漆黒の夜―――。
魔物の仕業か、地獄の沼に踏み入ったのか。
最愛の人の名前を忘れるなどと。
何度 思い巡らしても 思い出せない。
どこだ?
お前の名前は何だった??
闇を彷徨う 私をふわりと包んでくれる
たおやかな白い指。
仙蛾(せんが)だ!!月だ!!
最愛の人の名は 仙蛾―――。
清らかな胸に押し包まれたとたん、
安らかな波が ひた寄せてくる。
満月が登った。
愛する仙蛾(せんが)。
お前に温められ、天から見守られて
私は また奮起する―――。
生きていく―――。
※月の別名は多数あります。
今回は 西洋の神話では月の女神アルテミスの
意味を持つ、オオミズアオの蛾にしました。