恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

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美緒に似た子~その1

2015-04-11 06:45:22 | アリサ

最近、アクセス数もランキングも大幅に下降中で、このままフェードアウトしてもいいかなと思ってたんですが…。

 

この話はハルルートの譲二さんの「それぞれの道」の7年間の空白期間を埋める話をと考えて書き始めたものです。
ところが、書いて行くうちにハルルートの譲二さんの話からは外れ、全く違う結末のお話になってしまいました。
それで、upしたものかどうか悩みました。

二次創作の二次創作だし…。
ヒロインは娼婦だし…。
譲二さんは壊れてるし…。
不快に思われる方もいるかもしれません。

でも、一時お話をかけなくなった時期に書けるものを書こうと書き始めたのがこの話で、そういう意味では私を助けてくれた話とも言える。
アクセス数が減ってるということは読む人も少ないわけで、ひっそりとupするのならいいかなと思い公開します。
性描写もそれなりにあるので、18禁にしようかとも思ったけど、そもそもネットではそれを確かめるすべもないし。
だから、こういう話はダメという人は避けてくださいね。

上にも書きましたが、ハルルートの譲二さんの話から派生した物語なので、読んでない方は『それは突然の告白から始まった…』から『それぞれの道~その1~その5』あたりまで読んでもらえると、どうして譲二さんが壊れているのか…とかが分かると思います。

 

 

☆☆☆☆☆

美緒に似た子~その1


〈譲二〉
見合い相手と別れ、街の雑踏の中を進む。

なんだか、もやもやしていた。

行き当たりばったりに見つけたバーで酒を飲み、外に出てぶらつく。

まだ、帰りたくない。



駅の電光掲示板をぼんやり眺めていると、声をかけられた。


???「ねえ、今ひま?」


振り返って驚いた。

美緒? いやいや、違う。

その子は濃い化粧とちょっと飛んだファッションを身につけていたが、美緒にどこか似た女の子だった。

思わず見とれた俺のことを勘違いしたのか、彼女はにっこり微笑んだ。


☆☆☆☆☆


結局、彼女に誘われるまま、ホテルに入った。

ドアを閉めると彼女はにっこり笑って手を出した。


女の子「先払いね。やり逃げしようとする男がよくいるから」


俺は言われるままに金を払い、彼女はそれを財布にしまった。


明るい場所で見ても、やはり美緒に似ている。

もちろん、二人を並べたらそっくり、というレベルの似方ではない。

しかし、ちょっと微笑んだ笑顔、俺を見上げる時の顔の傾け方など仕草はどこか美緒を思わせた。


俺は無言で彼女を抱きしめるとキスをした。

…、やはり、美緒とは少し違う。彼女の付けている香りも美緒とは違う。

それでも、何度もキスを繰り返し、それはどんどん深くなる。


女の子「…ん、…ふうっ、…待って…」


彼女は俺の腕から逃れようともがいた。


譲二「…ごめん。息苦しかった?」

女の子「ううん…。大丈夫。でも、あんた変わってるのね? 」

譲二「そう?」

女の子「だって、大抵の人は私としたいだけで、キスなんて全然せずに終わることもよくあるもん」

譲二「もしかして、キスはカレのためにとってあるの?」


彼女は自嘲気味に笑った。


女の子「まさか…。カレがいたらこんな仕事してないよ」

譲二「そっか…。そうだね。…俺とキスするのは…嫌?」

女の子「ううん。そんなことないよ…。今日は本気で盛り上がれそうかも…」

彼女はそういうと可愛らしい顔で見上げた。


その2へつづく

 


いつもと同じ…そしてかけがえの無い日々

2015-04-09 07:38:47 | 年上の彼女

10歳上の女性との恋愛。譲二さんはヒロインからみて年下の若い男性なんだけど、色気のある大人の男性で頼りがいも包容力もあるという、ものすごくおいしい男性になっちゃいました。
☆☆☆☆☆

いつもと同じ…そしてかけがえの無い日々~その1

〈奈実〉
今日は譲二さんが退院した快気祝いのパーティーでみんながクロフネに集まってくれた。


譲二「みんな、俺のことを心配してくれてありがとう。
ハルとタケとリュウは襲われた時に助けてくれて本当にありがとう。
特にリュウには救急車で一緒に来てくれた上に血まで分けてもらって…とても感謝している」


