低限の基準すら守れない事業者。
逆にその最低限の基準よりを大きく上回る基準でサービスを提供する事業者。
同じ鉄道事業者・公共交通事業者の中でも「格」というものが、明確に存在することを改めて感じた今回の一件です。
色々と話題の蒲田通過の件ですが
私としてはエアポート快特(以下「エア快」と略す)の蒲田通過はどちらでも構わないというのが印象です。
まぁ通過してもいいけど、無理にやる必要もないんじゃないか・・といったところです。
ただ羽田空港アクセスとして考えると、私の場合利用する可能性があるのは「横浜~羽田空港」
よって「エア快」の蒲田通過による1分程度と想定される所要時間短縮による恩恵はありません。
むしろ、横浜から快特や特急に乗って蒲田に着いてみれば、エアポート快特が悠々と通過。
次の空港方面はその後・・。
となれば、所要時間短縮どころか所要時間増でマイナスです。
基本パターンではこのようなケースはないとしても、パターン直前直後やパターン外になる時間帯などに
このようなケースが発生する可能性も有り得ます。
また、ダイヤが乱れた場合などは、直通列車の運行が中止されたり、
蒲田での乗継が分からなくなるので、やはり不安材料です。
エア快の通過を見送りつつ、次にいつ来るか分からない空港行を待ちぼうけ・・となりかねません。
もっとも、私のところから羽田空港だと、
本数が少なめ。空港行は連休時などの渋滞が心配。混雑時は満員乗車拒否の可能性が・・。
という点さえ除けば高速バス利用が一番費用対効果が高く(運賃面でも鉄道利用と大差がない)
旅行の際に京急を選択する可能性は低いと思うので、
そういう意味では最初に書いたように「蒲田通過はどちらでも・・・・」
となるわけですが・・・。
新ダイヤの内容に関しては機会があれば、詳細が判明した後にでも別途書こうと思います。
記事中に使用した参考サイトなど
京浜急行電鉄公式サイト
http://www.keikyu.co.jp/index.shtml
産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/100507/tky1005072027011-n1.htm
京急蒲田駅が通過駅に格下げ 大田区庁舎内ゴタゴタ
2010/5/7
大田区議会議員 いぬぶし秀一氏のブログ
http://blog.goo.ne.jp/inuhide
大田区議会議員 黒川仁氏のブログ
http://kurokawajin.jp/blog/index.php
Web魚拓サイト(4月22日付の当初のダイヤ改定の発表記事)
http://megalodon.jp/2010-0422-1105-15/www.keikyu.co.jp/corporate/press/press_files/100422.shtml
5/16 13:01
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