糸乃こまりのストーリー

川柳と小説〜下町とチワワはhttps://plaza.rakuten.co.jp/daigotyokotan

28  印度は寂しくないところ

2024-12-07 17:20:55 | 世界一周ひとり旅
大きなバスから男性が降りてきたらドアが閉まって走り出した。もしかしたらあのバス!? と思って裕子はバスを追い掛け始めた。
「片山さん どうしましたか?」
 とバスから降りた男性が言った。はたと立ち止まった裕子。
「あっ先生!!」
21 浅野内匠頭 に登場した医師だった。 「片山さん バスに忘れ物でも?」
「あぁ そうじゃないんです でも私の名前をおぼえていてくれるなんて」
「カルテに名前のある方のことは毎日考えますよ 今日もお健やかかと それが医師の務めです」
 ガタガタと裕子の身体が崩れ落ちて座り込んだ。 
「大丈夫ですか?」
「先生 見て下さい ホテルの入口に二人の女性がこちらを見ているでしょう?」
「えぇ」
「私 あの二人と一緒にいるのが嫌になってしまって」
「それはよくあることです」
「えっ」
「私がお断りしてきますよ」  
「先生にそんなことさせるなんて」とってと
「私も船のスタッフの一人ですから 私のあとをゆっくり歩いて来て下さい」
 とさっさと歩いて行く医師。裕子は立ち上がりホテルの入口を振り向くと医師の背中が見えた。この先生こんなに背が高かったかな? 何だかとっても魅力的に見えて来た。
 ホテルの入口に戻ったらもうツッコミとボケはいなかった。
「片山さんはお疲れなので少し休ませますと言っておきました」
「ありがとうございます わたくしも助かりました」
「ホテルのお買い物に行かないようでしたら お付き合いいただけませんか?」
「えっ」
「他のスタッフに連絡しておきますから ホテルのタクシーなら安心です」
「どこに行くんですか?」
 医師は何も言わない。裕子は心の中でわたくしをデートに誘うおつもり? と聞いた途端医師が言った。
「まるでデートですね 片山裕子さん よろしいですか」 


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