私が考えた譲二さんの危ない『ひとつ屋根の下ストーリー』。前回で一応完結はみたのですが、おまけとして明里さん目線からのお話を書きました。
そして、本編の明里さんにも通用する明里さんの譲二さんへの本音も盛り込んでみました。
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私:泉堂明里(あかり)
茶倉譲二…私の幼なじみで元婚約者
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ひとつ屋根の下・明里~その1
若い頃からお世話になっていた方が亡くなった。
この方は名前を口にすれば大抵の人が知っている会社の会長で、父の仕事関係の知り合いでもあったから、子供の頃から「おじさま、おじさま」と言って懐いて親しくしていた方だった。
その葬儀で偶然、譲二に会った。
譲二はあの茶堂院グループのオーナー一族、茶倉家の次男で私の元婚約者でもある。
その譲二自体も一ヶ月ほど前に奥さんを亡くしていた。
その葬儀にも出席したが、一通りの会話を交わしただけだったから、私は譲二をお茶に誘った。
色々と、ちまたで噂されている譲二の家庭内のことなど、真偽を確かめたいと思っていたからだった。
譲二は少し考えたが、「ま、なんとか調整できるだろう…」と言って私の誘いに乗ってくれた。
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明里「久しぶりね、譲二とこんな風におしゃべりするの」
譲二「そうだな。この間は家内の葬儀に参列してくれてありがとう。
あの時は気も動転してたから、ちゃんとお礼も言えなくてごめん」
譲二の奥さんはなんと譲二よりも16歳年上で再婚だった。
そもそも、なんでそんな年増女にひっかかったのだろう?
私が手ひどく振ったから、同年代の女性は怖くなったとか…。
明里「奥様は認知症だったそうね」
譲二「ああ、葬儀の挨拶の時にもちょっと言ったけど、若年性のアルツハイマーでね。
最後は俺のことも忘れてた…」
明里「え? 自分の主人のことまで? 」
譲二「ああ、知ってるかもしれないけど、ロコは前の夫を事故で亡くしていてね。
昔の記憶はずっと残ってて、俺のことは前の夫だと思ってたみたいだ…」
うわ、それはかなりキツい。私なら耐えられないわ。
明里「ところで…。その奥様の連れ子と同棲してるって本当?」
譲二「友梨花ちゃんのこと?
友梨花ちゃんとは…一緒に暮らしているか?って聞かれたら一緒に暮らしているよ。
…そもそも、ロコと結婚した時からずっと一緒に暮らして来たからね」
明里「それなら、その子を愛人にしてるとかなんとかいう噂は嘘なわけ?」
譲二「…。相変わらず、単刀直入だな、明里は…」
明里「はぐらかさないでよ。その辺どうなってるの?」
譲二はため息をついた。
譲二「来月、ロコの四十九日が済んだら、入籍しようと思ってる…」
明里「やっぱり、手を出してたのね?」
譲二「そういわれると身も蓋もないけど。ロコも友梨花ちゃんも、どっちも俺にとっては大切な女性だから」
明里「どうせ、その二人とも向こうから言いよられたんでしょ?」
譲二「…当たらずとも遠からずっていうのが、情けないな…。
明里にはすべてお見通しか…」
明里「だって、譲二が子持ちの未亡人を誘惑したり、連れ子の女の子を襲ったりなんて、絶対想像できないもん」
譲二「誘惑はともかく、襲うってなんだよ、襲うって…。
俺、そんなことしないよ」
明里「わかってるわよ。だから想像できないって言ってるじゃない」
私は思わず吹き出した。
譲二「笑うなよ」
譲二は照れたように言った。
こんな風にからかいがいのあるとこ、ホント昔と変わってないなぁ。
明里「それぞれから言いよられて、どっちもちゃんと断れずにずるずる付き合ってたわけね?」
譲二「なんかその言い方だと、優柔不断で不甲斐ない男みたいだな…俺」
明里「だってそうなんでしょ?」
譲二「まあな…」
明里「それで…、その子はいくつなの?」
譲二「俺より10歳下」
明里「それなら43歳か…。もう子供は無理ね…。経産婦じゃないなら」
譲二「ああ、彼女には申し訳ないことをしたと思ってる…。
本当はもっと前にロコと離婚しようと思ってたんだ」
明里「でも、譲二のことだから、奥様を冷たく切り捨てることは出来なかったわけね」
ヤレヤレと思った。
その子と付き合うようになってからも、どうせ奥さんのことも、とても大切にしていたに違いない。
全く…人間の本質というのは大人になっても、年をとっても変わらないものらしい。
私はまたクスリと笑った。
譲二「なんだよ」
明里「譲二は昔と変わらないなぁと思って…」
譲二「どうせ俺は成長してないよ」
明里「拗ねないの。誉めてるんだから。
夫とするには最高の人だなぁって」
譲二「俺をすげなくふったお前に言われてもね…」
明里「ほんと…。なんで私、譲二をふったのかしらね?」
譲二「それ、俺に聞かれてもね…。
でも…、なんでなの? 俺も一応知りたい」
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ひとつ屋根の下・明里~その2
なぜ、私は譲二をふったんだろう?