竜蔵「これでジョージと俺は血兄弟だからな」

春樹「リュウ兄、それはちょっと違うよ…」

理人「病院に付き添ったリュウ兄も奈実さんもマスターと同じ血液型で良かったね」

竜蔵「それがあるから、俺は付き添ったんだけどな」

一護「リュウ兄にしては上出来だな」

竜蔵「それどういう意味だよ。俺だっていざという時には機転が効くんだ」

剛史「確かにリュウ兄は教師になってから賢くなった」

竜蔵「おう。生徒たちを守らないとなんねぇからな」



いつも通りのみんなのやり取りに私は吹き出した。


百花「マスターが元気になって本当に良かったです。奈実さんも看病お疲れさまでした」

譲二「ありがとう」

奈実「百花ちゃんも忙しいのに何度もお見舞いに来てくれてありがとう。とっても心強かった」

一護「マスター、店はいつから開けるんだ?」

譲二「ずいぶん休んじゃったからね…。
本当は明日からでも開けたいところなんだけど、奈実が反対しててね」

一護「あんまり無理するなよ」

春樹「そうだよ、奈実さんのいうことをちゃんと聞かないと」

譲二「だから、今週いっぱいは休んで、来週頭からの営業かな」

剛史「あー、やっとまたマンデーが読める」

理人「タケ兄、収入あるんだし、そろそろ自分で買って読んだら?」

剛史「俺はクロフネでマンデーを読むことでマスターの生きがいに貢献してる」

一護「なんだよ、その理屈」


 クロフネでのいつもどおりのみんなのやり取り。

 それを譲二さんは楽しそうに眺めてる。

 私は…その日常が戻ってくれたことが嬉しくて…。

 そっと目尻に浮かんだ涙を拭いた。


その2へつづく


☆☆☆☆☆

いつもと同じ…そしてかけがえの無い日々~その2

 

〈譲二〉
 あの事件から5ヶ月が経った。

 犯人の伊藤は初犯ということもあって、大した罪にはならないみたいだ。

 みんなは刺され損だね、と言ってくれるけど、奈実を守ることができたので、それだけはよかったと思っている。

 奈実はあのままクロフネに住んでいて、アパートも引き払ってしまった。

 外出の出来ない日が続いたせいもあり、奈実の仕事は休業状態だ。

 でも、俺的にはずっと一緒にいられるから満足かな…。



 奈実が一緒に手伝ってくれるようになって、クロフネも少しずつ変わっている。

 ランチメニューに奈実が焼いた手作りパンをつけたり、フロアの一画に奈実の手作りの小物類を置くようになった。

 ビーズのアクセサリーやカントリー風の布のポーチやティッシュカバー、サシェ、トールペイントで描いたプレートや小物入れなど、女性が好みそうなものが揃っている。

 それらの売り上げ自体は大したことはないが、それ目当ての女性客のリピーターが増えて、店の売り上げも少しずつ増えている。

 この状態で売り上げが安定するようなら、そろそろ奈実にプロポーズしてみようかと考えている。

 今だって、ほとんど夫婦状態だけど、けじめはつけないとね。

☆☆☆☆☆

 客足の途絶えた午後、隅のテーブルで、奈実が手作りの小物を縫っている。

 窓からの日差しを受けて後れ毛が金色に光っていた。

 その美しい光景に見とれていると、視線を感じたのだろう、奈実がこっちを見て微笑んだ。


譲二「根を詰めてると疲れるよ。そろそろ休憩したら…」

奈実「まだ疲れるほど縫ってないよ」

譲二「じゃあ訂正。俺のために休憩して…」


 奈実は微笑んで縫い物をテーブルに置くと俺のところに来てくれた。

 彼女を思い切り抱きしめてキスをする。




 俺の大切な女(ひと)…。

 もう決して離さないからね…。

 


 


 

おわり

 


 

☆☆☆☆☆

 


 

年上の彼女の話はこれで終わりです。

 




『怒涛のごとく』

2015-04-03 06:39:38 | 年上の彼女

10歳上の女性との恋愛。譲二さんはヒロインからみて年下の若い男性なんだけど、色気のある大人の男性で頼りがいも包容力もあるという、ものすごくおいしい男性になっちゃいました。
☆☆☆☆☆

