見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

「お茶」で呼ばれる有能な女性スタッフ

2006-08-21 23:57:04 | 仕事・職業
数ヶ月かけて調査していた案件の目処がようやくたちました。

事実不確定としてお蔵入りにするか、事実の裏づけを元に解決に挑むかの決断の瀬戸際にあった案件です。が、慎重に事実確認を進めた結果、問題点と原因が明らかになったので、前向きな解決策の検討に着手する段階になりました。少数精鋭で検討委員会を組織し、1ヶ月で具体的な方策に着手する準備を整える予定です。

……と、
調査段階から事務を任せていた女性スタッフを呼んで、その委員会開催について方針を伝えていたときのことです。

「あのォ」
突然、彼女と同じ課の男性職員が遠慮がちに顔を出しました。

「? 何ですか?」

「…お客さんが来たので」
「じゃあ、話がもう少しで終わるので、そうしたら通してください」
私のところに来客が来たと思ったのです。

すると、彼は恐縮しながら
「あの、お茶を…。今、一応、**さん(同じ課の男性スタッフの名前)には頼んだんですが」

「!」

彼は、お茶をいれてほしいと彼女を呼びにきたのでした。

私が呼んだ女性スタッフは、大変有能で、笑顔と物腰の素敵な女性です。
才色兼備で、陽気で明るく、何でも嫌な顔ひとつせずに引き受けるために、顔を出した男性職員のような甘えの構造を許す罪を背負うことがあります。

彼女は、頭脳明晰で判断力にも優れ、企画力や分析力の必要な部局でその力が発揮されるはずなのですが、その非の打ち所のない容姿と性格、そして30代前半という若さのためか、対人接待が多い部局に配属されてきました。

他の同じだけ有能な男性は、企画や政策などの部局で鍛えられていますが、残念なことに、彼女はそうした部局の経験が未だにありません。
なので、私も意識して彼女に課題について問うたり、庶務以外の仕事を依頼したりしています。



男性スタッフは、絶句した私の顔を見て何か気づいたのでしょう。
そのまま、恐縮した顔で出て行きました。
私と彼女が、女同士、他愛のない世間話をしていると思ったのでしょうか。

「お茶を入れるために、話を中断して行く必要はないですよ」
と、言うと、
「ありがとうございます」と、彼女はほっとした顔で応えました。

「すみません」ではなく、「ありがとう」と言う言葉に
彼女の気持ちを垣間見た気がしました。


情けない出来事が続くと、やや明るくなりかけた気持ちが萎みます。
決して悪気はなく、しかし無意識にネガティブな環境を再生産していく職員が多い行政が、現代社会の市民の悩みに応えられるのかどうか、改めて悲壮な気持ちになるのでした。



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