明里「譲二のルックスは別に嫌いじゃないし…。
一緒にいると落ち着けるし、こんな風におしゃべりするのは楽しいし…。
あそこまで嫌ったのはなぜかしら?」
譲二「こっちが聞きたいくらいだよ。それで、理由はないの?」
明里「敢えて言うなら…。親が決めた婚約者だったからかな?」
譲二「それだけ?」
あっけにとられたような譲二の顔が可笑しい。
明里「結婚相手を親に決められたってだけで我慢できなかったから…。
婚約者としてじゃなくて、普通に学校かなにかで知り合ってたら好きになってたかもね」
譲二「え?」
明里「家はライバル企業同士だし、付き合うのを反対されてたら、どうしても結婚したくて駆け落ちくらいしたかも…。
ロミオとジュリエットみたいに」
譲二「なんだよ、それ」
明里「だけど実際は、無理矢理親に決められた婚約者がなんだかんだとモーションかけてくるから、これは全力で逃げなきゃって思うよね」
譲二は情けなさそうな顔をした。
譲二「結局、俺が明里を好きな気持ちを見せずに、冷たく扱ってたら好きになってくれたかもしれないってこと?」
明里「まぁね」
譲二がため息をつく。
明里「でも、いいじゃない。
私に振られたお陰で好きな女性が二人もできて」
譲二「おまえには言われたくない」
譲二は苦笑したが、何かに気づいたようでちょっと真面目な顔になった。
譲二「だけど、実のところ、明里に振られたのが、ロコと知り合うきっかけになったんだ」
明里「それはどういうこと?」
譲二「俺が中学時代、幼稚園児の友梨花ちゃんとは公園で時々顔をあわせて遊んだりしてたんだ」
明里「そうだったんだ…」
譲二「お前に振られた日、その公園で落ち込んでいると、ロコと友梨花ちゃんに会った。
俺が雨でずぶぬれになってたから、心配したロコが家に連れて行ってくれたんだ」
明里「もしかして、その時から好きになったの?」
譲二「まさか…。
でも、ロコは失恋の相談にのってくれて。メアドを交換して。
それからはいつも俺が相談に乗ってもらう側だったんだけど、ロコのご主人が亡くなったとき、それが逆転した」
明里「そうなんだ」
私が譲二をふったことが二人を引き合わせるきっかけになったなんて…、なんだか不思議な気がした。
譲二は少し苦しそうな顔をした。
譲二「今年は…俺たちの銀婚式だったんだ…」
明里「結婚してもう25年にもなるのね」
譲二「恋人時代から数えたらもっと長いけどね」
譲二はとても辛そうにつぶやいた。
明里「譲二…。あなた、奥様のこと本当に愛してたのね」
譲二「当たり前だろ…。結婚生活の後半は色々あったけど…。
楽しい思い出もたくさんある。
友梨花ちゃんのことを好きになったからと言って、ロコのことを簡単に捨てることはできなかった」
譲二の表情は苦渋に満ちていた。
誠実に生きようとするあまり、自ら苦しい道を選んでしまった譲二。
明里「でも、これからはその友梨花さんと一緒に生きて行くんでしょ?
大切にしてあげてね」
譲二「もちろん。今までを取り戻すつもりで大切にするよ」
明里「言うまでもなかったわね…。
あら、もうこんな時間。そろそろ帰らないと…」
譲二「車で送って行こうか?」
明里「ううん。電車で帰るから。譲二も仕事があるんでしょ?」
譲二「ああ。あ、会計は俺がだすよ」
明里「じゃあ、お言葉に甘えて。ごちそうさま」
譲二と別れて家路をたどる。
私も大概ドラマチックな人生を歩んで来たと思うけど…。
譲二の人生もそれに負けないわね。
ううん、むしろそれ以上かな…。
心の中でそっとつぶやく。
友梨花さんと一緒に…、どうぞお幸せにね。
『ひとつ屋根の下・明里』おわり
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明里さん、譲二さんと決して相性は悪くないと思うんだよね。
譲二さんが嫌われてふられたのは、譲二さんがどうこうじゃなくて、親が決めた婚約者だったからだと思う。
本文にも書いたけど、普通にクラスメートとして知り合っていたら、譲二さんのことは普通に好きになってたんじゃないかな。
そして、二人が恋人同士になるという展開もあり得なくはない。
それが譲二さんにとって幸せかどうかはともかく。
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