『怒涛のごとく』~その1

〈譲二〉
 クリスマスソングが町に流れ始めた。

 奈実はあれから、ほとんどクロフネから出ること無く過ごしている。

 あの電話の後、伊藤という人からはメールも電話も来なくなって、少しホッとしている。

 俺という恋人がいることがわかって諦めたのかもしれない…。

 奈実はこの頃、もう大丈夫だと安心しているけれど…。

 あの最後の電話の様子だともうしばらく気をつけた方がいいと俺は思っている。

☆☆☆☆☆

 昼からハルとタケ、リュウがクロフネに来ている。

 駅前にイルミネーションが飾られてかなり奇麗だという話題になった。


春樹「奈実さんはまだ見てないの?」

奈実「うん。このところほとんど外出してないからね」

竜蔵「それは残念だな。今年のはかなり気合いが入ってんのに」

譲二「奈実の安全には替えられないからね」

剛史「でも、一度電話があってからはメールもないんだろ?」

奈実「うん。一ヶ月近くになるから、もう諦めたのかなとは思う」

竜蔵「ジョージは心配性だからな…」

春樹「まあ、何かあったら怖いからね」

奈実「でも、イルミネーション見に行きたいな…」

譲二「子供みたいなこと言わないの」

剛史「イルミネーションを見てすぐに帰れば大丈夫なんじゃないか?」

竜蔵「そうだ、俺たちもいるんだし今から行ってみるか?」

奈実「え? 今から?」

譲二「こらこら、リュウ。奈実をその気にさせないでよ」

剛史「用心棒ならハルもいるしな」

春樹「え? でも俺、随分、空手やってないから身体が鈍ってるよ」

竜蔵「全国大会入賞レベルのヤツが何言ってんだ」

奈実「え? ハルくんてそんなにすごいの?」

譲二「ああ、ハルは高校の時、空手の全国大会の常連だったからな」

剛史「普通のヤツでは敵わない」

奈実「すごーい」

春樹「だから…、それは高校時代の話。今はもう身体が鈍ってるって…」

奈実「それでもすごいよ。ねぇ、ハルくんたちも一緒に行くんじゃだめ?」


 奈実が訴えるような目で俺を見つめる…。

 そんな目で見つめられるとダメと言えなくなるじゃないか…。

 本当は2人だけでイルミネーションを見に出かけたいところだけど…。


その2へつづく


☆☆☆☆☆

『怒涛のごとく』~その2

 

〈譲二〉
 結局、ハル達と一緒に駅前に出かけることになった。

 気休めだが奈実にはニット帽を被せマスクをさせた。



 駅前ではイベントも開かれていて、かなりの人出だった。

 5人で出かけたのに、いつの間にかハルたちとは離れ離れになる。

 俺は奈実の手をしっかり握って歩いた。


 あの伊藤という男のことがなかったら、とてもロマンチックな夜を過ごせたのに…。

 俺は周りの人混みに絶えず目を走らせる。

 奈実は…ただ無邪気に喜んで嬉しそうに俺に話しかけている。

 この一ヶ月、ずっとクロフネの中にカンヅメだったものな…。

 奈実が喜んでいるのがせめてもの慰めだ。



 ふと、視線を感じて周りを見渡した。

 気のせいだろうか?


 その瞬間、奈実と繋いでいた手が離れた。


 あっと思った瞬間、男が駆け寄って来る。


譲二「奈実! こっち!」


 奈実を引き寄せた途端、その男は横を通り過ぎた。


「ひったくりだ! 誰かー!捕まえてくれ!」


 誰かの叫び声がして、何人かの男性がその男を追いかけて行った。

 俺はほっとしてその行方を見送った。


 俺が奈実を振り返った時、目を血走らせコートの中に手を突っ込んだ男が小走りに近寄って来るのが見えた。

 男は何か長いものを引っ張り出した。


譲二「奈実! 危ない!」


 とっさに奈実を庇って抱きすくめた。


 背中にドン!という衝撃を感じた。

 


その3へつづく

☆☆☆☆☆

『怒涛のごとく』~その3

 

〈奈実〉
 ひったくりを追いかけ何人かの男の人たちが走って行った。

 その行方をぼんやり眺めていると、譲二さんの叫び声がした。


譲二「奈実! 危ない!」


 わけが分からないまま、譲二さんに抱きしめられる。

 ドン!という衝撃があって、2人ともよろけて踏みとどまった。
 

譲二「奈実、大丈夫?」

奈実「ええ、大丈夫、ありがとう」

譲二「…よかった」


 譲二さんの体が崩れ落ちる。



 まるで、スローモーションのように…。



 背中に回した手にぬるっとしたものがついた。


 私は悲鳴を上げた。

 


