この3つの選挙は、小泉自民党が圧勝した衆議院選挙より1ヶ月後の選挙であり、特に神奈川県補選は衆議院選挙後初の国政選挙である。
結果を見ると、いずれの選挙も小泉自民党の息のかかった候補者が勝利していた。
選挙結果(特に神奈川補選と神戸市長選)にはいくつか共通点があるように、私は思う。
1.小泉劇場政治による「政治意識高まり」の限界
2.前原民主党の敗北
3.無党派層の敗北
まず私が見たのが、神奈川補選と神戸市長選の投票率の低さである。まず前者の投票率は、32.75%、後者は30.23%しかなかった。つまり全有権者のうち3分の1ほどしか投票に行かなかったのである。
利権がらみの組織票、圧力団体等の票は棄権率は低いので(特に某宗教団体の人たちは、雨が降ろうが、槍が降ろうが、核ミサイルが降ろうが絶対に投票に行く!)、おそらく先の衆議院選挙で動いた無党派層が棄権したものと思われる。
それだったら結局、あの衆議院選挙での盛り上がりは一体何だったのだろうか?
ネットでも、衆議院の選挙結果を「形はどうであれ、まずは無関心な人が政治に関わったことに意味がある」という意見が結構あった。
そう言えば、選挙の一週間前日曜日の『サンデー・モーニング』(TBS、毎週日曜日、朝8時~10時、司会・関口宏)だったか……コメンテーターの一人として出席していた金子勝・慶応大学教授が「本当は重要な争点がたくさんあるのに、こんなワイドショーみたいな選挙おかしいじゃないか」という意味の発言をしていたのに対し、毎日新聞論説委員の岸井某という人(注:この人は何かにつけて小泉政権をかばい、持ち上げる。どういうわけか)も「まずはみんなの関心を向けたことに意味がある」という発言をしていた。
確かに衆議院選挙で投票率は上がった。でも、それが持続しなければ意味がないではないか。いくら「投票したい人がいない」とか「誰に投票しても一緒」とか、いろいろ言い分はあるかもしれないが、あの衆議院選挙からまだ1ヶ月にしか経ってない。それで覚めてしまう熱や、その程度でまた下がってしまう政治(参加)意識って、一体何だろうか?
どうもあのフィーバーは、政治意識の高まりを示したものではなかったようだ。つまり、小泉劇場選挙(私は小泉「喜び組」選挙ともよんでいるが)の結果もたらされたもの(特に若年無党派層政治参加の高まり)は、紛い物だったのではないか? 結局は、マスコミとグルになった小泉自民党にホイホイと扇動され、踊らされていただけではなかったのだろうか? 私はそのような思いにとらわれている。
所詮、あんな劇場政治、ワイドショー選挙で上げられた投票率など一時的なもの、高まった政治意識とやらも、その程度のものでしかなかったのかもしれない。
確かに、正論だけを述べているだけではダメだが、より多くの有権者の関心を買おうとして、「面白おかしく」にのみ走ってしまったのでは、どうしても限界がある。この教訓は、1980年代終わり頃に「マドンナ旋風」で大勝し、その後凋落した旧社会党の経験からもわかことではないか。
次に「前原民主党の敗北」が見られると思う。
まあ確かに、まだ民主党のリーダーになって間もない前原氏に、あの小泉自民党に勝てというの酷かもしれないし、また、就任1ヶ月の結果だけで全てを判断するのは早計かもしれない。
だが、神奈川と神戸の2つの選挙における各候補者の得票数を見ると、民主党が抱えている問題と「どうすべきか(だったか)?」を考える参考になりそうな気がする。
*神奈川参院補欠選挙結果(開票率99%)
川口順子 自民新(公明推薦) 1,150,674
牧山弘恵 民主新 765,158
畑野君枝 共産前 375,492
*神戸市長選挙
矢田立郎 無所属現(自民・民主・公明・社民推薦) 198,661
瀬戸恵子 無所属新(共産・新社会推薦) 105,780
松村勉 無所属新 56,903
ここで各候補者の得票数を見てもらいたい。
神奈川補選では、民主党の候補者が約40万票もの大差で、自民・公明が推した川口前外相に負けている。いくら小泉首相のお膝元で、なおかつ小泉フィーバーの余波が続いているとはいえ、これはちょっと情けなくないか? 「今の民主では全然勝負にならなかった」ということではないだろうか。
その一方、神戸市長選挙では、自民・民主・公明・社民の4党が推した矢田前市長に、共産・新社会の推した瀬戸候補が、9万票差まで迫っている。
これはどういうことか?
やはり、小泉自民党と似たり寄ったりの前原民主党では、有権者の期待を集めることなどできなかったのだ。反小泉や非自民の有権者は、物わかりのいい前原民主党より、小泉政権ときちんと対決する勢力を求めているのではないか?
私は先月『前原民主党は何と戦う』でも書いたけど、小泉路線とほとんど同じ「タカ派」「市場原理主義(新自由主義)路線」では、有権者の民主党離れ、政治離れを加速させるだけである。
というか、私だけでなく、多くの人たちが予想したことである。
それが早くも現れたようだ。
しかし、衆議院選挙及び23日の3つの選挙(参議院神奈川補欠選挙、神戸市市長選挙、宮城県知事選挙)における最大の敗者は、実は民主党ではないと思う。
実は、金持ちでもエリートでもない、圧倒的多数の庶民こそが、最大の敗者である。それは、いわゆる無党派の大部分を占める人々でもあるから、はっきり「無党派の敗北」と言ってもいいと、私は思う。
度重なる「劇場政治・選挙」に慣れすぎて、観客(=想像力や当事者意識を無くし、ただ面白おかしく政治を見ているだけの人々)と化してしまったため、気がついてないのかもしれないが。しかしこれで事実上、自分たちの意志が国・共同体の意志決定に反映されるためのルートを無くして(人によっては自ら断ち切って)しまったのだから。
23日の選挙は、「選ぶ側」と「選ばれる側」との両方に、課題を示した選挙であった。
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nanasi
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