番外編『ひとつ屋根の下ストーリー』で思いついた譲二さんの危ないストーリー。
>>お母さんが10何歳下の男性と再婚して、その義父が譲二さんとか。
これを『ひとつ屋根の下・母の夫』・『ひとつ屋根の下・妻の娘』として妄想しました。
今回は、お母さんの視点から譲二さんとの恋を描きました。
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私:茶倉宏子
その夫:茶倉譲二…私より16歳下
私の娘:森田友梨花
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ひとつ屋根の下・ロコ
ジョージと結婚して三ヶ月が過ぎた。
前の夫を事故で亡くして直ぐの頃、弾みでまだ若いジョージと寝てしまった。
荒んだ気持ちの私を必死で慰めようとしていたジョージが鬱陶しく思われて、「それなら私を抱いてごらんなさい。あの人の代わりに一人の男として抱いてよ」と、言い放った。
驚いたことに彼はそれに応えてくれて…、その後「恋人になって欲しい」とまで言われた。
「いいよ」と言ったものの、16歳も下の男の子との恋愛が長続きするとは思えなかった。
それにジョージは私がすがりたい、大人の男としてはあまりにも頼りなく思われた。
彼はきっと初めてのセックスに舞い上がって、私としたいだけなんだろうと思った。
そして、若くて可愛い女の子に告白でもされたら、私なんか直ぐに捨てられるだろうとも思った。
それでもよかった。
夫を亡くして、一人で娘を育てていかないと行けない私は何でもいいから支えが欲しかったのだ。
大学生だったジョージは家が大金持ちだったから、それまでバイトなどしたことがなかった。
ところが、私と付き合い出してすぐにバイトを始めたと胸を張って言う。
譲二「ロコとのデートは俺が稼いだお金で払いたいからね」
なんだかとても可愛らしくて、笑みがこぼれた。
宏子「そんな…。無理しなくてもいいのに」
譲二「ロコが稼いだお金は友梨花ちゃんのためのものだろ?
それに…、自分がバイトしたお金で彼女とデートするのが俺の夢だったんだ…」
少し頬を染めてそう呟いた。
そうだった。
私とジョージが初めて知り合った時、ジョージは幼なじみの女の子にふられてひどく落ち込んでいたっけ。
公園でずぶ濡れになって、今にも泣きそうな顔をしていた中学生の男の子。
もちろん、その時には恋愛感情なんかなかった。
ただ迷子の子犬のような男の子をなんとか慰めてあげたかった。
あの時、メアドを交換して、ジョージの悩み事の相談にいつものってあげたものだけど、あれ以来、彼は女の子とはいつもうまくいかなかった。
とても優しいし、相手のことをいつも思いやっているけど、それが過ぎるために自分の気持ちをうまく相手に伝えることができず、女の子はいつもため息をついては去っていくのだった。
もう七年近くもそんな彼の相談にのって来たからか、私には色々と言いたいことも素直に言えるようだった。
だから、最初は彼が若い恋人を見つけるまでの付き合いのつもりだったのだ。
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それなのに、ジョージ無しでは生きていくことさえできなくなったのはなぜだろう?
ジョージと付き合ううちに、彼が私を本気で想ってくれていることにだんだん気づいたからだろうか?
大学を卒業するとあんなに嫌がっていた実家の茶堂院グループに幹部候補生として就職した。
譲二「ロコにふさわしい男になるためには、ちゃんとした仕事につかないといけないからね。
ここだったら、頑張れば数年でロコと友梨花ちゃんを養える位の給料を稼ぐことができるようになると思うんだ」
あんなフワフワした頼りない男の子が、いつのまにか逞しい男性になって私の前にいた。
いつしか私は彼に捨てられることを恐れるようになった。
一年一年、彼は逞しい大人の男に育っていき、私はそれと同じ速さで老いていく。
5年前には気にならなかった顔の皺も、毎朝鏡を見る度に気になるようになった。
ジョージが仕事で忙しくて会えない日が続いた時、私は発作的に自殺未遂を起こしてしまった。
異変に気づいたジョージが適切な処置をとってくれたので、大事には至らずにすんだ。
でも、それから私はジョージ無しには生きていけなくなった。
彼は前にも増して私を気にかけて優しくしてくれるようになった。
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友梨花が18歳の誕生日に、私にこう言ってくれた。
友梨花「お母さん。好きな人が出来たら再婚してもいいよ。今まで私のために一人で頑張ってくれたんだもん。もう好きなように生きてくれていいよ」
嬉しかった。娘にそんな風に言ってもらえて。
それから直ぐにジョージにプロポーズして、結婚の承諾を得た。
友梨花にも、「会わせたい人がいるから」と恋人の存在を打ち明けた。
ただ、私には少し気になることがあった。
友梨花とジョージは幼い頃、公園で時々遊ぶ仲だった。
遊ぶと言っても、10歳違いの幼稚園児と中学生だったから、一方的に友梨花がジョージに遊んでもらっていたわけだけど…。
そして、その頃友梨花はジョージのことが大好きだった。
友梨花が小学生になった頃、夫の転勤で引っ越してから、二人が会うことはなくなったけど、もう一度二人が会ったらお互いに惹かれ合うのではないかと…。
それだけが気がかりだった。
友梨花にそれとなく幼稚園の頃のことを聞いたが、優しいお兄さんがいたくらいのことしか覚えていなかった。
そこで、ジョージには、友梨花が思い出さないようなら、子供の頃に出会ったお兄さんがジョージだということは言わないと約束させた。
二人を引き合わせた時、友梨花はジョージが昔なじみだとは気づかなかった。
そして、友梨花の前で三人だけで結婚式を行った。
友梨花が強く勧めてくれて、私はウエディングドレスを着た。
とても照れくさかったけど、ジョージは「とても綺麗だよ。俺、ロコのこと惚れ直したかも」と言ってくれた。
なぜ、三人だけの式になったかと言うと…。
そう、ジョージは実家の家族みんなに私との結婚を反対されていたのだ。
子持ちの16歳上の女との結婚など認められるはずもない。
私が同じ立ち場だったとしてもやはり反対しただろう。
ましてや、ジョージの家は普通の家ではない。
親族からは色々と言われたようだが、ジョージはそれを私には何も言わなかった。
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譲二「ロコ、どうしたの? 何か考え事?」
ジョージが優しく声をかけてくれる。
宏子「ん? ジョージと結婚できて幸せだなぁーって、考えてたとこ」
譲二「俺も幸せだよ」
頬に軽いキスをしてくれた。
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夜中に目が覚めた。
そっと手で探って、隣にジョージがいることを確かめる。
再婚するまでは、夜中に一人のベッドで目を覚ましては不安に駆られていたものだ…。
今は…、もうひとりじゃない。
ジョージの肩にそっとしがみつく。右手を彼の厚い胸板にそっとのせた。
彼の手が私の手を覆うように掴んだ。
宏子「ジョージ?」
返事はない。
…どうやら無意識に私の手を掴んでくれたようだ。
(愛しているよ、ジョージ。これからも一生側にいてね)
私は安堵して目をつぶった。
『ひとつ屋根の下・ロコ』おわり