 



 私の悲鳴を聞きつけて人が集まって来る気配がする。

 倒れた譲二さんの下からは赤黒いシミが広がっている。

 周りでは、罵声や怒鳴り声が聞こえ、慌ただしい人の動きがあった気がする。

 でも、周りと私たち2人の間には厚い壁があって、私には譲二さん以外は見えないし、聞こえなかった。


譲二「…奈実…大丈夫…?」

奈実「私より…、譲二さん。今はしゃべっちゃダメだよ。」


 私はなす術も無く、譲二さんの手を握り続けた。


譲二「奈実は…怪我はない?」

奈実「私は大丈夫…」

譲二「よかった…」


譲二さんが目をつぶった。

 


 


その4へつづく


☆☆☆☆☆

『怒涛のごとく』~その4

 

〈譲二〉
 奈実の声が聞こえる。



 俺の名前を呼んでいる。



 今朝はまだ目を開けたくない。


 体がひどくだるくて眠たい。

 隣で眠っているであろう奈実の体を探る…。

 温かい手が俺のその手を握ってくれた。


 …ああ、奈実の手だ…。

 小さくて柔らかい。

 俺は安心して、また眠りについた。


〈奈実〉
 病室のベッドの横でずっと座っている。

 蒼白な顔をした譲二さんがずっと眠っている。


 一度薄目を開けたので、名前を呼んだら、弱々しく手で何かを探した。

 私がその手を握るとまた眠りについてしまった。


☆☆☆☆☆

 



 冬でコートを着ていたせいだろう、傷の深さは大したことはないということだった。


 手術の麻酔がよく効いて眠っているのだというお医者さんの説明だった。

 一度、ハルくんやタケくんやみんながお見舞いに来てくれたが、譲二さんは眠ったままだったのですぐに帰った。

 また明日も来てくれるそうだ。



 譲二さんの大きな手にそっと口づけた。

(大丈夫だよね? ちゃんと目を覚まして、私の名前を呼んでくれるよね?)

 


その5へつづく


☆☆☆☆☆

『怒涛のごとく』~その5

 

〈奈実〉
 眠り続ける譲二さんに心の中で語りかける。



 今、譲二さんの身体の中には私の血も流れているんだよ。

 正確に言うと私とリュウくんの血なんだけど…。



 あの時、伊藤くんは譲二さんを刺した包丁を抜いちゃったから、血がたくさん出て怖かった。


 私の悲鳴を聞いて、近くにいたハルくんとタケくんとリュウくんが駆けつけてくれて…。

 ハルくんは伊藤くんが手に持った包丁を足で蹴り上げてくれて、すかさずタケくんとリュウくんが伊藤くんを押さえ込んで…。

 その間にハルくんは警察と救急車を呼んでくれた。



 譲二さんの血液型はO型だったんだね。


 リュウくんはね、救急車にも一緒に乗ってくれたんだよ…。


 「俺はジョージと同じ血液型だから、役立つかもしれねぇ」って言って。


 救急車に乗るとき、ちょっとゴタゴタしちゃった。


 救急隊員は「付き添いは一人だけでお願いします」って言ったんだけど。

 リュウくんは血のついた私の手を見せて「この人も怪我人だ」って言ったの。

 隊員は「じゃあ、付き添いはこの女性にお願いします」って言って、リュウくんを乗せようとはしなかったんだけど。

リュウくんは「この人はショックで口が聞けねぇから、俺が付き添います」って強引に乗っちゃった。



 お医者さんへの説明もリュウくんが全部してくれたし…、私は横で泣きじゃくるばかりで何も出来なかった。


 ごめんね。


 私のせいで、痛い思いをさせて…。

 


その6へつづく


☆☆☆☆☆

『怒涛のごとく』~その6

 

〈譲二〉
 人の話し声がしている。



「マスターはまだ目を覚まさないの?」とか「もう麻酔は切れてるだろ」とかそんな内容だ。


 俺は目を開けて周りを見回した。

 白い天井と心配そうな奈実の顔、その向こうにはあいつらの顔がみえる。


春樹「やっと気がついたみたいだね」

百花「マスター、よかった」

竜蔵「ジョージ、えらく長いこと寝てたな」

一護「もう目覚めねぇのかと思ったぞ」

剛史「眠り姫みたいだった」

理人「だから、奈実さんにキスしてみたらって言ったんだよね」

譲二「…どれぐらい眠ってたの…?」

春樹「まる二日くらいかな…。中々目を覚まさないから、奈実さんもすごく心配してたよ」


 俺は青白い奈実の頬に手を伸ばした。

 そうだ!

