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映画】「飢餓海峡」を見たよ

ツタヤの110円レンタルのキャンペーンで昭和の邦画の名作「飢餓海峡」を借りました。

1965年(昭和40年)公開のこの映画、水上勉の推理小説を原作としている183分の長編。1954年の洞爺丸台風(台風15号)における洞爺丸沈没や岩内大火をモチーフとしていることでも有名ですね。


若き日の三国連太郎演じる犬飼と網走刑務所の仮出所者2名が出会い北海道の岩内に。
岩内では犬飼を駅で待たせ仮出所の2人は今後の就職の相談にと温泉地で知り合った夫婦が営む質屋に。
しかし2人は質屋で強盗放火(これが岩内大火の原因という設定)を犯して駅に逃げ戻り犬飼と3人で列車で函館に・・というスタート。

函館では気象情報や判断の誤りで出航した青函連絡船層雲丸が荒波に揉まれて沈没寸前。



荒波に揉まれもはや転覆沈没寸前の層雲丸。このシーンは模型でしょうか



転覆と前後して、函館市街から七重浜に救助に向かう消防や警察の車列。車に乗っている人たちは浜に到着するやいなや、飛び降りて小舟に乗換え救助に。鮮やかな動きです。

映画ではこのシーンや転覆は夕方前ぐらいの時間帯。犬飼ら3人はこれに遭遇して、救助活動に加勢する消防団員に扮して小舟を調達し夜中に漕ぎ出し本州に渡ることを思いつきます。

史実の洞爺丸沈没では日が落ちた18時30分過ぎに出航、22時過ぎにSOSで七重浜に座礁を発信。函館港外の遠浅の砂浜である七重浜に座礁したことで「最悪の事態にはならないだろう」と陸上側や他の船舶も一安心。
結局転覆沈没して投げ出された遭難者が自力で浜にたどり着き民家などに助けを求めるまで、七重浜に多数の遭難者が漂着していることも分からず救助隊の派遣も遅れてしまいます。この映画のように遭難者の漂着前に救助隊が七重浜に集結していればもっと大勢の人が助かったはず。というのを感じますね。



この部分は実際の洞爺丸台風のニュース映像の利用??
層雲丸の転覆絡みにそれなりの尺を使っているのは、映画公開(1965年)の11年前に起きた洞爺丸沈没を風化させないためというのもあるのかも??
ただ洞爺丸目当てでこの映画を見ると肩透かしになるかも。

警察では引き揚げられた遺体のうち引き取り手がない2体が同じ場所に打撲痕があること。この遺体が網走刑務所の仮出所後行方不明になっている2人と一致することが判明。捜査がはじまります。

手漕ぎ船での津軽海峡横断、洞爺丸台風当時の青函連絡船の通信士だった坂本幸四郎氏の本では「海流上不可能」と考察していましたが、NHKのグレートトラバースでは田中陽希氏が竜飛岬から福島川河口の横断を成功させているので津軽海峡横断自体は現実での実現可能性もあるのかもですね。

船上で主犯の2名が仲間割れをして争い、漁夫の利を得る形で大男で力のある犬飼のみが生き残り下北半島の仏ヶ浦に到着。
そして犬飼は2人が残した強盗の金を持ち山中を歩き森林鉄道を列車に遭遇して飛び乗る。



ネット検索情報では今のむつ市川内地区から山中の湯の川温泉や野平を結ぶ川内森林鉄道だそう。映画では車内で犬飼は大湊の遊郭に勤める八重と出会う。というストーリーの重要部分に。
今となっては貴重な往年の森林鉄道の現役時代の姿の映像が映画の中で記録されています。

映画後半、八重が新聞記事で樽見京一郎こと犬飼を発見して舞鶴に向かうシーン。



D5272号機牽引の客車列車が登場しています
D52の72号機は山北駅横で保存されている70号機とともに御殿場線電化の1968年まで活躍した機関車で今は御殿場駅前で保存されています。



このトンネルの雰囲気、御殿場線複線跡のトンネルを感じます。
(電化工事の際に使用していない方のトンネルを対応工事を行い完成後に現在線に切り替えたので、非電化単線だった時代は現在は使っていないトンネルを使用していた)

この後、八重と舞鶴の企業経営者で篤志家の樽見氏の書生の2人の遺体で発見。
舞鶴署の刑事たちによる推理パートとなり、この中で犬飼が樽見と名を変えた舞鶴での人生や生い立ちなどが明らかになります。

ラストシーンは容疑者犬飼(樽見)と北海道に向かう刑事たちのシーンで青函連絡船での船上が登場しますが、残念ながら船全体が分かるカットはなかったので、具体的な船名などはよくわからず・・。

鉄道シーンとしてはこの他に岩内駅から函館に向かう9600形SL牽引の客車列車や東京のシーンでは旧型国電の走行シーン、上野駅なども登場します。
鉄道シーンといい街の風景といい昭和の名作映画が貴重な過去の時代の記録映像になっているのも観賞の楽しみです。

スートリーとして、岩内大火の焼け跡から他殺死体が発見されたこと。層雲丸の犠牲者の遺体で2体だけ引き取り手がないこと、など細かい部分を見ると非現実的と思える部分や、犬飼が名を変えた樽見は犬飼の考えた偽名なのか実在の人物とすり替わったのか、偽名なら丹波の寒村など樽見の生い立ちを調べた際にわからなかったのか、など疑問もあります。

といってもやはり昭和の名作は凄い。細かい部分が後々の伏線になっているストーリー展開に重厚な映像、演者の演技など唸らせられます。
主人公の犬飼、たまたま仮出所中の2人と出会ってしまったがばかりに、強盗殺人の共犯者のようになってしまいますが、実際には正当防衛のような形で主犯格の男を海に落としたこと、主犯格2人が残した金を届けなかった程度でそこまで悪いことをしたわけでもない。
更に八重に感謝と同情の証か多額の現金を渡すものの、最終的にこれが命取りとなってしまうという人の良さがが仇になったような不運さ。
また八重も犬飼(樽見)を追い詰めるつもりも毛頭なく、ただ十年間ずっと恩義を忘れずにいた片想いの相手に感謝を伝えたかっただけ。犬飼(樽見)も八重を殺すつもりはなく精神的に追い詰められて逆上してしまっただけ。
というせめて八重が樽見と対面した時に事情を察して、うまく立ち回ってくれれば・・と思ってしまうなんともやるせない内容です。

樽見の妻、郷里の丹波の寒村の人達など樽見の篤志家として部分に救われた人たちが少なくないことがせめてもの救いでしょうか。

この映画は183分と3時間を超える長編。今の映画なら「あれから〇年」と飛ばしそうな八重の東京でのシーン、更に舞鶴署の刑事の樽見の取り調べシーンなど丁寧に描写されています。映画に潤沢な予算が使えた時代なのかな・・とも思いました。


2024/10/17 00:57(JST)

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