 俺はあの伊藤とかいう男が奈実を襲おうとしたから、とっさに庇って…。


譲二「奈実! 大丈夫!? 怪我は?」

奈実「譲二さん…」



奈実が戸惑ったような顔をした。



理人「奈実さんは怪我なんかしてないよ。怪我したのはマスターだけだから…」

譲二「あの男は?」

剛史「警察に拘留されてる。俺とハルで警官に引き渡したから」

譲二「よかった…」


安堵すると途端に背中の傷が痛んだ。


奈実「痛む? ごめんね、私のせいで…」

譲二「なんで? 奈実のせいじゃないだろ?」

一護「さ、マスターも目を覚ましたことだし…、お邪魔虫な俺たちはもう帰ろうぜ」

竜蔵「え? もう帰るのか?」

春樹「リュウ兄、2人だけにさせてあげようよ」

理人「じゃあね、マスター」

剛史「また明日来る」

百花「また、お見舞いに来ますね」


 みんな気を使って口々に挨拶をして病室を出て行った。


譲二「奈実、心配かけたね」

奈実「もう、目を覚まさないんじゃないかと思って不安だった。でも、よかった…」


 奈実の伏せたまつげに雫が光った気がした。

 俺は元気づけたくて奈実の手をぎゅっと握った。

 すると奈実はにっこりと微笑んでくれた。

 


 

『怒涛のごとく』おわり



妄想飛行~譲二の場合 その10

2015-04-02 07:43:00 | もしもの話

特別捜査密着24時の『妄想飛行~冗談は脳内だけにしろ~』で野村さんが言っていたこと

>>「9つも歳が違うと同じ学校に通うなんてことないしさ、妄想が膨らむよね」

>>「もう少し年齢が近かったら、こんなこともあったかな~っていう俺のロマンじゃーん」

みたいに譲二さんも妄想してたかな…と思ったらこんなお話が浮かびました。




 なお、妄想の中の『マスター』は先代マスターです。

☆☆☆☆☆

妄想飛行~譲二の場合 その9の続き

 

妄想飛行~譲二の場合 その10

 

元気のない百花ちゃんにラム入りのココアを入れてあげた。

俺もラム入りのココアを淹れて二人で向かい合わせに座わる。


百花「…美味しい」

譲二「よかった。…ねぇ、百花ちゃん。何か悩みがあるなら…話を聞くよ?」

百花「…」

譲二「一人で悩んでいるより、口に出した方が楽になるよ?」


と、突然百花ちゃんの目から涙が溢れ出した…。


譲二「ちょ…、百花ちゃん…」


俺は慌てて、とりあえずティッシュを百花ちゃんにわたした。

百花ちゃんはすすり上げながらそのティッシュで涙を拭いた。


百花「ごめんなさい…、マスター。取り乱してしまって…」

譲二「もしかして…。一護と喧嘩でもした?」


百花ちゃんは一護のことが好きなんだろう。

そばで見ていればすぐわかる。

俺は彼女のことを…いや…今はこの気持ちは横においておこう。


百花「私…いっちゃんと一緒にいるだけで、とても楽しくて…」

譲二「うん」

百花「今まではいっちゃんも…私といると楽しいのかなって思ってた」

譲二「うん」

百花「でも、この頃、いっちゃんは私と一緒にいても上の空で…それで何かあったかなって思って、ハルくんに話してみたんだけど…」

譲二「うん」

百花「…ハルくんと二人で話している時にいっちゃんが来て…『お前は俺よりハルといる時の方が楽しそうだな』って…」


百花ちゃんはまた嗚咽を漏らす。


譲二「そっか…一護に誤解されちゃったのか…」

百花「私…そんなつもりじゃなかったのに…」


その後の言葉は涙の中に埋もれてしまった。

俺は百花ちゃんの頭をポンポンと軽く叩いて慰めた。

そしてもう一枚ティッシュを渡す。


譲二「一護もそんなこと言って…きっと今は後悔してるよ…」

百花「そうかな…」

譲二「うん…そうだよ。一護はすぐ強がったり、百花ちゃんに意地悪をいうけど…百花ちゃんのことを本当に大切にしているって思うよ」

百花「今まではそうだって思ってたけど…。今回は…」


俺は百花ちゃんの愚痴を聞いてあげるくらいしか何もしてあげられない…。


譲二「だって、百花ちゃんは一護のことが大好きなんだろ?」

百花「今まで、いっちゃんのことだけ見てきたけど…。この頃なんだかよく分からなくなってきた」


その言葉に何か引っかかった。


譲二「それは…もしかして、他にも気になる人ができた…とか?」

百花「どうして?マスターはそれを?」


百花ちゃんは涙で汚れた顔で、俺を見つめた。


譲二「いや、なんだかそんな気がして…」


自分で言いながら、ドキドキしている。


百花「私…この頃…」

譲二「うん」

百花「ハルくんのことが気になって…」


へ?


百花「いっちゃんのこととかハルくんに色々相談してたら…、優しく一緒に考えてくれるハルくんのこと…好きになってしまったかもしれない…」


それだけ言うと、百花ちゃんはテーブルに突っ伏して、声をあげて泣き始めた。


それって、百花ちゃん…。重大発言じゃないか…。

そして、そんなに泣くってことは一護のこともあきらめきれないんだろう。

俺はどうなぐさめたらいいのか分からないまま、彼女の柔らかい髪をそっと撫でていた。


妄想飛行~譲二の場合 その11へつづく


妄想飛行~譲二の場合 その9

2015-04-01 07:17:58 | もしもの話

特別捜査密着24時の『妄想飛行~冗談は脳内だけにしろ~』で野村さんが言っていたこと

>>「9つも歳が違うと同じ学校に通うなんてことないしさ、妄想が膨らむよね」

>>「もう少し年齢が近かったら、こんなこともあったかな~っていう俺のロマンじゃーん」

みたいに譲二さんも妄想してたかな…と思ったらこんなお話が浮かびました。




 なお、妄想の中の『マスター』は先代マスターです。

☆☆☆☆☆

妄想飛行~譲二の場合 その8の続き

 

妄想飛行~譲二の場合 その9

 

 【☆妄想中☆】

 

 みんなにはその後も色々からかわれたけど…、なんとか誤解は解けたみたいだ。

 しかし…。


百花「ただいま…」

マスター「百花ちゃんおかえり」

譲二「百花ちゃん、今日は遅かったね…」

百花「マスター、今日は宿題がたくさんあるのでお店の手伝い休んでもいいですか?」

マスター「いいよ。今日はあんまりお客さんもいないし、譲二くんが手伝ってくれてるしね」

百花「すみません。夕食の時間には降りてきますから」


百花ちゃんはマスターに笑顔をみせると、俺には一瞥もくれずに二階へあがった。


マスター「百花ちゃんはこの頃譲二くんにそっけないね」

譲二「はい…」

マスター「まあ、そのうちに仲直りできるよ…。あせらないようにね」


マスターはメガネの奥で優しい目をして微笑んだ。


譲二「はい、すみません、ご心配かけて…」


俺はがっくり肩を落とし、食器洗いの仕事に入った。


☆☆☆☆☆


このところ、妄想の中まであまり上手くいってない…。

ため息をつきながらお皿を拭いていると、百花ちゃんが帰ってきた。


百花「…ただいま…」


心なしか元気が無い…。

何かあったのかな?

片付けが一段落ついたので、ラム酒入りのココアを作って百花ちゃんの部屋のドアをノックする。


百花「はい?」

譲二「百花ちゃん、ココアを作って来たんだけど…、よかったら飲む?」

百花「あ、ありがとうございます…。でも、ここじゃなくてお店で飲みます…。
 先に降りておいてください。直ぐ降りますから…」


俺が店に降りて待っていると…しばらくして百花ちゃんが現れた。

少し目が赤い…。もしかして、泣いていたのかな?

俺もラム入りのココアを淹れて二人で向かい合わせに座った。

妄想飛行~譲二の場合 その10へつづく